RAGNAROK

名無しさん

 

第7話

セントバーナードシティ スタジアム PM 4:50

ドラえもんがシャミーと再会していた頃、ジャイアンとスネ夫は放送室を探してさまよっていた
ジャイアンが提案してから数分経っているが、なかなか見つからない

それどころか、ゾンビの集団と遭遇し、最悪の状況に陥ってしまった

「ジャ、ジャイアン 逃げた方がいいよ〜」

「馬鹿野郎!ここで逃げたら、男がすたるぞ!」

そんな事を言われて、怯えながらもジャイアンの横に並びゾンビと戦うスネ夫
ジャイアンは「うおおお!」などと叫び、奮起している

ゾンビは動きが遅いため、あまり射撃が得意ではない(それが普通)2人でも倒せないことは無かった
廊下には銃声と、薬莢の落ちる音、そしてゾンビのうめき声が響いていた

「よし、だいぶ数が減ってきたな。もう少しだ!頑張れスネ夫っ!」

「う、うん・・・!」

2人の間に楽勝ムードが漂い始めた。が、その直後、2人は地獄を見ることになる

「・・・ん?」

最初に異変を感じたのはスネ夫だった。今までとは何かが違う『音』が聞こえた

「ねえジャイアン、今何か聞こえなかった?」

ジャイアンは最後のゾンビを撃ち倒し、スネ夫の方を向いて言った

「いや、何にも聞こえなかったぜ」

そう言った瞬間、ジャイアンにも『音』が聞こえた。それはまるで、獲物を目の前にして興奮している猛獣の唸り声のようだった

「な、なんだ・・・? この『音』は?」

「ジャイアン・・・。早く逃げようよ・・・」

ジャイアンは静かに頷いてスネ夫に合図を送った

ジャイアンとスネ夫が一気に後ろに振り返ってダッシュで逃げようとした
が、2人の目の前には信じられないものが、立ちはだかっていた

「うわあぁぁあっ!!」

「おわあぁ!! 何だこいつ!!?」

それは2人がいままで見た気持ち悪いものベスト3に入るほど、強烈な外見をしていた

頭部は殆どの所が腐食しているのか、小さい穴が所々に開いており、そこから脳が顔を覗かせていた
頭だけではなく、体中が腐食していて、心臓もほぼ丸見え。筋繊維がむき出しになっている
足は爬虫類を思い出させるような形をしている。腕は両方とも丸太のように太い。それに、身長はゆうに2mを超えていた。

ただ、顔だけはまだ人(ここでは犬猫人間の事です)であった面影が少しだけ残っていた
そして2人はなぜかその顔に見覚えがあった

「グアアァァァアア・・・」

威嚇するような声を上げて化け物は2人にゆっくりと近づいてくる
これは、マズイと感じたジャイアンがスネ夫にむかって言った

「スネ夫! 逃げるぞ!!」

「わ、わかった!・・・って、ジャイアン、後ろっ!!」

その声に、ジャイアンは無意識に身をかがめた
すると後ろから、ものすごい勢いで拳が飛びぬけていった

轟音と共に、拳が床にめり込んだ。もし、かがんでいなかったら、確実に死んでいただろう
ジャイアンはすぐさま立ち上がり、スネ夫と一緒に脱兎のごとく逃げ出した









しばらく走っていると、いつの間にか2人はすこし大きい部屋に入っていた
ジャイアンは辺りを見回して、ゾンビがいないことを確認すると、座り込んでいるスネ夫を引っ張り上げ、探索を始めた

部屋の中には、ゾンビに殺されてしまったと思われる死体が数体倒れていた

「うわぁ・・・。トラウマものだよ・・・・・・。これ」

スネ夫の視線の先には、上半身がない死体が壁に寄りかかっていた
そばには、ハンドガンが悲しく落ちている

「弾は、入ってるかな・・・?」

ジャイアンは恐る恐るそれを拾い、マガジンを取り出した

「少しだけど残ってるな・・・。銃は使えそうに無いけど弾は大丈夫そうだ。みんなと合流したらのび太に渡すか」

そう言って、マガジンから弾を抜き取るとポケットに入れた


入手:ハンドガンの弾×7

所持:ジャイアン



ジャイアンが振り返ると、スネ夫がいない

「スネ夫!? あいつ、どこ行った?!」

ジャイアンが焦っていると、奥の方から声が聞こえた

スネ夫の声であるのは間違いじゃなかったが、なにを言っているの分からない
ジャイアンは、声のもとへ走って行った。すると、だんだん言ってる事が分かってきた

「ジャイア〜ン! 早く来てー! 人がいるんだ!」

一瞬信じられない言葉だったが、たどり着くと確かに人がいた。正真正銘生きている人だった
だが、よく見ると右肩に怪我を負っているようだ

「だ、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ。しかし、こんなところに生きている人がいたとはな・・・」

服装から、その人はおそらく警備員かそういうような役職であることが分かった

「あなたは、ここの警備員なんですか?」

「いや、俺はこの町の警察官だ。今日はでかいコンサートがあったから、その為にな」

「コンサート?」

「ああ。休日返上で呼び出されたんだ。なんでも、キャットハンド社のお偉いさんが来るからしっかり警護しろ、だと。
 そしたら、この有様だ。どこから出てきたのか分からない腐った奴らに襲われて、仲間の殆どが今じゃあアイツラの胃袋の中さ・・・。
 俺も、喰われはしなかったが、ふいをつかれて噛まれちまった。・・・んで、どうにかこうにかこの放送室に逃げ込んだって訳さ」

「そ、そうだったんですか・・・って放送室!!?」

いきなり声を張り上げられ、警察官は思わず「は、はい」と答えた
目の前には、ハイタッチをして小躍りしている子供。何がなんだか分からなくなった

「ど、どうしたの?」

「いや〜、探してたんですよ、放送室」

「さっき、体中が腐った変な化け物に襲われて逃げてきたらこの部屋に着いてたんですよ。
 でも、ここが放送室だったなんてな〜」

「そ、そうか。でもなんで・・・」

「ここから放送して、生きている人がいるかどうか確かめようとしてたんですよ」

「それなら・・・、無駄だよ」

「え?」

「聞こえなかったのか?ついさっきだぞ。君たちが、この部屋に入ってくる少し前に放送を入れたんだ。
 でも、なんの反応も無かったぞ。」

 それを聞いてスネ夫は疑問を持った。放送を流したのであれば確実に聞こえるはずである
学校の放送さえも、どこに居ても絶対に聞こえる。ましてや、学校の何倍も大きいスタジアムの放送であれば
聞こえないということは絶対にないとスネ夫は考えた

 だが、ふとスネ夫は思い出した。あの化け物と遭遇した時のことを。
あのときの音はもしかしたら、その放送だったのかもしれない。だとしたら、なぜあんな音になったのか
そこまで考えて、スネ夫はいまここで1人で考えても変な憶測で終わってしまうだけ思い、それ以上考えるのはやめた

「そうですか・・・。そうだ! みんなをここに呼ぼう!」

「みんな? 仲間がいるのか?」

「はい。 えっと、どうやってやるんですか?」

「左に、赤いスイッチがあるだろ。それが電源だ。押したら、音量を設定したらマイクの電源を入れるんだ」

「OKです。やりました」

「あとはマイクでしゃべるだけだ」

スネ夫は深呼吸して話し始めた

『みんな、聞こえる?こちら、2班のスネ夫。分かると思うけど、今、放送室にいる。
 ここで、生きている人を見つけたんだ。その人から、いろいろ話を聞いた。それを伝えたいから早く来て欲しい
 繰り返すよ、今放送室にいる。早めに来て欲しい』


「ふぅ、これで大丈夫・・・かな」








セントバーナードシティ スタジアム放送室 PM 4:56

放送を入れてから、数分後、無事に全員が集まった。再会直後、全員がドラえもんがシャミーと一緒に来たのに
驚いたのは言うまでもない

「で、スネ夫くん、話を聞いたって?」

スネ夫はうなずいて、警察官から聞いたことを話した。
それからあの化け物に襲われたことも

「なるほど。それじゃあ、まだこの町がこうなった原因はわかんないのか・・・」

「それより僕は、スネ夫たちが襲われたっていう『化け物』が気になるんだけど」

「それについては、今話し合っても、わからへんやろ。警官さん、あとなんか知ってることあらへんか?」

「俺が知ってるのは今話してもらったことだけだ・・・って、ちょっと待てよ」

全員が警察官のほうをむいた。そしてダクが問いかけた

「どないしたんですか、なんか、思い出したんですか?」

「ああ、ちょっとな。関係ないかもしれないけど思い出したんだ。 数ヶ月くらい前だったか、大変な猟奇事件が
あったのを覚えてるかい?」

「ええ、覚えてます」

「オレ、覚えてないんだけど」

「もうっ! ハチッたら、この町の郊外の民家が5,6人のグループに襲われて一家全員惨殺された事件よ
 あの事件のせいで、学校が臨時休業になったでしょう!」

チーコに叱られて、謝るハチを気にしながら、警察官は話を続けた

「もう、いいかい? それでうちらが総出で調査をしたんだ。だけどまったく手がかりをつかめずに結局、捜査は打ち切られた。
 そのあと、キャットハンド社が事態を収拾したらしいんだが・・・怪しいだろ? 
 そういえば、最近署長の様子が変だったな。な〜んか、悩んでたような・・・。そうだ!もしかしたら『警察署』に何か
手がかりがあるかもしれない!」

警察官の話はかなり重要なことだと一同は感じていた。それに、『警察署』という新たな目的地もできた
全員が装備の確認をし、出発しようとしたときのび太が言った

「警官さん、何してるんですか?一緒に行きましょう!」

のび太の言葉に、警官はうつむいて首を横に振った

「悪いが、俺は行けない。分かるだろう?俺はゾンビに噛まれた。今、こうやって喋るのもかなり辛い・・・。
 だから、とても君たちと行くなんて無理なんだ。これは警察署の鍵だ。受け取ってくれ・・・・・」

警官はポケットから鍵を取り出して、のび太に渡した

「それと、これは噂なんだが、うちの警察署には何か凄いモノがあると聞いたんだ」

「凄い物?」

「単なる噂だから、頭の片隅に置いといてくれればいいさ・・・っつ!」

「だ、大丈夫ですか?!」

「大丈夫さ・・・、いきなりゾンビにはならないよ・・・。いいよ、もう行ってくれ・・・」

のび太は後ろ髪を引かれつつも、その部屋を後にした。その後、のび太に続いてドラえもん、静香、ジャイアン、、、
とハチ以外の全員が部屋を出た

ハチも部屋を立ち去ろうとしたとき、警官に呼び止められた

「なんですか?」

「なぁ、ここに来る途中、もう1人の警官に会わなかったか?」

そう言われて、一瞬何のことだか分からなかったが、ハチは直感した
ケルベロスに襲われたときに、かばってくれた警官の事だと
何の根拠も無かったが、間違いないとハチは思った

「はい。だけど、その人はオレを、いや、オレ達をかばって・・・」

「そうか・・・。わかった。ありがとう」

ハチが振り返ると警官はまた呼び止めた

「そこの引き出しを開けてくれ・・・」

ハチは「なんだろう?」と思いながら警官が指差した引き出しを開けた

「これは・・・?」

引き出しに入っていたのは剣の柄の部分だった。しかし、調べてみるとトリガーのようなものが付いている
そのトリガーを引くと、ロッドソードのように、剣身が飛び出してきた。その形は、日本刀に近い形状だった

「す、すげぇ・・・」

「どうだ、すごいだろ。それ、俺のなんだ。やるよ」

「え!?いいんですか?」

「もちろんさ。どうせ俺はもう使えない・・・。その代わりに俺の頼みを聞いてくれるか?」

「はい!」

「じゃあ、まず1つ目、この事件の謎を、絶対に解いてくれ」

「はい・・・!」

「あともう1つ・・・」

「なんですか?」

警官は顔を上げ、真剣な顔でこう言った

「俺を・・・、殺してくれ」

「えっ!?」

ハチは一瞬自分の耳を疑ったが、警官の心情を読み取ったのか、静かに頷いた
「・・・ありがとう」



その後、ハチは涙をこらえながら手に入れたばかりの剣で、警官を斬った



直後、ハチは静かに叫んだ

「絶対に・・・暴いてやる・・・!!」




そう言って、ハチは部屋を後にした。新たな決心を胸にして・・・

 

第8話

セントバーナードシティ スタジアム入り口 PM 4:56


「はぁ、はぁ みんな、平気?」

 ドラえもんが声をかける先には疲れ果てて、今にも倒れそうなのび太達の姿が。
なぜなら、スタジアムの中で、とんでもない数のゾンビと戦闘になったからである
幸いなことにスネ夫達が遭遇し、殺されかけた化け物とは出遭わなかったが、それでもかなりの苦戦を強いられ、
弾も殆ど撃ち尽くしてしまっていた

他の者達より先に体力を回復させたハチが、みんなを励ますように言う

「早く行こうぜ、こんなところでへたってる場合か?」

その声にいち早く反応したのは、ジャイアンだった。すぐさま立ち上がり、みんなを元気付けた
それが良かったのか、なんとか全員体力を取り戻したようである
話ができる状況になったのを確認すると、ドラえもんが今後の予定について話し始めた

「よし、みんな大丈夫だね。 これから僕達は、警察の人が言っていた『警察署』を目指す。
 もう銃の弾もあまり残ってないと思うけど、警察署に行けば補充できると思う。
 それに、警察署には手がかりがあるかもしれないということも忘れないでね。
 ここから警察署まで、どれくらいかかる?」

「そうね・・・、大体10分ぐらいだと思うわ。確か5番街にあったはずだから。
 あと、警察署の入り口の前に天使みたいな像があったのを覚えているから」

「なんや、チーコ。やけに詳しいやんけ」

「まあね。ここには友達もいるし、よく遊びに来てたのよ」

警察署への情報を手に入れ、一行は警察署に向かう
歩き出したとき、ハチの様子が少しおかしいことに、ドラえもん以外は気づかなかった

「ハチ、どうしたの?さっきから怖い顔して・・・?」

問いかけられ、少し悩んだハチだったが、ドラえもんだけには伝えた方が言いと思い、あの時の事を話した

「そっか・・・。じゃあ、その人のためにも絶対に・・・・ね」

「・・・ああ」

2人が少し暗くなっていると遠くからジャイアンに呼びかけられ、2人は慌てて合流した










キャットハンド本社地下 最高機密室 PM 5:02


薄暗い部屋の中で数十人の男が、コンピュータで何かの作業をしている。部屋の中には大小あわせて
100を超えるモニターがあり、何かを監視しているようだ

黙々と作業をしていると、唐突にドアが開き背広を着た男が、比較的大きなモニターの前に座っている男に声をかけた


「おい、どうなんだ?状況は・・・?」

「思ったとおりですね。街全体が地獄絵図ですよ」

モニターに写っていたのは、まさに地獄と化しているセントバーナードシティの一角だった
そこには、生きる屍と化した住民が、いや、住民であったもの苦しそうに呻き声を上げてふらふらとさまよっている
それを見て、背広の男が少し笑みを浮かべながら言った

「万事順調、というところか」

「ええ、ただ・・・」

「どうした?」

「生存者を確認しました。子供のようです。数は・・・7人です。それと、あの機械猫です」

映し出されているのは警察署に向かう、ドラえもんたち。それと、モニターを見ている男の言葉を聞いて、背広の男は驚いた

「な、なんだと!! 確かか?!」

「ええ、間違いありません。データに完璧に一致します」

「クックック・・・。あの小僧め、いい仕事をするじゃないか。」

「・・・スパイのことですか?」

「ああ、引き続き監視を続けろ。何か変化や異状があったらすぐに伝えろ どんな小さなことでもかまわん」

「かしこまりました」

「それとだ。傭兵部隊を投入させる。生存者の救出と言う面目で、今回の事件の資料、生物兵器のデータ回収をさせろ
 スパイの方にも連絡しろ。あいつらを監視させ、おかしなことをするようであれば殺せ、とな。
 ただし、機械猫は我々の方に連れてくるように。生きたままだ」

「了解しました、社長」

社長と呼ばれる男は、ドアを開けて、その部屋を後にした。そして部屋を出た直後、男は狂ったように笑いはじめた
笑うのををやめると、今度は不気味に呟いた

「機械猫め・・・。まさか会えるとは思っても無かったぞ。
 クックックックック・・・・・。父さんの恨み、ここで果たしてやる・・・」









―――――――――――――――――――――――――――――――――



セントバーナードシティ 5番街 警察署前 PM 5:04


「ここが、警察署・・・」

のび太の目の前には、鉄格子の門と、チーコの言っていた天使の像が怪しげにに立っていた
ゾンビに襲われたのか、辺りには夥しい血痕と、抵抗する際に使ったと思われる銃器が落ちていた

「くそ、ここもやられたのか・・・!」

ハチが怒りをあらわにしている。そんなハチの肩を叩いて、のび太が前に出た

「みんな、行こう」

そう言うと、ポケットから鍵を取り出した。そう、あの時警官からもらった鍵である
「カチャッ」と、鍵の開く音が鳴った。その後、鉄格子の門が独特の音を立てながら開いた

 門を通るとき、全員が地獄への門をくぐっているような気分になった
この警察署、ある大きな屋敷を改造して建てられたので、門を通った先に、またひとつ玄関があった
それもかなりの大きさがあり、見上げるほどの高さである

「じゃあ、開けるよ・・・」

その場に緊張が走る。ドラえもんがドアを引くとそこは広間だった。正面には扉があり、少し上を見ると2階が見える
パッと見るだけでも、ドアの数は普通ではない。ここの警官はよく迷わなかったな、と感心してしまう
このような事件がおきていなければ、そのつくりの美しさに感動できたはずだったが、中も外と同じような状況だった

血痕、銃痕、薬莢が散らかっている。中にゾンビがいるのは、容易に想像できた

「中もか・・・」

「ここは、耐えて、進もう」

「ああ・・・」

警察署内が静かなせいか、一行の足音がひどく響く。その音に反応したのか、ゾンビが現れた
慌てて、のび太とドラえもんが戦闘態勢に入った瞬間、ゾンビの首が弾け飛んだ。それと同時に、こちらにも襲い掛かってきた
何が起こったのか、まったく飲み込めずに、間一髪それを避けたドラえもんは、飛び掛ってきた何かに、
弾もあまり残っていないサブマシンガンを連射した

混乱と恐怖が辺りを漂うなか、謎の物体は、ドラえもんの反撃に対して、何もせずに、暗闇の中に溶けていった

「大丈夫!?ドラちゃん?」

シャミーが心配そうに駆け寄る。うまく避けられたのか、ドラえもんには傷ひとつ無かった

「何だったんだ?今の?」

「分からない・・・。でも、気を付けたほうがよさそうだ」

「そうね・・・」

サブマシンガンのマガジンを見たドラえもんは、「しまった」と言う顔をした

「どうしたの?」

「弾・・・。無くなっちゃった・・・」

「実は、僕も殆ど無いんだよ。ホラ」

のび太はハンドガンから、弾を取り出し、手のひらにのせた
見ると、残り4発ほどしか残っていなかった。のび太だけではない。スタジアムでの交戦と、警察署に来るまでで、
ほぼ全ての弾が底をついてしまった

「このままじゃ、アカンで。多分、こんなかは、さっきみたいな奴もおるやろうし・・・。まずは弾の補給が先決じゃないか?」

ダクの意見に、全員が賛成した。武器が見つかるまでは、剣を持っているハチを中心に、戦うことになった



しばらく歩いていると、署員のデスクがある部屋に着いた
ここから何か見つかるかもしれないということから、調べることにした一行

だが、どんなに探しても、それらしいものは見つからなかった
その代わりに、こんなものを手に入れた


入手:ハンドガンの弾×2
   ショットガンの弾×3


その後数十分探しても、見つかったのはこれだけだった

「ここには、もう何も無いみたいだな・・・。次、行こう」

部屋を出ようとしたとき、のび太が引き出しの中から、何か光るものを見つけた
すかさずのび太は手にとって観察した。どうやら、それは金属製のエンブレムで、鷹のような鳥が描かれている

「何だろう?これ?」

のび太が不思議そうに眺めているとドラえもんに呼ばれ、急いで向かった。

このときのび太は無意識にそのエンブレムをポケットに入れてしまった

 

第9話

セントバーナードシティ 警察署 PM 5:07

「おい、どうするよ・・・?」

静寂に満ちた空間に響いた声は、絶体絶命の状況をどう突破するかを問いかけるものだった
一行の目の前には今までに無い数の、ゾンビがいた
呻き声を上げながら、ゆっくりと近づいてくる

そんななかで、先陣を切ったのはハチだった

「オレが斬り込む! のび太、ジャイアン、援護してくれ!!」

のび太とジャイアンは、銃を構え、ハチの後ろについた

「おれ達の弾にあたるんじゃねぇぞ!!」

「あたらないように撃つんだろ!」

勢いよく駆け込んで、まずは先頭のゾンビを難なく斬り倒す。それに続いて、2体目、3体目・・・
あの警官からもらった剣は、ハチにとって、まるでもともと自分が愛用していたものと思うほど使いやすいものだった
とても不思議な感覚だった。自分の手と剣が同化していくような、そんな錯覚に陥ってしまうほどだった

「援護しろって言ったけど・・・、その必要が・・」

「無い・・よな・・・?」

援護を任された2人は呆然としていた。その内、一行の目の前のいたはずのゾンビ達が、1体残らず倒れてしまった

「すげぇ・・・」

それしか言えなかった


「・・・ふぅ、よし、行こうぜ」

何事も無かったかのようにハチは、振り返って言った
その言葉に反応して、硬直していたジャイアン達が動き出したその時だった

ものすごい速さで『何か』が飛び抜けていった

「何だっ!??」

見ると、そこには身長は小柄だが両手に鋭いツメを持ち、体はまるでトカゲと蛙を組み合わせたような姿で、
足には大きな鉤爪がある、「異体」とも呼べる姿だった
それを見たスネ夫が思わず叫んだ

「ハ、ハンターだーーーー!!」

「『ハンター』?!」

スネ夫が叫んだことに驚いている隙を見て、ハンターと呼ばれるものがのび太に襲い掛かった
そのスピードはとても速く、皆が気づいたときには、すでにのび太の眼前で攻撃態勢をとっていた

「わっ!!」

慌てて後方に飛んだのび太だったが、遅かった。ハンターは目にも止まらぬ速さで、走り抜けざまにのび太を切りつけた
のび太は間一髪急所を外したが、左肩から大量に出血した

「痛ぅっ!! くそぉ!」

 身を翻して、ハンターの飛び抜けていった方向に銃を乱射するのび太。数発命中したようだが、ハンターはものせずに、
反転してまた突っ込んできた

遂に、のび太のすぐそばまで来たハンター。止めを刺そうとツメを振り上げたその瞬間、銃声と共にハンターが吹っ飛んだ
「ボトッ」という音と一緒に、ハンターのものであろう腕が、床に落ちた

「大丈夫か?! のび太?」

銃を撃ったのはジャイアンだった。ショットガンで撃たれ、壁にうちつけられたハンターは、すでに息絶えていた

「ありがとう、ジャイアン・・・」

「いいって事よ!! 困ったときはお互いさまだもんな」

ジャイアンは、座り込んでいるのび太に手をさしのべてゆっくりと立たせた
その時、ジャイアンは驚いた。立った一瞬触れただけなのに、自分の手が真っ赤に染まっていたことに

「おい、ドラえもん。包帯かなんか無いか?」

「う、うん。あるよ。 のび太くん・・・。本当に大丈夫?」

「う〜ん、ちょっと痛いかな」

頭をかきながら苦笑いしているのび太に、静香がのび太の肩に包帯を巻いた
包帯を巻き終えた静香がスネ夫に問いかけた

「スネ夫さん、さっきの何?」

難しそうな顔をしながら、スネ夫が答えた

「あれは、『ハンター』って言って、生物兵器だよ」

「生物兵器!!??」

「うん。これもゲームの中の話なんだけど・・・」







キャットハンド本社地下 最高機密室 同時刻

「社長、まずいですよ」

「どうした?」

先ほどの男と、『社長』がモニターを前に話している。不都合が生じたようだ

「例の子供達の1人が、ハンターの正体に気付いたようです」

「何だと・・・。それは本当か?」

「ええ。厄介ですね。このまま放っておいたら、奴等、分かってしまいますよ?
 この事件の原因が我ら『キャットハンド社』だということに」

モニターを見ていた男が、『社長』の方を見た

「まあいい、いずれにせよ奴等が気付くのにはまだ時間がかかる。あの小僧もいるしな・・・。
 それより、どうなんだ? 『権力者』 の様子は・・・?」

「ちゃんとこちらの命令に従ってくれていますよ。今、警察署に向かわせています
 じき、やつらと接触するはずです。面白いことになると思いますよ・・・」

「クックックッ・・・。楽しみにしているよ・・・・・。 『父さん』」


そして、『社長』が部屋を出ようとしたとき、「傭兵部隊、無事潜入完了しました」と言う声が奥から聞こえた
『社長』は軽くうなずいて、部屋のドアを開けた










セントバーナードシティ 警察署 署長室 PM 5:11

一行はハンターとの闘いの後、すぐ近くにあった部屋で休憩をとることにした。それで入ったのがこの署長室である

「ここは、署長室か?」

「多分そうだろうね」

そこは、さすが署長室といった雰囲気であった。本棚が並び、壁にはいろいろな置物や、
レプリカの銃などが飾られてあり、床はきれいな真っ赤のカーペット。

部屋全体がキレイに片付いていたが、デスクだけは書類やらなにやらで散らかっていた
その中で一つ、気になるものが置いてあった

「何だこの本?」

ドラえもんが手に取ったのは・・・




「『署長の日記』・・・?」

ドラえもんは、ページをめくった






―――――――――――――――――――――――――――――――――

『署長の日記』

4月19日

とんでもない事件が起きた。この町の郊外で、ある一家が数人のグループによって、全員惨殺された。
すぐさま、調査に入ったが手がかりの一つもつかめやしない。
ただひとつ分かることは、その手口から犯人がもはや『人間の感情』を持ってないことということである。





4月28日

捜査開始9日目、何も進展の無いまま、また事件が起こった。
今回は、ダルメシアン山地を観光中の客、20名が全員殺された。
手口は前回と同じ。数人グループで襲ったものと見られる。
被害者達の傷口から、一件目の事件と同一犯の可能性が高いと見られる。

まったく・・・。どこの誰かは知らないが、人を食い殺すなんて・・・・。イかれてるとしか思えない。






4月29日

遂に3回目の犯行が行われてしまった。
2回目の事件を知った、馬鹿な奴等が面白半分でダルメシアン山地に入ったところ、やられたらしい。
入るやつも入るやつだが、犯人は一体何が目的なのか、さっぱりわかりゃしない。

このおかげで、マスコミが騒ぎ始めた。最悪の状況だ・・・。
今日一日、取材攻めだった・・・。もう、つかれた。今日は寝よう。




5月7日

4回目だ・・・。しかも今度は山地ではなく、8番街で起こってしまった。
この町にも悪魔の手がのびてきたかと思うと、考えるだけでもいやになってくる。
くそ、一体何が起こっているというんだ? この町で・・・。

そういえば、事件がおこる少し前に、変な呻き声を聞いたという人がいる。
何か手がかりになるのだろうか?

絶対に捕まえてやるぞ・・・!




5月19日

「キャットハンド社」が捜査に協力してくれることになった。
だが、何かが怪しい。後日、話を聞いてみる事にしよう。





5月30日

とんでもないことを聞いちまった・・・。どうやら一連の事件の原因は、「キャットハンド社」らしい。
恐らく、このことを知った俺は間違いなく消されるだろう。
いやだ、まだ死にたくない・・・。
何か助かる方法は無いのだろうか・・・・・?





6月3日

キャットハンドのお偉いさんが、大きなトランクケースを持ってやってきた。
その中には、とんでもない数の金が入っていた。
どうやら、これは口止め料らしい。
これで、黙っといてくれということなのだろう。それと他に条件があった。

1、直ちにこの事件の捜査を中止すること

2、捜査の全権を、「キャットハンド社」に一任すること

自分の命が助かるならば、これぐらいの条件なんて簡単なものだった。
よかった。これで助かったんだ。





7月6日

事態は一変した。スタジアムから、とんでもない人数の化け物があふれ出たらしい。
一瞬にして町が地獄に変わった。スタジアムにいた、署員のほぼ全員が死亡。
残りの署員は、住民の避難誘導にあたっているが・・・。
近くの町にも応援を頼んだが、到着するのに時間がかかるようだ。
到着した頃には・・・、この町はどうなっているのだろう?




同日

なんてことだ・・・。ほぼすべての署員が死んでしまった。
おまけに、署内には、「ゾンビ」とかいう化け物がうろついていた。
ほかにも、やたらばかでかい怪物がスタジアム周辺にいるという。
そいつのせいだろう。スタジアムに向かったほかの警官隊もソイツに、殺されたらしい。
ああ、神様。助けてくだ





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「だめだ・・・。その先は、血がついてて読めないよ・・・」

ドラえもんが本を閉じた瞬間、轟音と共に、壁に穴が開き、スタジアムで遭遇した、「化け物」が姿を現した
その反動で、スネ夫が飛ばされた

「うわああぁぁっ!」

幸いその先にはソファがあり、スネ夫は壁に打ち付けられずにすんだ

「ゴアアアアアアアァァァァァァァァアアアアァァアアっ!!!!!」

この世のものとは思えない姿と叫び声に、一同は怯んだ。すぐさま静香を含む女達を退避させ、ドラえもん達は、
戦闘態勢に入った

まずはドラえもんが、サブマシンガンを連射して様子を見る
すべて命中したが、化け物はビクともしなかった

「銃が効かないのか!?」

「まだまだやっ!!」

今度は、ジャイアン・ダク・ブルタローが攻撃を仕掛けた。だがそれも殆ど通用しない

「あかん! 効かへんで、こいつ!」

「まだだ!諦めるな、ダクッ!」


奮闘している面々に最悪の状況が訪れた

             『弾 切 れ』



「くそぉっ!!、逃げるぞ!」

ジャイアンたちが逃げようとしたとき、ハチがあの怪物に攻撃を仕掛けた

「バカっ! ハチ!!」

「任せとけええぇぇえっ!!」

ハチの渾身の斬撃が怪物の左腕を斬り落とした。その隙に、スネ夫が急いでジャイアンたちの下へ駆け寄る


「うっしゃああ!」




「ガアアァアァアアァァアアアッ!」


こんな怪物でも痛覚があるのか、斬り落とされた左腕の傷口を押さえて、逃げていった


「や、やった・・・!」


その場に、安堵の空気が広がる。よほど疲れたのか、ダクが本棚に寄りかかった。

「ん? なんや、この本棚? 動くぞ・・・?」

ダクが力いっぱい本棚を押してみると、本棚が奥に引っ張られ、その先に階段があるではないか

「な、なんやーーーーーー?!!」

「どうした?って、なんだこれ!?」


一同は驚きを隠せない。ここでチーコがふと思い出した。あの警官が話していた、『凄いモノ』のことを・・・

「ねぇ、行ってみましょうよ!」

言うまでも無く、全員その気だった
ダクを先頭に、ゆっくりとその階段を下りていった









セントバーナードシティ 警察署地下 PM 5:13

階段を下りた先には、鉄造りの大きなドアが立っていた。そのドアを開けてみると、信じられない光景が広がっていた

「ここは・・・、武器庫?」

部屋の中には、とんでもない数の銃や銃弾が置かれていた

「ラッキーだな。もういい加減弾もないし、ここで補給しようぜ」

「了解ッす」





数分後・・・





「OK〜。完璧! ・・・ん?」

弾を補給し終えたのび太が、あるものを見つけた

「箱が・・・2つ? ねぇ、皆! ちょっと来て〜!」

のび太が掛けた集合に、全員が飛んでいった

「どうしたの?のび太さん?」

「いや、こんなの見つけて・・・・」

のび太は見つけた2つの箱を皆の前に差し出した

「ただの箱じゃんかよ」

「僕もそう思ったんだけどさ、見てよ、これ」


のび太が指差したところには、何かをはめ込むためなのか、穴が開いていた
それも、2つとも形がまったく違う。1つは、円形。もう1つは縦に長い長方形だった

「何の穴だ?」


しばらく考え込む一行・・・。しばらく考えても何も分からない

「なんなのかなぁ」

そう言いながら、のび太はポケットに手を入れた。すると何か手に当たる。のび太はポケットからそれを取り出した

「なんだ〜、さっき拾ったエンブレム・・って、あぁ!!」

のび太はピンときた。ドラえもんから箱を奪うと、円形の穴が開いてる方に、エンブレムを埋め込んだ
エンブレムはぴったりと穴に収まり、箱が開いた

その中には、剣の柄の部分だけが入っていたが、形が少し変わっていた

「・・・なにこれ?」

あきれたようにスネ夫が言う。そのスネ夫を押しのけ、ハチが飛びついた

「これは・・・、ちょっと貸してくれ」

ハチは箱の中に入っていたものを手に取って観察した。観察を終えるとハチが皆に説明した

「分かった。これは、オレが今使っている剣と。殆ど同じ構造だな。
 だからこのトリガーを押せば・・・」

そう言ってハチが、トリガーを押すと、あの剣と同じように剣身が飛び出した

しかし、あの剣とは、まったく雰囲気が違った
形状は、両刃剣らしい形だった。剣の部分が透けていて、向こう側が見える。透明の中に少しだけ青い色が入っている、
一風変わった剣だった

「かっこいい・・・」

のび太は思わず呟いた。それを持っているハチはとても感激していた。そのせいか、黙ったまま剣を凝視していた
ここでドラえもんが口を開く

「ねえ、もう1つの箱は?」

思い出したかのように、全員がハッとする。2つ目の箱の穴はよく分からない形。さすがにこれは無理だと思った矢先、ハチが言った

「なあ、これじゃないか?」

ハチが差し出したのは、警官からもらったあの剣だった。確かに、よく見ると穴の形に合っていそうだ
慎重に穴にはめていく・・・。すると、信じられないことにぴったりはまったのである

「カチャッ」という音と共に箱が開いた

中に入っていたのは、さっきと同じようなもの。早速ハチは手に取って、トリガーを押した

飛び出してきた剣身は。日本刀を少し太くしたような形だった。透けているのは同じだが、赤い色をしていた
恐らくこの2つが、あの警官の言っていた「凄いモノ」なのだろう


「あの人に、感謝しなくちゃな・・・」


そう呟いたとき、あの鉄のドアが吹っ飛び、再び「怪物」が一行の前に立ちふさがった

「またテメェか! しつこいんだよ!!」

ハチが斬りかかろうとしたその時、ドラえもんが声を上げた

「ハチ、待って!! あいつをよく見るんだ!」

ドラえもんの言葉で、踏みとどまったハチが見たものは信じられないものだった
先ほど斬りおとしたはずの左腕が再生していたのだ

「な、何っ!?」




混乱している『敵達』を目の前にして、心なしか、その化け物が笑っているように見えた・・・ 

 

この話は続きます。

 

戻る

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル