第三十三章
「終わりと始まり」

(記:文矢さん)

 ヨハンが殺られたのがここからでもよく見えた。「アルティメットシイング」の鋭い爪が。ヨハンの体を、切り裂いたのだ。

いくら願っても、現実は変わらない。 マスクを被った男達も、どんどん逃げていく。残っているのは数人だけだ。

その時、奴らが動き始めた。残った数人が胸に十字架をきったのだ。こいつらはキリスト教なのかで宗教学についてやって――? 

頭の中が一瞬、混乱する。いや、俺は大学いた。さっきの言葉は聖書にのっていない。なら、どうして。

 「アルティメットシイング」の叫び声が聞こえる。耳にさわるあの声。頭が痛くなるようなあの声。そして、心の中の恐怖心が

高まるあの声。ここからでも、怖かった。こっちに来るんじゃないか。もしかしたら、俺を殺しに来るんじゃないか。体が震えた。

 そして、「アルティメットシイング」は奴らの一人に襲い掛かる。その時、襲われている奴らは何やら唱えた。何を唱えているのかは

分からない。口の動きすら見えない。ただ、必死の形相で唱えているのが見えた。

 その時だった。空中に、穴が空いた。

 「アルティメットシイング」は気づいていない。そして、その穴から何やら変な格好をした男が現れる。「アルティメットシイング」は

そいつを殺した。その鋭い爪で。だが、他の生き残りの注目はそれではなく、この男に集中していた。

 男は銃を取り出す。駄目だ。銃なんかで殺せるわけが無い。「アルティメットシイング」のデータが頭の中に蘇る。

一人が撃てるのは最大で六発ぐらいだ。だが、その六発が全て当たってもこの「アルティメットシイング」は死なない。

 男は、引き金を引いた――

 その男の銃から、何か光線の様なものが発射されたのは見えた。だが、後、何があったのかは分からなかった。

気づいたら、「アルティメットシイング」は「消えていた」

 体の震えが止まらない。気づいたら汗だくになっていた。こんなに強い人間がいたのか。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。

 頭の中に今までの出来事が駆け抜けていく気がした。生まれた時。お母さんの顔が凄い、懐かしく見えた。お父さんの怒り顔。

今でもビクビクしている。幾つもの、幾つもの出来事が駆け抜けていく。

 その時、裕香の姿が浮かんだ。しばらく会っていない。もしかしたら別の男と付き合っているのかもしれない。

たく、どうしてこんな事を思い出すんだ。

「えっ……?」

 裕香の腹が、膨らんでいるのが見えた。そう、まるで妊娠しているように。太っているわけではないようだ。しかし、一体……

 あなたの子供よ―― そう聞こえたような、いや裕香がそう言った。そうか、俺の子供か。思わず、笑みがこぼれた。

そして、同時に涙も。 自分でも感じていた。もう、俺は死ぬって。そして、何かが起こった。体中を切り裂くような痛みを感じた。

俺の人生は、何だったのであろうか。

 全てが終わり、そしてまた始まった。

 

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