EVIL HAZARD

ゼクロス・アークウィンドさん 作

 

EPISODE5「再会と悲劇」

「本郷、災難だったな……誘拐されるなんてよ」
「ま、まぁな」

「しかし、お前の生徒のセワシって奴は立派だな……確かTP隊員と猫型ロボットと一緒とは言えお前を助けに来きたなんて」 

穏やかな昼時、本郷と会話を交わす青年がいた。

その青年は本郷の大学生時代の同級生であった「一文字隼人」両者は今椅子に腰掛ている。

……

「生徒か……俺はその事件以来、教師をやめたんだ。そんな言葉は纏わり付かないようになった身だ」
「さしずめ、護らなきゃいけない生徒を護れなかったからか? お前らしいな」
本郷の言葉にそう言った一文字は、席を立ちテーブルへ向かい、ある物を手に取ると、それを見せた。

「俺の師匠の富竹次郎さんとその奥さんの田無美代子さんだ、二人とも俺の恩師でな……俺にカメラマンの才能を見出してくれたんだ
 ……どうだ?
無職になるなら、俺と一緒にカメラマンとして地球一周旅行をしようぜ?」

「俺はカメラマンにはなれないな、お前ほどカメラの使い方は上手じゃない」

「おいおい、天才のお前らしくない事を言うな……」
 本郷の返答で、少し呆れた彼はテレビの電源をリモコンで付けた。
すると画面が明るくなった瞬間、丁度良いのか良くないのかニュース番組があっていた。

「昨日、謎の怪人二人と一体のロボットによる戦闘が起こりました。怪人二人の内の一人は突然謎の変身を遂げ、
 蟷螂のような姿に成ったとのことです。」

「!!」

 ニュースの内容に動揺を隠せない本郷、その証拠に彼は席を立っている。

「どうした本郷?」

「い、いや何でもないさ」
本郷の行動に一瞬驚いた一文字の問いに彼はそう言って今までの自分の状況について誤魔化す。

「TPからの情報によると、その怪人は脱走したキャッシュ一味の残党である肉体改造を施された兵士で、
自分達を逮捕に導かせた「ドラえもん」を通り掛かった一般の男性も巻き込んで仇討ちのような形で挑み、襲い掛かって戦っていたそうです」

「(む、無理が有り過ぎるな……)」

「何とも怪しい情報だ……こういうのは大体が嘘だったりするんだよな」

ニュースで言われている「情報」にそう思わざるを得なかった本郷、当たり前と言わんばかりに一文字が疑問を持つ。

「まぁ、ここに<ドラえもん>がいるのは嘘じゃないんだけどな」
と皮肉を混じって一言言い放った一文字、本郷と彼の背後には……ドラ焼きを食べているドラえもんの姿があった。

「いやぁ、僕はまだ有名ロボットのようですね」
「正直言って……俺は君の戦闘経験を評価する事しか出来ないな」

「そりゃそうだろうな」
 ドラえもんの言葉に、そう言った本郷とその言葉に頭を縦に動かさざるを得ない一文字。

「(しかし、俺は一文字と再会して良かったのか?
 こいつも俺の関係者なんだ、奴らの事があるから関わる事は遠慮しなければならないというのに……)」

 彼はふとそんな事を思ってしまった、そう考えてしまった理由はやはり彼が「追われる身」である事に他ならないと言っていい……
彼が大学の同級生である「一文字隼人」と再び会った事は、本郷の「不安」を裏付けている証拠でもある。

「本郷、職に就けなかったら俺を頼ってくれよ」
「……それは職に就かないで欲しいと言う事か?」

「そう、受け取られちまったか……でもまぁお前勉強やら運動出来るんだからすぐに職就けると思うなぁ」

一文字とそんな他愛の無い話をした本郷は、背を向けた。

「帰るのか?」
「いや、セワシの所に寄るのさ。セワシは俺を助けに来てくれる程勇敢な所を見せてくれたが……
勉強は悲しいまでに出来ない奴でもあるからな」

一文字の問いに振り向く素っ気無く答えると、そのまま外へ歩みだした。

「俺も付いて行っていいか? 久々に会ったんだからよ」

 しかし、一文字は本郷に対しそう言い放つと、彼は椅子から立って本郷の元に歩み寄り手で肩を軽く叩いた。

「いや、しかし……」
一文字の言葉に躊躇する本郷だが、ドラえもんは寄り添い、こう呟いた。

「いいじゃないですか? もし彼らが襲ってたら護れば良いし、
それに彼らの正体を突き止める事に協力してくれる人にもなれるかもしれないし」

ドラえもんの言葉に本郷は静かに頭を縦に振り、一文字にこう言った。

「付いて来ても良いが……もし俺があいつに勉強を教える事になっても、指導力があるかどうかは期待しない方が良い」
「そりゃぁ、お前は頭良すぎるから、それに指導力がついていけなくなるんだろうなぁ」

本郷の言葉に、皮肉としか取れない発言を取った一文字は一足早く外へ出た。

「本郷さんって、一文字さんの話を聞くにはとっても頭がいいんですね……昨日のを見た限り、運動も出来るみたいだし……羨ましいな」
「そうか? 逆に俺は君が羨ましいと思ってる、家族がいるから」
「え?」

ドラえもんの言葉にそう返した本郷、その本郷の返事に一瞬困惑したが、一文字が外で待っているのでこの家から早く出て行った。

「本郷、お前こんな良いバイク……どこで貰ったんだ?」
外に出ると、一文字が「サイクロン」に接触していた。

「ん? ああ、それは……」
「なんかマークが付いているな」

 答えようとする本郷、しかし一文字はそんな中ある「事実」に気付き、それを指摘した。

「本当か?」

 指摘された「事実」を視認しに一文字の傍により、それを見た。

「なんだろうな、これ? Mみたいな形をしたバイクの正面図の後ろに……R?」

 それはバイクに搭乗する時に足を掛ける部位の付近と正面に存在していた。
一文字が言うように「それ」はMを象ったバイクの正面図らしきものの後ろにRが描かれた物だった。

余談だが、そのバイクの正面図らしき物は形状はまるで物語に描かれる悪魔の顔のようであった。

「(MR? あいつの言っていたS.M.Rの事か?)」
そのマークを見て本郷は連想せざるを得なかった、昨日の戦いで蟷螂男の言っていた「S.M.R」だ。

「一文字さん、そのバイクはTP製なんです。僕は時間犯罪者の逮捕に協力してきた事で作ったコネで貰ったんです。僕と本郷さん二機ずつ」

「そうなのか……しかし、格好良いバイクだなぁ」

「……」

「嘘」である……しかもどこかんの答"ありえそうな"だ、現実に"ありえそう"な事を述べた嘘は考えているよりも発覚しにくいものだ、
それを上手く突いたドラえもえ。一文字はドラえもんからの返事を聞いて改めてバイクの造形に目を奪われる。

 そんな光景を見ている本郷の心中は快くない、そのバイクはそもそも「敵」の所有物であるからだ。

「バイクに目を奪われている所悪いが、そろそろ行こうか」
「ああ、そうだったな」

 本郷の言葉で我に返った一文字は自らのバイクに乗ると、ドラえもんと本郷は自らのサイクロンに搭乗する。

「(ドラえもんの座り方、どう見ても赤ん坊が車の椅子に乗っている時のそれだよな……)」

 ドラえもんの体勢に心の中で違和感を感じると、目の前を集中した。

「(マークか……このマークは自戒として削らないで置こう)」

 本郷は一文字の指摘の言葉を思い出してそう考えると、バイクを駆って走った。
それに連なりドラえもんと一文字は彼の後ろに付いて行った。

「ついたぞ」

「ここがお前の生徒のセワシの住んでいる団地か……」
本郷の家を出て数十分、彼らは今「セワシ」の住んでいる団地の入り口の近くにいた。

「よぉし、挨拶しに行くか」
歩いていく本郷とドラえもんを前にして呟いた一文字はそのまま彼らの後を付いて行った。

「セワシ君、帰ってきたよ。本郷さんとそのお友達の方を連れてね」
「え?」

 ドラえもんがドア越しにそう言い放った数秒後、少年がそのドアを開けた。

「上がってください」
セワシは一文字に顔を向けながらそう言うと、扉を開けたまま室内に戻ると、彼らも室内に入った。

「お前がセワシか……俺は一文字隼人、本郷とは城南大学時代の同級生のフリーのカメラマン兼ジャーナリストだ」

「カメラマンとジャーナリストなんですか……何か流石本郷先生の友達って感じがします」

「中々嬉しい事言ってくれるじゃないか……お前のような子供に見られても恥ずかしくない大人になろうと改めて思えるよ」

一文字とセワシの会話、それで発せられた一文字の言葉に顔を少ししたへ向いた本郷……
それは自分自身の今までの境遇を振り返ったからそうしてしまった行動なのかもしれない。

「セワシ……俺が辞めた後、教室の授業はどうなっているんだ?」
「え? まだ代わりの先生出てきてないし、授業は自習でしたよ」

 本郷はふと自分が辞めた後の教室の状況をセワシに聞いた彼、彼らの話を聞いた一文字は

「混乱しているんだろうな? なにせ、本郷みたいな頭が良い先生が辞めちまったからな」
とどこか皮肉を込めた口調でそう言い放った。

「あら? お兄ちゃん、その人は誰?」

 そこにドラミがやって来て、ドラえもんに問い掛けた。

「この人は一文字隼人さん、カメラマンやジャーナリストをしているんだ」

「そうなんですか……隼人さん、初めまして……?」
「?」

 ドラえもんの紹介の後、隼人に向かってドラミは自己紹介の言葉を述べたが、言葉を発するのを忘れて彼の顔を数秒間見て……

「もしかして、あの……一文字隼人さん!?」
「知ってるの!? ドラミちゃん!?」

 ドラミの様子に思わず声を上げて問い掛けたセワシ、そして彼女はこう答えた。

「知ってるも何も……この人テレビで出ていたわよ。柔道6段、空手5段を取っていて、しかもお父さんが外交官って凄い経歴なのよ!」
「そうなの!? 柔道や空手はよく知らないけど、数字を聞くと本当に凄い人だって分かるな……」

ドラミの口から語られる「彼」という人間の凄まじさ、ドラえもんは初めて聞いたようで驚愕して口を開いている。

「一文字は幼い頃から空手や柔道の練習をしていたと聞いた事があったが……お前の凄さが改めて分かるよ」
「お前から言われると確かに俺は凄いかもしれないな……天才のお前と同じ大学に通えていて卒業出来たんだからな」

一文字は本郷の言葉にそう返した。

「(だけど……そんな凄い人が良くあいつらに誘拐されなかったな……)」

ドラえもんは一文字についての経歴を聞いて、ある事を考えざるを得なかった。
―何故、一文字のような優れた人間が本郷と一緒に彼らに改造目的での拉致に遭わなかったのか―

「(あいつらは、もしかしたら本郷さんの後に一文字さんを拉致するつもりだったんじゃ……いや気の所為かな?)」

ドラえもんは考えすぎて「しまった」、何故なら自分が考えた事が……「正解」だったからだ。

「博士、本郷……いくら真祖で秀才とは言え、あまりにも戦闘能力が高過ぎるのでは?」

「いや幹部、大幹部候補……いつか、そんな事を聞かれるんじゃないかと思ってたよ。
当たり前と言うしかあるまい、彼はSMR部隊の隊長クラス……として選び改造手術を施したんだ」

助手の問い掛けに答えていた「博士」、その表情には口惜しさが現れていた。

「まぁ最も私は本郷に目を付けると同時にSMR部隊の副隊長候補としてある男も狙っていたんだがな」
「……その男とは?」

博士はそう発言して助手に問われ……

「空手5段、柔道6段の腕前を持つ格闘家でもあり、本郷の同級生でもある<一文字隼人>だ」
と答えると、助手に背を向けてそのままどこかへと歩いた。

「お前達と話していると、楽しくなるな」
「一文字さん、もっと大学での思い出を話してくれませんか?」
「してもいいが、退屈かもしれないぞ? 俺の大学生時代は本郷との競争だけで語れるようなもんだからな」

セワシやドラミと笑顔を見せて会話をしている一文字、そんな彼らを見ていたドラえもんと本郷……

「本郷さん」
「どうしたんだ」

ドラえもんに話しかけられた本郷……そして

「セワシ君やあなたの生徒だった子供達の為にも平和な日々を守る為に……あいつらを倒さなくちゃいけませんね」

彼は静かに本郷に言い放つ、ドラえもんの言葉で彼は改めて自分のしなければいけない事を再確認出来たと同時に……
未来を負の面で考えてしまった。―日本規模ではなく地球規模かもしれない勢力を持っているであろう彼らに勝てるのか―

―例え、彼らを倒しても自分は昔の頃のような生活を送れるのか―

―そもそも自分のような異形の存在が必要とされない時代が来るのだろうか?―と

「本郷さん?」
「何でもないさ」

ドラえもんの呼び掛けに答えた本郷だったが、その直後に表情に曇りを見せた。

「ふぅ、昔話してついつい力が入ったな……」

腕で額の汗を拭った一文字……そして

「本当は本郷が誘拐された事件の話を聞いて、その誘拐した組織について調べようと思ったんだが……
これじゃただ遊びに来ただけだな……」
「え?」

一文字がふと発した呟きに一瞬困惑するセワシ。

「まぁ明日にでも聞きに来るか……悪いな……昔話に付き合って貰って」
「いえそんな……楽しかったですよ」

一文字の言葉にそう返したセワシ、それを聞いた一文字はどこか嬉しそうな表情を浮かべて玄関へ歩く

「あ、セワシ君。僕、本郷さんと一緒に一文字さんの帰宅に付き合ってくるよ」

 ドラえもんの問いかけでセワシはある事を察すると、首を縦に振った。
それを確認した彼は本郷を連れて一文字と共に玄関の外へ向かった。

「(わざわざ俺の帰りに付き合うなんて……少々不気味だが……もしかしてあの事件の一味が俺を襲ってくるんじゃないかと思って?)」

一文字は彼らの行動でそう考えたが、考えすぎだと思ってバイクに乗り込む。

「(よくよく考えたら、本郷さんの関係者でもあり優秀な人でもある一文字さんが奴らに何もされていないなんておかしい……やっぱり)」
「(一文字は……)」

自分のサイクロンに乗り込んだドラえもんと本郷、彼らは乗り込みながらそう考え……そして

「(既に目を付けられている?)」
と一文字が既に狙われていると結論付け、一瞬表情を固めると一文字の方へと顔を向ける。

「悪いな、帰りまで付き合ってもらって……それじゃ行くぜ」
と一文字はドラえもんと本郷に顔を向けてそう言い放つと、先にバイクを起動させて駆け出すと、
それに伴いドラえもんと本郷もサイクロンを起動させ駆け出した。

「(暗くなったな……)」

 一文字はふとそう思いながらバイクを駆り出している、もう辺りは暗くなっている事から今は夜だという事が直ぐにでも分かる。

「(……人影が見当たらないな……けど注意しなきゃ)」

辺りを見回しながらサイクロンを操縦しているドラえもん、だが次の瞬間遭って欲しくない場面に……遭う事になってしまう。

「なんだ!?」

一文字は道の前方に出てきた男に目が向くと慌ててバイクを止めた。

「一文字隼人、俺達と一緒に来てもらうぞ」
その男はそう言い放ち、一文字を睨み付けた。

「その服装、あんた……本郷さんを連れ去った奴らの仲間だな!」
「な、何だって!?」

ドラえもんの言葉に驚愕するしかない一文字……だがしかし驚愕し続けてもいられないのも事実。一文字はバイクから降りると……

「本郷を連れ去って何をやろうとしたんだ?」
「それは俺と一緒に来てから分かる事だ」

一文字の問い掛けにそう返した男は、構えたかと思うと……そのまま跳躍し一文字に襲い掛かる!

「だったら調べるだけだ」
と言い放った直後、何と一文字は飛び掛り襲ってきた男の腕を両腕で掴み、そのまま柔道の要領で放り投げた。

「(凄い、相手を柔道の技で倒すなんて……格闘家だって事が良く分かるな……)」

ドラえもんは先程の光景を見てそう思い、彼の格闘能力に驚愕した。

「ぐ……くそう……!!」

地に投げ付けられた時の痛みに堪えながら腕を動かし……腰のポケットに手を入れて、ある物を取り出した。

「ちっ……」
と男はその物……銃の引き金に指を入れ一文字目掛けて引いた。

「うっ!?」

放たれた塊は弾けたかと思うと、謎のガスが一文字を包み……

「しまった……」

一文字が倒れ付したかと思うと、そのまま起き上がらなかった。

「よ……し……」

それを視認した男は、片方のポケットから物体を取り出し顔に近づけると……

「一文字隼人を確保しました……こちらは抵抗されて体がしばらく動けそうにありまりせん」
「一文字の身体能力を甘く見たな? 全く……」

男は上司であろう男に連絡すると、それをポケットに閉まった。その数秒後、光と共に一人の男が現れた。

「痛々しいな……」

 現れた男は倒れ伏している部下であろう男にそう言い放つと、一文字の元に歩み寄り、抱き抱えようとすると。

「動くんじゃないよ?」

その時、ドラえもんは空気砲を男に向けていた。

「さては私を誘き出す為に今まで沈黙していたな?」
「もちろんさ」

 男はドラえもんに問いかけ、返事を聞くとポケットの中に手を入れた。

「ドッカーン!!」

 

「ちっ!!」

ドラえもんは「何の」躊躇いも無く空気砲から圧縮空気を撃ち出して男の体勢を崩した、
その後彼は本郷にその跳躍力を利用して一文字の元へ急ぐようにと言った。

しかし

「残念だったな」
と不適な笑みをとっさに彼らに向けた男は、ポケットから取り出した何かを一文字に投げつけた。

すると彼の体が光に包まれたかと思うとそのまま消えた。

「しまった!!」

自らの失策としか言えない光景に顔をしかめたドラえもん……そして本郷は……

「……一文字をどこの研究施設へ転送させた?」

静かに、しかしどこか焦っている口調で男に問い掛けた。

「本郷青年か、久しぶりだな」
「き、貴様は……!!」

そんな問い掛けに対する答えを誤魔化すかのように本郷の顔を見て懐かしんだ男、
そしてその男の顔を注視した本郷は顔に赤き模様を浮かべた。

「怒りを抑えたまえ、色男が台無しじゃないか」

本郷の心情を知っていて、あえて軽い発言をした男。この男は何も隠そう本郷を誘拐した張本人たちの一人のリーダー核の人物。

ある意味、本……郷が殺人者とならなければいけない道に陥れた人物とも言える。

 

「一文字を俺のような殺人鬼にするつもりか!? 貴様らはどこまで非情なんだ!!」

「殺人鬼か……何もそこまで卑屈にならなくて良いだろう、君は正当防衛で敵を殺さなければならなかったんだからな」

本郷の怒りの言葉にそう返した男……

そして

「あんた……自分がした事が何なのか分からないわけじゃないだろ……!!」

ドラえもんは静かに怒りを込めて一文字を眠らせた男に言い放ち、服の襟にあたる部位を掴んだ。

「分かっている……だがこんな組織に入った以上、やらなければならないんだ!」

男はドラえもんにそう返した……その表情は彼の口調から恐怖と後悔を物語っていた。


「一文字さんを僕と本郷さんと同じ人殺しの道を歩ませたら、どうなるか分かっているのか!!」
「分かっているも何も、もう改造手術は始まるんだ!!」

ドラえもんは激しい感情を表して彼を脅迫するが、男は「現実」を突きつけた。

「ドラえもん、まずはセワシの家へ戻って作戦を練ろう」

 本郷は静かにドラえもんに寄り添い、静かに囁いた。その時、彼の顔には赤い模様、傷は浮かんではいなかった。

「そうですね……」
とドラえもんは襟元を放したかと思うと、片手で彼の腕を掴むと、もう一方の片手で四次元ポケットを弄って、「どこでもドア」を取り出した。

「さぁ、たっぷり教えてもらうよ」

 ドラえもんは口元に笑みを浮かべて二人にそう告げた。
それを見た男達はその異様とも言うべき光景に背筋が凍り、ただその場に座り込むしかなかった。

「一文字……」
と本郷は顔を少し下に向いてそう呟いた、その時ドラえもんは三台のバイク、
というよりは一台のバイクと二機の戦闘兵器を一つずつ持ち上げそのまま四次元ポケットの中へと収納した後……

二人の男の元に歩み寄ってそれぞれの片腕を掴み、本郷と共にそのまま「どこでもドア」の向こうへ移動した。

「ど、ドラえもんに本郷先生……それにその人達って……先生を誘拐した……」
「それよりも救出の準備だ」

 セワシはどこでもドアからやってきた彼らを見て声を上げると、本郷は誤魔化ようにそう返して、
部屋で言うリビングもしくは食卓があるであろう場所へ移動した。

「教えろ、一文字はどこだ?」

 本郷は静かに二人に問うが、男達は知らないと言いたげな表情だった。

「俺達のような人間は基本転送装置であの人達と関わっている、だから施設がどこに位置するかは知らないんだ」

 男達の答えに彼らは納得せざるを得なかった、何故なら「世の中簡単に上手く事が運ぶ筈が無い」のだから。

「お兄ちゃん」
その一言と共にドラミはセワシと共に彼らの目の前に現れた。

「ドラミ、セワシ君……宇宙救命ボートは改造してある?」
「いや、まだだけど……でも色々考えたよ」

 ドラえもんの問いかけにそう答えたセワシは、ドラミの片腕の肩にあたる部位を軽く叩いた。

「改造の仕方をね」
とドラミは自らの腹部の四次元ポケットを弄ると、その中から巨大な物体「宇宙救命ボート」を取り出した。

「よし、取り掛かろう……本郷さんも手伝ってください」

 ドラえもんは本郷を呼びかけて宇宙救命ボートの改造に取り掛かる事にした。

「セワシ君、その二人を見張っててくれ……怪しい事をしたら殴っていいよ」
「え? う、うん……」

 ドラえもんの言葉に戸惑いながら答えたセワシは男達の方向へ顔を向けた。

「また会えるなんて……」
そしてセワシは静かに男に言い放つ、拳に力を込めながら

「少年、私を殴りたいんだな? 殴ればいい、私はそれをされても反論できない身だからな」

 セワシの心情を察してそう返した男は目を閉じた。

「そうやって許して貰おうと思っているんだろう!!」
「そうだな……そうとしか思えんな……」

 セワシの怒りに、そう呟き顔を下に向けるしか無い男……

「TPに通報するのが遅くなっちゃった……ドラえもん、キッドに連絡して良いかな?」
「そう言えば通報するのを忘れてたね……はい、セワシ君」

 セワシの言葉で、それを思い出したドラえもんは四次元ポケットから謎の物体、いや通信機を取り出してそれを手渡した。
セワシはドラえもんに感謝の言葉を言った後、通信機のスイッチを押した。

「キッド……聞こえるよね? 本郷先生を連れ去った奴らのリーダーと下っ端をドラえもんと先生が捕まえたんだ」
「本当か!? 分かった、少し待ってろ」

 セワシは通信機でキッドにそう告げると、キッドは通信を切った。

「TPが捕まえた後……どうなるのかな?」

 セワシはふとそんな事を思っていたが、その数秒後

「来たぜ」

 その一言と共にキッドがどこでもドアからセワシの目の前に現れた。

「キッド!! あ、ドラえもんと先生が捕まえた二人組みは後ろにいるよ」

 セワシは声を上げて、男達の居る空間を指す。それを見たキッドは、捕まえる為に手錠をかけようと思う前に、ある事に気が付いた

「(何で、こいつら……何にも縛られてないのに、逃げようとした跡が無いんだ?)」

 それは男達が五体満足で動ける事であった、しかし少し考える内にある事に行き着いた、それは「罪悪感」であった。

「お前ら……逃げようとしていないのは……罪悪感からだな?」
「それ以外に、理由があるかね?」

 キッドの問いに、素直に答えた男……そして

「さて……情報はTPに送った後、吐かせてもらうぜ」

 キッドは男二人の腕を片腕ずつ掴むと、どこでもドアの前へ移動して二人を押し出して、そのまま向こうへ

「ふぅ」

そしてキッドはふと溜息を漏らすと、そのまま「どこでもドア」の扉を閉めた。

「あいつらを捕まえたって事はさ……知り合いが捕まった事なんだろ?」
とどこか弱気な口調で問い掛けたキッド、答えは無論予想通り。彼は予想していた、予想していたとは言え悔しさが込み上げる。

今は悔しさが込み上げるしかない。

「ちくしょうっ、奴ら……!! また本郷さんのような存在を……!!」

キッドは怒りと悔しさにより涙を流した……だが、その流れた滴が落ちても彼は戻ってこないだろう。

「キッド、助けに行くよね」
「勿論だ!!」

ドラえもんの問い掛けにキッドは闘志を改めて奮い立たせて答えた。

「キッド、僕も行くよ……前回はただの足手まといだったんだ……その償いとして連れてってよ!」

「お前が俺やのび太に劣らない優秀な射撃手なのは認める……
 だが、お前にはハンターやタイラントの時のような場面には遭遇させたくないんだ……」

セワシも救出に志願した。しかし、キッドは前回の施設潜入での戦いを話に出してそれを拒んだ。

「それじゃ作業を再開するよ……」

「俺も手伝うぜ、無いよりはマシな筈だからな……良いだろ?」

 ドラえもんの言葉でセワシは再び宇宙救命ボートの改造作業に着手した後、
キッドが手伝いを申し入れるとドラえもんは勿論と言いたげな表情で頭を縦に振った。

「あ、キッド、その部品をここに付けて」
「分かった」

ドラえもんの指示通りに部品を取って、それを取ったり付けたりするのだ。
コンピュータの書き換え、制御、入力を行う本郷、ドラえもんはその補助兼部品の取り付け係でもあった。

 そんな作業が数時間程掛かるわけだが……

「(奴らから聞き出せた情報は……あれだけか、今頃ドラえもん君達は改造で手間取っている所か)」

ドラえもん達が宇宙救命ボート改造作業に着手して約3時間程経過した刻思いに浸かる男がいた。
その男こそドラえもん達に失言を発してしまっ……たキッドの上司、TPは二人組みから情報を聞き出していたのだが、得られた情報が「S.M.R」、「B.O.W」関係だけだった。

「(S.M.R<正式名称システム・マスクド・ライダー>……本郷さんが、その一人であり元祖か……恐ろしいな)」

 男はS.M.Rについて思いに浸かる、一人恐ろしさを感じた。

何故ならばシステム・マスクド・ライダーとは次世代高性能戦闘兵と言われている存在で尚且つ本郷が……
優秀な人間である彼それで構成された部隊の隊長になる筈だったと言う事実を聞かされたからだ。

「キャッシュもキャッシュで質が悪いですが、こいつらの所属する組織もそれと同じ位に質が悪いですね」

そこに部下らしき男が彼に話しかける。男はそれに答えるかのように同意している事を表すかのように頭を縦に振った。

「しかし……どうしましょうか? 私達はまた民間人である彼らを危険な場所に行かせなければならないのでしょうか?
一度ならず二度までもと言うのは……」

「君の気持ちは分かるが、彼らは私達が思っているよりも勇敢で有能だ……並みの隊員よりもな」

 部下である男の心情も混ざった問い掛けに若干目を、頭を下に向けながらそう皮肉も少し込めながらそう返した。

「……その二人から装備品を全て取り上げてスーツの一部を切り取って、私に渡してくれ」

 キッドの上司にして一部隊の隊長である彼の言葉その言葉通り数人の隊員たちは二人を囲み、
装備品を取り上げナイフを取り出してスーツの一……部を切り取り、その後彼らはその得た物を彼に手渡す。

「それから……ケロンパスを持って来い。念の為に6枚程な」
「は、はい」

男の言葉に答えた彼はすぐさま駆け足で、それがある場所へ行く。

「(6枚……その内の一枚は連れ去られた一文字隼人の分か……)」

隊員の一人は隊長である男が口に出した6枚を聞いて、そう察したのだった。

「後……空気砲を持ってきたまえ、一人の人間の人体を粉砕できるレベルの出力の新型だ」

「キッド隊員専用として作られた、あれですか……化け物に通じるでしょうか?」
追加注文として男はまた命令を告げるが、隊員の一人が疑問を投げかける、それに対して男は

「何発も撃てば、通じるだろう」
と無責任な言葉で返した。

「……それもそうですね」

この上司にして、この部下あり……と言った所。部下である男はそう言って納得してしまい、そのまま「新型空気砲」を取りに行った。


「こいつらには、必要な情報を持つ程の経歴は無い様だ……監獄に送り込め……キャッシュ一味の隣にな」

「分かりました」

男は隊員たちにそう言い放つと、彼らは二人組みを取り囲み片腕を掴みそのまま「何処か」へと連れて行った。

それを見届けた彼は……

「ふぅ……何で私のような臆病者が"あの"キッドの所属する部隊の隊長になったんだろうな……」
と愚痴を溢して隊員たちから得た二人組みの得物をポケットに入れて目を閉じる

「(大石隊長に、私と変わって貰うように頼んでみるか……あの人はベテランでTPの中でも五本指に入るほどの実力を持っているからな)」


彼はそう考えた後……目を開き決意を固めるかのように呟いた。

「だが……変わる前にドラえもん君達を手伝わなければ……」


ちょうど、その時隊員の男が灰色の筒のような物体を持ち出し、それを手渡した。

「隊長、持って来ました」
「事後報告とはどうも気に食わんが……慌てて持ってきた様子だから不問としよう」

 灰色の筒のような物体こと「新型空気砲」を持ってきて手渡した部下の男の言葉に、そう突っ込みを入れながらもまたも愚痴をこぼす。

「隊長、ケロンパス6枚持ってきました」
「ご苦労」
とそこに隊長である彼に命じられた男が来た、彼からその六枚を受け取り軽く礼を言った。

「では行ってくるさ……」
「え?」
隊長である男は隊員たちにそう言い放ち、背を向けた。

「隊長自ら、彼らの元へ向かうのですか?」
「ああ、この手でこの目でな」
隊員の問い掛けにそう返した彼は、胸ポケットから桃色の物体を取り出して置いたかと思うと、
それは巨大化して男の一回り二回りはあるであろう物体、扉になった、――どこもドアだ。

 彼は、扉を開くとそのまま向こうへと入っていった。

「隊長、お気を付けて」

彼の思惑を察した男は敬礼した。

「もうすぐだ……皆頑張ろう」

 ドラえもんが一同にそう言い放った瞬間、突然彼の目の前に桃色の扉が現れたかと思うと、そこから灰色の筒を持った男が現れた。

「私も加勢させて貰う」
現れた男は、その一言だけ発した後、彼らの元へ歩き出した。

「隊長……何故来ました?」

「謝罪として、私も君達を手伝おうと思ったんだ……それに隊長なんて呼ばなくていい、今の私には皮肉としか受け取れないよ」

 キッドの言葉に、少し卑屈気に答えた。

「ドラえもん君、いないよりはマシ程度だが手伝わせてくれ」
「キッドもそんな事言いましたよ……良いですよ」

隊長の手伝いの志願の言葉に、予想外にも「すんなり」と承諾した彼――そして

「そう言えば、名前は何て言うんですか?」
「麻山秋彦」

 ドラえもんの問いに、ぶっきらぼうに答えたTPの一部隊の隊長こと麻山秋彦(あさやまあきひこ)。

「じゃあ麻山さん、この部品をそこに取り付けてください」
「分かったよ」

 ドラえもんから部品を手渡され指示を受けた彼はその通りに、行っていく。

「もう一頑張りだ」

 先ほどの光景を見ていて、そう言い放った本郷……彼の言葉で士気が上がる。そして40分ほど経過して

「お、終わった……」
と呟いたドラえもんが座り込む、作業を終えた彼らの目の前には改造し終えた宇宙救命ボートが堂々と居座っている。

「私からのお土産だ」
そこに麻山が手にケロンパスを取り出して、それをドラえもんの背中に張った。

「ありがとうございます」

ドラえもんが感謝の言葉を言っている内に麻山は本郷、キッド、セワシ、ドラミの背中にケロンパスを貼っていた。

「隊長、今回だけは恩に着ますよ」

「皮肉にしか思えないから隊長と呼ぶな」

キッドの言葉にそう返した麻山はドラえもんの元へ移動した。

「このケロンパスは連れ去られた一文字青年専用だ、持っててくれ」
「分かりました」

そして彼にケロンパスを手渡した麻山

「後、これで貸し借り無しです」

その直後、ドラえもんは自らの四次元ポケットを弄り"自らの"ケロンパスを取り出すと、それを麻山の背中に貼った。

「酷い事を言った私に、こんな事をしてくれてありがとう」

麻山は彼に感謝の言葉を述べているうちに、麻山以外にケロンパスを貼られた彼らは、
それで充分に疲労を回復した事を感じて確認した後はがした。

「さぁ、行きましょう」

 ドラえもんは改造した宇宙救命ボートを自らの四次元ポケットに収納した後、どこでもドアを取り出して扉を開けた、
その向こうは夜なので暗い。

「よし」

 キッドの言葉に連なるかのように「一文字救出班」と「帰りを待つ者達」は、その向こうへと……

「留守番、宜しくね」

 どこでもドアの向こうは緑の芝が広がってベンチが存在し電灯が唯一の光源である公園だった。
ドラえもんは改造した宇宙救命ボートを取り出し持ち上げ置いた後、その一言で中へと入る。

「一文字救出班」もそれに連なり中へ入っていった。

「私達が二人から押収した物をコンピュータの解析装置に入れれば……」

 麻山は二人組みから押収した得物を、内部の壁に設置されている物体の中へと入れると、
しばらく無機質な音が響いたかと思うと入り口が上から障壁<シャッター>が降りて塞ぐ。

「絶対に帰ってきてね!!」

 キッドのセワシに応えるか否か、ボートは底部から火を発して浮かんだかと思うとそのまま何処かへと飛んでいった。

「一文字隼人をカプセルに入れるんだ」

 彼らが一文字隼人の救出と言う名の奪還を行う為に探索に飛び立った数時間前、
つまり一文字隼人が何処かへと転送されて数分後「博士」は助……手である白衣を着た男達に指示を下す。

一文字は医療の現場で見られるであろう搬送用のベッドにマスクを付けられて眠っているままであったが、
助手たちは数人で一文字を抱え上げて円状にガラス張りがされている物体の中へ入れた。

「一文字隼人の改造手術は本郷の時とほぼ同様だ、本郷は腕力よりも脚力を少し比重に置いて改造したが、一文字はその逆だ。
 腕力に少し比重を置いて改造する」

 白衣を着た男達は博士の言葉に頭を縦に振った。

「さしづめ"蹴聖の本郷、拳聖の一文字"と言った所ですか」

「変な造語だが、まぁそういう事だろう」

 男達にはお馴染みと言える博士とその博士直々の弟子、もしくは助手である若者の会話。

「さぁ茶番もこれで終わりにしなければならんぞ」

 博士の一言でまるで顔が変わったの如く形相が真剣になる男達……そして博士はこう言い放った。

「では一文字隼人の改造手術を始める」

人は同じ過ちを繰り返すように……悲劇はまたも繰り返されるのであった。

 

この話は続きます。

 


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