第二十二章
「襲撃」

(記:ケイジさん)

俺はもうわけが分からなくなって来た。だが、犬さんと話していると、結構楽しくなってきた。こんなことで楽しくなるなんて

あほらしいと思うだろう。だが、これでも俺は楽しい。

「あんた、苦労してるみたいだな。何かおいらに相談してみねえか?」

すると、こんどは犬さんのほうから話しかけてきた。そんなこと言われたら、言うことは決まっている。

「あんたらはここを逃げたいと思った事は無いのか?」

「逃げたいに決まってるじゃないか」

「なら、何でその能力を使って逃げない」

そう言うと、犬さんはちょっと不機嫌そうな顔になった。俺、何か変なこと言ったか?

「い、嫌なら別にいいぜ」

「別にいいよ。おいら達が逃げない理由だろ。逃げて外に出たらアルティメットシイングを狙ってる別の国の

人間に見つかるんだ」

「で、どうなる?」

「決まってるだろ。捕まるんだ。そして、実験材料にされるか戦力にされるかのどちらかが決まる」

「ふうん……」

しかし、こいつ詳しすぎないか。何でそこまで知ってるんだ?

「全員集合!」

ここの看守長の偉そうな声が刑務所じゅうに響き渡る。

そして、看守が鍵を持ってくる。

「おら、とっとと出ろクズ!」

くそ、こいつ……こいつの見るに耐えない不細工な顔に、唾を吐きかけてやりたい。

ふと横を見ると、あの犬さんが鬼のような顔になって看守を睨んでいた。

こいつも、ここから出たいんだな……。最初はこっちの方がまだいい、みたいなこと言ってたくせに。

おっと、さっさと集合しないと何されるか分からない。

「全員集まったかね。では、今日の作業を言う。今日は……」

それを言い終わらない内に男が駆け込んできた。

「あ、あの……」

その顔は誰が見ても嬉しい報告を持って来た様には見えなかった。

「何だ! 騒々しい。言いたいことがあるならとっとと言ええええ!!」

「は、はい! あの、この刑務所に武装集団が突入した様です!」

「何だとおおおおおお!! この刑務所を襲撃するとしたら、能力者どもを奪いに来た敵国しかいない! 

第一級の警戒態勢で敵に当たれ!」

全く何なんだ……? 今まで起きた出来事だけでも頭の中の整理がつかないほどわけ分からなかったのに、これは一体何なんだよ?

「おい、こりゃあやべえことになったかもしれねえぞ」

犬さんが話しかけてきた。そんなこととっくに分かってるっての!「こりゃあ、おいら達も戦いに動員されるな。あ、そういやあんた、

何の能力持ってんだい?」

聞かれると思った。てゆうか今まで聞かれないのが不思議なぐらいだ。

「俺は自分の能力が分からない」

犬さんはそんな驚いた顔でもなかった。

「ふーん、あんたも自分の能力が分からないタチかい」

何だ、俺の他にもそんな奴がいたのか。出来ればそういう奴といっしょの牢屋に入りたかったたよ。

「だが、そういう奴に限って上級や、はては最上級レベルの能力を持ってたりするんだよね〜。あんたもそうかも知れないよ?」

「あ、上級とかはここが勝手に決めた力のレベルだ」

そうなのか……もし俺の能力がその上級とか最上級レベルだったとしたら…………、早く発動してくれ!

「能力者ども、戦え! 看守長はそう言うと、一目散に逃げていった。ふざけやがって。

「あんた、戦うのか?」

「少し黙っててくれ」

「あ、ああ」

「うおおおおおおおお!!」

すると犬さんは体が変化していく。

「ハア!」

おいおい、どこが犬だよ……これじゃ狼じゃねーか!俺にもこんな感じの力が備わっているんだよな……本当に、早く発動してくれ! 

 

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