BATTLE DOYALE 
Dream of start of nightmare

名無しさん

 

第五話 「Real card」

「さぁ、そちらから仕掛けてくださって結構ですよ?」

 クンタック(男子3番)は挑発するような口調で、対峙している相手、ハチ(男子25番)に向かって言った。

「そうかい……。んじゃ、お言葉に甘えて――」

 言うと同時に、ハチは、クンタックに向かって駆け出した。
クンタックはそれを見て、素早く構えた。

「はあぁっ!」

 掛け声と共に、木刀を横に薙ぎ払うハチ。
その一撃を、日本刀の嶺の部分で受け止めるクンタック。
それと同時ににらみ合う両者。

「かなり速いじゃないですか……。少々驚きましたよ」

「へっ! けっこう余裕じゃねぇか!」

 一気に距離を取るハチ。それとは対照的に、その場で構えなおすクンタック。

「では、今度はこちらが……」

 そう呟くと、クンタックはハチめがけて飛び出した。

「なっ!?」

 クンタックのスピードは、ハチの予想をはるかに超えていた。
そして、一瞬にして距離をつぶすと、すぐさま斬りかかるクンタック。
刀を振ったとき、クンタックはそこで終わると思っていた。
だが、刀には何の手ごたえも無い。

「何っ!?」

 クンタックの目の前にいたはずのハチがそこにはいなかった。戸惑っていると、後ろから声がした。

「あぶねー……。アンタも速ぇじゃん」

 クンタックは驚いた。一体ハチがどうやって後ろに回ったのか。その答えは、少し考えてすぐ分かった。

「これは驚きましたね……。今まで戦ってきた人の中で私の剣を『跳んで』避けた人は初めてですよ」

「そうか? オレはよくやるけど」

 木刀を構えながら、軽く言うハチ。それを見て、クンタックは「フフフ」と笑った。

「なんだよ? オレ、そんな面白いこと言ったかぁ?」

「ええ。あんなことを「よくやる」なんて人、初めてですから」

クンタックは、笑いながら言った。それを見てハチは、少々怒ったような声で言う。

「早くやろうぜぇ。それともこれで終わりにするか?」

「いえいえ。あなたとやれば、まだまだ面白い事がありそうです」

「なんか……、バカにされてる気がする………」


 そうして、会話が終わったとき2人の足元の土が銃声と共に舞った。
2人は一斉に飛び退いた。そして同時に、銃弾の飛んで来た方向を強く睨んだ。

「誰だっ!!」

 睨んだ先にいたのは、手にコルトガバメントを持って銃口を向けているボーム(男子17番)だった。

「こんなところに2人もいるとはな……。幸運だよ」

 ボームはクンタックたちの武器が近距離専用の武器だと確認し、余裕の笑みを浮かべていた。

「あらら。これは拙い事になりましたね。どうします?」

「おいおい、オレにふるなよ」

 目の前の2人がまったく恐怖感を抱いていない事に、ボームはイラッとした。

「あ、あんた達、これが見えてないのか!?」

 ボームは銃を突き出しながら叫んだ。

「ええ。見えてますよ。さっきから」

「それなら話は早い。そこから動くなよ! 動いたら撃つぞ!」

「ああ、ちょっと失礼」

 ボームがそう言ったのにも拘らずクンタックはしゃがみこみ、足元の砂を一握りつかんだ。

「今動くなって言ったじゃん!! 何動いてんの?! あんた!」

「あ、いや、お構いなく」

「構うよ!! あんたらおかしいよ! 普通じゃないよ!」

「だったら、オレたちは普通じゃないって、思えばいいんじゃないのか?」

 ボームはもう、呆れ返ってしまった。そうして首を振って俯いた時、ボームの銃ではない銃声が響いた。
銃声が鳴った瞬間、ボームの体中から一気に血が飛び出した。
そして、ボームが倒れた後、その後ろから出木杉(男子15番)が姿を現した。その手にはウージーサブマシンガンが握られている。

「なんだ、もう2人いたのか。丁度いい。まとめて始末してあげるよ……!」

「はっ! 簡単に言ってくれるじゃねぇか! かかって来いよ!!」

 ハチが出木杉に向かって怒鳴りつける。だが、出木杉は冷静だった。

「まぁまぁ落ち着けよ。言われなくてもすぐに行ってあげるからさぁ」

 そんな2人の間に、クンタックが割って入った。

「どうやら、あなたはこのプログラムに乗っているようですね。戦いたいのは山々なのですが、あなたの武器は銃。
 ところが、私達の武器はこの通り、刀と木刀。とても、私達に分があるとは思えませんねぇ」

 クンタックは、ジェスチャーを交えながら、いかにも余裕たっぷりといった具合に話した。

「……何が言いたい………?」

「少し、時間を稼がせてもらいますよ!!」

 クンタックがそういった瞬間、出木杉の目の前が砂煙に包まれた。

「なっ!?」

 出木杉が驚いた直後、2つの走り去っていく足音が聞こえた。

「くそっ!!」

 がむしゃらにウージーを撃ち放つ出木杉。だが、その銃弾は、周りの木々に当たるだけだった。



「あの白い犬――。絶対に殺してやる……! 必ず、この手で!」

拳を握り締めてそういった後、血だらけになって息絶えているボームのデイパックの中身を移し変え、
コルトガバメントを拾いその場から立ち去った。

【残り37人】

 

第六話 「It can do nothing but do」

 グースケ(男子22番)は、島の大部分を占める森林をはずれ、岬にある灯台の中にいた。
この灯台はなぜか地図には載っていなかった。海岸線を歩いていたグースケが偶然見つけたのだ。
もちろん、その中にはグースケただ1人。

「まさか、灯台があるなんてね……。他の奴等はまだここの存在に気付いてないはず。しばらくは安全だな」

 そう呟き、ごろりと寝転がるグースケ。だが、目を閉じる事はしなかった。ここが絶対安全だとしても、万が一と言う事もある。
もし眠ってしまえば、地雷原で走り回るようなものだ。

「さて、支給されたものは何かな……っと」

 むくっと起き上がり、デイパックの中をあさるグースケ。
中に入っていたのは防弾チョッキだった。

「防弾チョッキか。役に立たない事は無いな」

 グースケは、早速それを着た。なかなか動きやすく、そして軽い。
耐久性に若干の不安を感じるが、それはどうにも試しようが無い。

「むちゃくちゃ軽いけど……。大丈夫か?」

 疑問の表情を浮かべるグースケ。だが、しばらく考えた後「ま、いっか」と言って、またごろりと横になった。

【残り37人】

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

日もだいぶ沈んできた頃、島中にアナウンスが響き渡った。

『諸君、ごきげんいかがかな? 私は最高の気分だ。
 まさか、ここまでやってくれるとは思わなかったよ。
 まぁ、帰れるのはたった1人と言われたからには、「やるしかない」とでもおもったのかな?
 すまない、話が長くなってしまったな。今から、プログラム開始から今までに、あえなく殺されてしまった人たちを読み上げる。
 
 【男子2番】ロップル
 【男子5番】満月博士
 【男子14番】サピオ・ブリーキン
 【男子17番】ボーム
 【男子21番】ティオ
 【女子2番】チャミー

 以上だ。生き残っている諸君。ぜひこうならないでくれたまえ。
 もっと『私達』を楽しませてくれ……』

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「まったく……。最低な野郎だな」

 グリオ(男子13番)は、たった今流れた放送に怒りをおぼえた。

「なぜこんな無意味な事を……? 何が目的でやっているんだ?」

 もう、太陽は水平線に沈み空は暗くなり始めていた。グリオの頭上で一番星がこの状況に不釣合いなほど、美しく輝いている。
それを見て、グリオはため息をつき、腰を下ろした。そして、ふと空を見ると星がこちらを見下ろしているように見えた。

「星がうらやましいよ……。空で輝いてるだけでいいんだからな。 なあ、俺もそっちに行きたいよ……」

 一番星を眺め、そう呟いた直後、突然首輪から、けたたましい音が鳴った。

「な、なんだ! この音は!?」

 焦ったグリオは思わず首輪を掴んだ。それと同時に音はどんどん大きくなり、なるテンポが速くなっていく。
まるで、警告しているような音だった。

「くそ! 早く止まれ!!」

 グリオがそう叫んだ瞬間、首輪が爆発した。グリオの首、いや胸から上が吹っ飛び、その轟音が島中に響く。
グリオだったものが、虚しくその場に倒れこむ。 空で輝いていた一番星は、静かにそれを上から眺めていた。

【残り36人】

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「おっと、禁止区域の座標を言うのを忘れいていたな。 おやおや、どうやら遅かったようだ。既に犠牲者が出ているな」

 真っ暗な部屋の中に、男が1人モニターを前にして座っている。男が眺めているモニターには、爆死したグリオの死体が映っていた。

「まあいい。次の放送のときにでも伝えてやるとするか……。  おい、飯島!」

 男が呼ぶと、黒いスーツを着た若い男性が歩いてきた。この男性、あの日のび太の家に訪れたあの「飯島」だった。
飯島は、男のすぐそばまで来ると、「なんでしょうか?」と訊ねた。

「あの青二才に報告しとけ。『万事順調』だとな」

 男は、モニターを見ながら言った。

「分かりました」

 飯島が振り返り、立ち去ろうとすると、男が呼び止めた。

「なんです?」

「お前が連れてきた奴の中で、かなりやる奴がいる。見ろ」

 男はそう言うと、モニターの画面を切り替えた。
映し出されたのは、なんと出木杉だった。しかも、今正にバンホー(男子8番)を撃ち殺そうとしているところだった。

「こいつは、最高だ……。頭もキレるし、殺すのに躊躇しない。こいつのデータをたっぷり取れば、あの青二才も喜ぶに違いない。
 あ、ほら、また1人殺した! クックック……!」

 モニターの向こうで、出木杉はバンホーを蜂の巣にしていた。
それを見て、飯島が悲しそうな顔をしながら呟いた。

「彼が……ですか」

「どうした、何かあるのか?」

「ええ、まあ」

「何だ? 言ってみろ」

「いえ、言うほどのものでもありません。特に問題も無いですし」

「そうか――。なら良い。行け、早く報告して来い」

「分かりました――」

 飯島は、歩き出してすぐ止まった。

「なんだ? まだ何かあるのか?」

男の問いかけに、飯島は少しどもった。

「あ、い、いえ、何でもありません……」

「……まったくおかしな奴だ」

 飯島はポケットに手を突っ込み、俯きながら歩き出した。

(なんだ――? 今、誰かに見られていた気が……)


 飯島の予感は当たっていた。実はフロアの隅っこに、ミニドラが隠れていたのだった。
最初ドラえもんたちがいたあの刑務所のような建物の中を探索しているうちに、この部屋にたどり着いてしまったのだ。

「ドラ〜?」

 ミニドラがそっと身を乗り出すと、無数の起動していないモニターと、書類のようなプリントが散乱しているデスクが見えた。
見つからないように、そっとデスクに近づくミニドラ。
ミニドラはタケコプターを使い、デスクの上に乗った。

【残り34人】

 

第七話 「Trivial life」

 「さて……、コイツで何人目だったっけ?」
出木杉(男子15番)は、バンホー(男子8番)の死体を見下ろして呟いた。
デイパックをあさり、水と食料を移し変えると、あることに気付いた。

「こいつ、武器は持ってなかったのか?」

 辺りを見回しても、武器らしいものは無い。無論、バンホーも持ってはいない。

「どういうことだ?」

 疑問を持ちながらも、出木杉はその場を後にした。

【残り35人】

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 スネ夫(男子27番)は、森林を離れ海岸沿いを歩いていた。

視界の悪い森は、危険だと判断したからである。
スネ夫はジャイアンを探していた。なぜなら、ジャイアンと一緒に、ここから脱出する事を考えていたからである。

「ジャイアン……居ないなぁ――。どこに居るんだろう? まぁ、ジャイアンのことだからしぶとく生きてるんだろうけど……」

 ぶつぶつと独り言を言いながらとぼとぼと砂浜を歩いていくスネ夫。

「はぁ………。ジャイアンどころか、人っ子一人居ないよ。 ん?」

 スネ夫は、そう遠くではない距離に、灯台があるのを見つけた。スネ夫は慌てて地図を取り出した。

「あの灯台……地図に載ってないぞ。なんでだろう………?」

 疑問と同時に恐怖が浮かんだ。だが、スネ夫はあの灯台に行かなければならない様な気がした。


「い、行ってみるか……!」

 スネ夫は辺りを見回した上で、灯台に向かって全力疾走した。
今まで生きてきた中で、1番のスピードで。

「誰にも見つかるなよ――!」

 そんな願いが通じたのか、灯台には無事たどり着いた。

「ハァ……ハァ……よ、よし、入るぞ……!」

 スネ夫は恐る恐る灯台の扉を開けた。灯台の中は静寂に包まれている。

「だ、だれかいませんかぁ?」

 それはとても弱弱しい声だった。恐怖感と走った疲れで、喉が震え、まともに声が出せなかったからだ。
その所為か、返事は無い。

「誰か……うわっ!」

 もう1度呼びかけようとしたとき、スネ夫は何かに躓き、豪快に転んだ。

 「いって〜……! な、なんだ?」

 振り返ると、そこにはグースケ(男子22番)が、呆然とした顔でスネ夫を見ていた。

「ひっ!」

 スネ夫は思わず飛び退いた。あまりに驚いた所為か、グースケを誰だか分からなくなってしまったらしい。
それを見てグースケは、ゆっくりとスネ夫のもとに近づいた。気が動転しているスネ夫を落ち着かせようとしたのだ。

「おい、落ち着け! 大丈夫だ、攻撃なんかしない!」

「うわああ、く、来るなぁああ!!」

 スネ夫は、自分のデイパックの中から支給武器であるS&W M1917を取り出し、グースケにその銃口を向けた。

「ま、待て待てっ、撃つな! 僕は何も……」

 グースケがそういった瞬間、スネ夫は、銃の引き金を引いた。

「ぐぁっ!」

 銃弾をもろに受け、グースケは1,2m後方に飛んで、仰向けに倒れた。
そしてそのまま動かなくなった。

「ひ、ひぃいいっ!」

 スネ夫は、人を撃ったショックや、恐怖感で、その場から逃げ去った。
残されたのは、仰向けに倒れ、天井を仰ぐグースケだけだった。

【残り35人】

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 クンタック(男子3番)とハチ(男子25番)は、出木杉から逃げ、集落に居た。

「もう大丈夫でしょうね。あの人、もう追ってこないでしょう」

 クンタックは窓の外から、外を見ながら言った。その後ろで、ハチは横になっていた。

 その後、しばらく沈黙が続いた。





「なぁ、アンタは何者なんだ?」

 沈黙が続いた後、ハチが口を開いた。その問いかけに、クンタックは笑いながら答えた。

「それは、どういう意味ですか?」

「いや、あんな剣術上手い奴、初めて見たからな。それに、アンタの目は、何でもお見通しって感じの目なんだよな」

「そうですか……」

「それに、あの変な奴がオレ達に銃向けてきたときだって、あんなに落ち着いてたし……」

「あの人は、撃てない目をしていました」

「え?」

「分かるんですよ。目を見ればね。そう、あなたの言葉を借りるならば『何でもお見通し』ってことです」

「どういう事だよ?」

「目というものはその者の魂が宿る所だと、私は思っています。 相手の目を見れば大体の手の内は読めます。
 それに、その人物が一体どういう人柄なのかも分かりますしね」

「ほ、本当か?」

「ええ。だから、あのときで言えば、あの人はとても真面目な人だったと思います。
 しっかりと社会のルールを守り、自分のイメージを大切にするひと。
 だから、人を殺す、なんて事は出来ないと私は思ったんです」

「だったら、そいつを撃ち殺したアイツは?」

「私達と同じくらいのあの人ですか? あの人は、とても優秀な人物です。色々な意味でですね」

「色々な意味?」

「ええ。その場面場面で、最も合理的な方法を考え、自分の安全を確立した上で、相手を確実に葬れる状況を作り上げます。
 とにかく頭のキレる人物だと思います。 簡単に言うならば、もっとも危険な人物でしょうか。
 理性と狂気が、とてつもなくいいバランスで組み合わさった人物、とでも言いますかね」
 
「へぇ〜あの一瞬で、そんな事まで……」

「あくまで想像です。と言うより、あなたも剣士の端くれならそれぐらい……」

 そこまで言いかけて、クンタックは止まった。

「お、おい。どうしたんだよ?」

「あなたの目……、とても似ています……。類は違いますが、奥底にあるその優しさは間違いない――」

「え、何? 誰にだよ? 教えてくれよ!」

「いえ、忘れてください。あなたには、きっと分かりません……」

「なんだよ! 気になるじゃんか!!」

「あんまり大声出さないでください」

 クンタックにそう言われ、ハチは「チェッ」と呟き、また横になった。

(もしかしたら、ハチも私と同じなのかもしれませんね。ねぇ、そうでしょう? のび太さん――)

 既に日は落ち、外は暗闇が支配しようとしていた。
だが、クンタックが見上げる空には、ひときわ明るい星が輝いていた。

【残り35人】

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 辺りはすっかり暗くなり、夜が訪れた。
闇が支配する森林を、慎重に歩いていたのはドラえもん(男子1番)だった。

「すっかり暗くなったなぁ。動き回るのは危険かな? ……ん?」

 ドラえもんは、人影を見つけた。赤外線アイが壊れていなければ先手を打てたのだが、ドラえもんはとっさに草むらに身を隠した。
近づいてくるにつれて、だんだんと人影の正体が分かってきた。
人影の正体はパルパル(女子8番)だった。

(あっ! パルパルだ! 彼女なら安心かもしれない……)

 そう思って、パルパルに声をかけようとしたとき、その近くの草むらから何者かが飛び出し、パルパルに棒のような物で殴りかかった。

「うっ!!」

 後頭部に、強烈な一撃を受けたパルパルは、その場に崩れ落ち、動かなくなった。
殴りかかった者は、止めを刺すかのように、手にしている武器をパルパルめがけ力いっぱい振り下ろした。

「っ!」

 周囲に、何かがへし折れたような鈍い音が響く。その一撃により、パルパルは完全に息絶えた。

(だ、誰なんだ!?)

 ドラえもんは慎重に、慎重に草むらから、顔を出しパルパルを殴り殺した者の正体を見ようとした。

(あ、あれは! リ、リルル!)

 パルパルを殺したのは、リルル(女子5番)だった。
リルルは、デイパックの中身を移し変えた後、去り際にこう言った。

「こんなので、終わってしまうのね……。人の命って物は。なんだか、つまらないわね」

 リルルは、悪魔のような冷たい表情でその場から立ち去った。
リルルが、完全に見えなくなった後、ドラえもんは、逃げるようにそこから離れ、暗闇の中へ消えていった。

【残り34人】

 

第八話 「Bonds far connected」

 「うっく……。ああ、チクショぉ――」
 先ほど、錯乱したスネ夫(男子27番)に銃で撃たれたグースケ(男子22番)は、意識を取り戻した。
彼は撃たれる直前に着用していた防弾チョッキで一命を取り留めていたのだった。

「あいつ〜、何もしないって言ったのに撃ってきやがって……。状況が状況だから仕方ないとは思うけど、話ぐらいは聞けっての!」

 独り言を言いながら、撃たれた左胸の辺りから自らに撃ち込まれた銃弾を取り出した。
弾は先端の方が潰れて、原形をとどめていなかった。

「まぁ、この防弾チョッキの性能が分かったから、よしとするか。 気絶しちゃったのは、撃たれ所が悪かった所為だと思うし……。」

 そう言って、右手に持っている銃弾を投げ捨てた。
そして、何か思いついたのか、グースケは立ち上がった。

「そうだ! もしかしたら、この灯台になんか無いかな……。
 この冊子には『この島にある物は何でも使ってよしとする』って書いてあるしな」

 まずは近くにある、こじんまりとした引き出しに手を掛けた。
中には、1枚の紙が入ってるだけ。
 一応手にとって読んでは見るものの、特に大した事が書かれているわけでもなく、グースケはその紙を引き出しに戻した。
次の引き出しにも、そのまた次の引き出しにも、役に立ちそうなものは入っていなかった。

「はあ〜……。やっぱり何も無いかぁ――」

 グースケは、肩を落とし、また横になった。

【残り34人】

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 ビタノ(男子16番)は、森の中を当ても無くさまよっていた。一体どれくらい歩いただろうか。辺りはもう闇に包まれていた。

「そろそろ疲れたな……。休みたいけど、こんな状況じゃな――。
 とにかく、安心して休める場所を探さなければ……」

 疲労困憊の体にむちを打ち、ひたすら歩くビタノ。
その内、なぜか鉄くさい臭いが、ビタノの鼻を刺した。

「っ!? なんだ? この臭いは……?」

 その臭いのする方向に進むと、そこには頭が割られ、血だらけになり、息絶えているパルパル(女子8番)が横たわっていた。

「うっ……、これは……ひどいな――」

 口に手を当て、吐き気をこらえるビタノ。

その時、彼の背中に激痛が走った。鋭い何かが、ビタノの背中に突き刺さっていた。

「が……ア………」

 彼に突き立てられたのは、刃渡り30cmはある出刃包丁だった。
その包丁は、確実にビタノの心臓を捉えていた。
 包丁が抜き取られるのと同時に、ビタノの体が、まるで支えが無くなったように、その場に崩れ落ちた。

「恨まないでね……。無用心だった、貴方が悪いんだから」

 彼を葬ったのは、美夜子(女子4番)だった。
血塗られた包丁を片手に、彼女は、夜の闇に消えていった。

【残り33人】

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 東の空が明るみ始める。惨劇の舞台となっている島の夜が、明けようとしていた。
普段であれば、雄鶏が誇らしげに朝を知らせるはずなのだが、その代わりに響くのは、今までに死亡した者を告げる、
無慈悲のアナウンスだった。

『おはよう、諸君。2日目の朝だ。残念な事にこの1晩で死んでしまった人たちを紹介しよう。

【男子8番】バンホー
【男子13番】グリオ
【男子16番】ビタノ
【女子8番】パルパル

 諸君、順調なようだな。この調子で今後も頼むぞ。ああ、それと禁止区域を言うのを忘れていたな。
 今回の禁止区域はA−5だ。ちょうど、北の森林と、浜辺の境目辺りだな。では、これで以上だ』

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「はぁ……、長い夜でしたね。さて、早く脱出する方法を考えなくては……」

 木陰に隠れ、無事に夜を越したピーブ(男子18番)は、脱出を考えていた。
だが、昨夜、一晩中考えても、何も浮かばなかった。
とにかく情報が少なすぎる。そう思ったビープは、危険を承知で島の探索をする事にした。

「少々危険ですが、これしかありません。絶対に脱出しますからね……!」

 決意を硬くし、歩き出したピーブ。しかし、彼は気付かなかった。ピーブの後方、10m程の所に、リアン(男子20番)が居たのを。
リアンは、直前のピーブの独り言を聞いていた。そう、もしピーブが脱出法を見つけたとき、一緒に脱出しようと考えていたのだ。
 共に行動しないのは、1人の方が動きやすいと思ったからだった。
 第一、こんなプログラム続けていても無意味だと、リアンは思っていた。

「さて、あの豚君が脱出方法を見つけるまで、ちょいと手助けでもしてやりますか」

 小さく呟き、ピーブを見失わないように、後ろをつけるリアンだった。

【残り33人】

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 チッポ(男子11番)は、集落にある、1軒の家で夜を過ごしていた。
ちなみに、彼はクンタック(男子3番)とハチ(男子25番)が同じエリアに居るのを知らない。逆もまた然りである。

 「誰にも見つかってないよな……? 見つかってたら、ヤバイんだけどね……」

 そういいながら、右の脇腹をさするチッポ。彼は、ロップル達と交戦した際、脇腹を痛めてしまっていたのだった。
 だが、痛みはそれほど強くも無く、十分に動ける。
立ち上がって、民家を後にしようとしたとき、2階から物音が聞こえた。

「なんだ?」

 デイパックから、ベレッタM92を取り出し、慎重に階段を上がるチッポ。
その時、チッポには自分の目の前にある階段が途轍も長く思えた。

 「誰か居るのか……!?」

 階段を上がりきるのと同時に、チッポは銃を構える。だが、そこには誰もいない。
不思議に思ったチッポが、1歩前に踏み出したとき、彼の背中に、冷たく、固いものが押し付けられた。

「っ!?」

 チッポが「やられた!」と思ったとき、聞き覚えのある声がした。

「き、君はっ!」

 振り向くと、その声の主はなんとドラえもん(男子1番)だった。
チッポは、一瞬何が起こったのかわからなかったが、ドラえもんの笑顔を見て、安心したかのようにその場に座り込んだ。

「な、なんだ……。ドラえもんさんだったのかぁ」

「こっちも、君だと分かったとき、ホッとしたよ〜。
 それより、何でチッポ君はこんな所に居るんだい?」

 ドラえもんの問いかけに、チッポは少しどもった。

「……なに? どう……したの?」

 少し経ってから、チッポは答えた。

「それが――よく、分からないんだ……」

 

第九話 「Failure」

「分からないって、どういう事?」

 ドラえもんが、チッポに詰め寄る。
チッポは困惑しながらも、話した。

「いつもの様に、ベッドに入って寝ようとした時、家のベルが鳴ったんだ。
 1階に下りて、玄関を開けたら、黒いスーツを着た男の人が立ってて……」

 チッポがそこまで言ったとき、ドラえもんは思わず声を上げた

「く、黒いスーツの男だって!? そ、その人の名前は?」

 ドラえもんは血相を変えて、チッポに聞いた。そのあまりの表情に、チッポは少し怯えながらも、答えた。

「い、いや、その、名前は……聞いてないんだ。その人、なんだか道に迷ってたみたいで……。
 母さんが道を教えたら、すぐ行っちゃったんだ。去り際に、僕の頭を撫でてね……。
 それで、部屋に戻ってすぐに寝たら、いつの間にか、あの牢屋の中に居たんだ」

 チッポの話を聞いて、ドラえもんは、確信した。
誰かが、自分達を利用して何かをしようとしていることを。
ただ単に殺し合いが見たいなら、わざわざこんな手の込んだ事はしないはずだ。

刑務所の中に入っている死刑囚に武器を渡して、「生き残ったら釈放」とでも言えば、今の状況よりももっと悲惨なものになるであろう。
 大体こういうことをやる人間は、他人がもがき苦しんでいる姿を見て、快楽を憶えるような人格の持ち主だ。
それを、わざわざ、宇宙を越えてまで役者を揃えている。

「コレは絶対に何かあるぞ……。それも、あの名簿に載っていたのは、今まで僕たちが出会ってきた人達……」

 ドラえもんの独り言が聞こえたのか、今度はチッポがドラえもんに問いかけた。

「名簿? 何……それ……?」

「見てみるかい?」

 そう言ってドラえもんは、四次元ポケットからミニドラから送られてきた名簿のコピーを、チッポに手渡した。

「なんで、ドラえもんがこんなものを?」

「送ってもらったんだ。あの建物の中に、仲間がいてね」

「そうなんだ……。っ!」

 チッポの表情がいきなり変わった。その理由は、名簿の中にロミの名前があったからだった。

「どうして、ロミちゃんまで……? クソっ!」

 名簿を手放し、走り出すチッポ。ドラえもんは、何がなんだか分からなかった。
後を追おうと、急いで階段を下りて、外に出ても、そこにはもうチッポの姿は無かった。

「チッポ君……」

【残り33人】

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 ジャック(男子19番)は、南部にある、神社に居た。
石段に腰掛け、ボーッとしていた。

 腹も空き、デイパックの中から、食料を取り出そうとしたとき、草むらの向こうから音がした。

「なんだろう?」

 立ち上がり、石段を降りるジャック。すると、また音がした。
辺りを見回しても、生き物がいる気配は無い。
 それでも慎重に音のした方向に向かうジャック。

 草むらの中を覗き込んでも、そこには、自分の拳よりも、ひとまわりほど小さい石が2つほど落ちているだけだった。

「なんだ、石か……」

 ジャックが戻ろうとしたとき、頭部に強い衝撃が掛かった。ジャックは頭から大量の血を出しながら、地面に倒れた。

「な……が……」

 這いずるジャックに止めを刺すかのように、もう1度強い衝撃が、ジャックを襲った。
その一撃で、ジャックは息絶えた。

「悪く思わないでね。私はルールに則ってやってるんだから」

 血だらけのジャックを見下ろしているのは、リルル(女子5番)だった。
彼女の手には、所々赤く染まった鉄パイプが握られていた。

 リルルは落ち着いた様子で、ジャックのデイパックの中身を自分のデイパックに移し変えた。

「あら、いい物持ってたのね。でも、使わなければ、ただのガラクタだわ。
 私がありがたく頂戴するわね」

 そう言って、ジャックの支給武器であった、M4カービン短機関銃を手に森の中へ消えていった。

【残り32人】

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 スネ夫(男子27番)は、森の中にあった1軒の小屋の中で、震えていた。(満月博士達が殺された小屋とは別)
彼は、グースケを殺してしまったものと思い込んでいた。
人を撃ってしまったショックから、スネ夫は抜け出せなくなってしまっていた。

「も、もうイヤだ……。こんなところもう居たくない――」

 スネ夫の精神は破綻寸前だった。
喩えるならば、空気がパンパンに詰まった、今にも割れそうな風船といったところか。

「撃ちたくない……死にたくない……あぁああぁ…………」

 呟きながら、スネ夫は自らの支給武器であるS&W1917を握り締めた。

【残り32人】

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「助けも来ないし、武器も役に立たない……。どうすればいいんだ?」

 切り株に腰掛け、愚痴をこぼしているのは、ミクジン(男子12番)だった。
 彼の愚痴通り、支給されている武器は何の変哲も無いフォーク。とてもじゃないが、使えるとは思わない。

 ミクジンは、大きくため息をついた。そして、上を見上げたら、青く、透き通った空が遠く広がっていた。

「あの空まで飛べたらなぁ。ここから脱出できるんだけど……って、あぁ!!」

 ミクジンは思い出したかのように呟いた。

「そうだよ! 飛んでいけばいいんだ!」

 小さくガッツポーズをするミクジン。
思い立ったら即実行。ミクジンは勢いよく、上に飛び出した。

 さっきまで自分が腰掛けていた切り株が、さっきまで自分が絶望していた島が、どんどん小さくなっていった。

「ラッキー! これで、助かったぞー!!」

 ミクジンがそう叫んだ瞬間、彼の後ろから爆音が響いた。
それに驚き、振り向くと、F−15戦闘機が、真っ直ぐこちらに向かってくるではないか。
ミクジンは慌てふためき、全速力で引き離そうとしても、ジェットエンジンを搭載した戦闘機に勝てるわけが無い。
 その内、F−15から放たれたミサイルが、ミクジンを空の藻屑に変えた。

【残り31人】

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「フッ、馬鹿め。空にも見張りはいるのだよ」

 モニター越しに、ミクジンの最期を見た男が、笑みを浮かべて言う。
男が、モニターを見ている後ろで、ミニドラがデスクを調べていた。

「ドラ〜……」

 膨大な量の書類が、デスクの上には散乱していた。ミニドラは、一体どこから調べ始めたらよいのか分からなかった。
幸いにも、男はまだミニドラの存在に気付いてはいない。

「ドラッ!」

 小さな声で気合をいれ、まずは足元にある資料から調べ始めるミニドラだった。

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 エル(男子4番)は、森の中をさまよいながら、脱出方法を考えていた。
彼の支給武器はボウガン。うまく使えば強力だが、エルには元々戦う気は無かった。

「なんとか、ここから脱出しないと……。人を殺さなきゃならないなんて、バカげてる――!」

 理不尽なプログラムに憤りを感じながらも、エルは歩いた。


 歩いている内に、喉が渇いたエルは一旦その場に座り込み、休憩をとる事にした。
デイパックの中から水の入った水筒を取り出し、口に当てる。
渇いた喉が、一気に潤い、体力も回復した。また歩き出そうとしたとき、草むらから「ガサッ」と音がした。
 慌てて、ボウガンを手に取るエル。

「誰だっ!」

 草むらに向かって叫ぶと、ロミ(女子7番)が、涙目になって、震えながら顔を出した。
ロミはエルの方を見ながら、弱弱しく言った。

「お願い……、撃たないで……」

 エルは、ハッとして、ボウガンを下げた。そして、ロミに優しく声をかける。

「大丈夫だ。僕はこれに参加する気は無い。安心して」

 エルの呼びかけに、ロミは恐る恐るエルの元に向かう。

「本当に? 信じて……いいのよね?」

「もちろんさ」

 震えるロミの手を優しく手に取り、エルはロミに提案した。

「ねぇ、僕は脱出を考えてるんだ。君も、一緒に行動しないか?」

「えっ?」

 ロミは一瞬驚いた。正直、まだ完全に信用はしていなかった。
このプログラムは、人を信じたら殺される。そんな考えが頭をよぎったが、ロミは小さくうなずいた。

「そうか! ありがとう! 絶対、ここから逃げ出そうね。そうだ、まだ名前を聞いてなかったね。
 僕は、エル。君の名前は?」

「……ロミ」

「ロミちゃんか。じゃあ、これからよろしく!」

「は、はい……」

 不安を抱えながら、ロミはエルと共に行動する事を決めた。

【残り31人】

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 チッポ(男子11番)は、集落を飛び出した後、森の中に入り、1軒の小屋を見つけていた。
だが、いきなり中に入るわけにも行かない。とにかく、中に誰か居るのか確かめる必要がある。
そう思ったチッポは、足元に落ちてあった石を拾い、小屋に向かって投げつけた。
 石が小屋に当たった瞬間、銃声と共に小屋に穴が開いた。

「くそっ……、マズイな――」

 チッポはしばらく悩んだ後、小屋に向かう決心を決めた。

 ゆっくりと、慎重に小屋に歩み寄るチッポ。入り口の手前まで来たとき、小屋の中から、細く、弱い声が聞こえてきた

「だ、誰っ?」

「中に、入ってもいいか?」

「だ、ダメだ! どうせ、入った時にぼくを殺すつもりなんだろう!」

「そ、そんなことはしないよ!」

「ふんっ! そんな事信じられるもんか……。とにかく、早くどっかに行ってくれ!」

「大丈夫だ! 何もしない! ただ、話を聞きたいだけなんだ!」

「だったら、そこからでも良いじゃないか! もう、邪魔だよ!!」

「じゃ、邪魔って……」

 チッポがそういった瞬間、後ろから音がした。振り向くと、出木杉(男子15番)が15mほどの所で、ウージーを構えていた。

「やべっ!」

 その直後、出木杉はウージーの引き金を引いた。チッポはとっさに横っ飛びをしてそれをかわし、出木杉めがけ銃口を向けた。
放たれた弾丸は、いずれも出木杉には当たらなかった。

「くそっ、あいつ……!」

 出木杉は、草むらから飛び出し、チッポに向かってウージーを乱射した。チッポは、素早く近くの倒木の後ろに隠れ、難を逃れた。

「しぶとい奴め!」

 出木杉が、マグチェンジをしようとしたところで、チッポが反撃に出た。
倒木に身を隠しながら、出木杉へと銃を撃つ。 出木杉は、慌てて草むらに飛び込み、それを交わした。
だが、それと同時にチッポに逃げる暇を与えてしまった。

「今だっ!」

 チッポは全力疾走でその場を離れた。

 出木杉が、態勢を整えなおした時には、チッポはもう森の中へと消えていた。

「逃がしたか……。全く、僕は犬に対する運が無いらしいな」

 自らを皮肉り、小屋に目を向ける出木杉。
小屋のドアを開けると、その隅にスネ夫(男子27番)が、震えながら小さく震えていた。

「で、出木杉! どうして、ここに?!」

「それはこっちの台詞だよ。まぁいい、そんなことより大丈夫かい?」

 出木杉の優しい表情に、言葉に、先ほどまで怯えていたスネ夫は、少し落ち着きを取り戻した。

「出木杉こそ大丈夫かい? あんなに派手にやってて……」

 心配そうに出木杉を見るスネ夫。その問いかけに、出木杉は笑顔で答えた。

「大丈夫さ。それより、僕と一緒に行動しないかい? こういう時は、1人より2人の方が良いだろ?」

 出木杉の提案に、スネ夫は目を輝かせて賛成した。
スネ夫は、この状況で見つけられた仲間に感激し、どんな事があっても出木杉と共に行動する事を決めた。

「じゃあ、行こうか。君の武器は?」

「これだよ。S&W1917」

「……いい武器だね。スネ夫君」

 スネ夫の武器を見て、出木杉は心の中でほくそえんだ。

(こりゃいいや。たっぷりと利用させてもらうよ……)

 既に出木杉の『駒』にされてしまった事を、スネ夫はまだ知らない。

【残り31人】

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 クンタック(男子3番)とハチ(男子25番)は、まだ集落に居た。彼らは、話を続けていた。

「はぁ? あんたが王子だって?」

「ええ。まぁ、今は王子ではなく『王』ですけどね」

「へぇ〜、人は見かけによらないって、ホントなんだな」

「……どう意味ですか?」

 ハチの言葉に、少々不機嫌になるクンタック。軽くハチを睨みつけ、窓の外を見た。

「怒んなって〜。オレと同じくらいなのに凄いなぁって意味だよ」

「うそ臭いですね……。でも、私だってなりたくてなったわけじゃないんですよ」

「……え?」

 一気に真剣ムードになる両者。窓の外を見ながら、クンタックは続けた。

「私の父……つまり、前の王は、家臣に暗殺されてしまったんです。その後、色々な事があって、私は名実共に王になりました……」

「なんだよ……、色々な事って――」

 ハチは起き上がって、クンタックの元へ歩み寄り、隣に座った。

「私が即位して数ヵ月後に、戦争が起こりました。
 私達と、私の父を暗殺した家臣との戦争です。その家臣は、1度懲らしめたんですがね、『10人の外国人』と共に……」

「『10人の外国人』……?」

「あなたも知ってるはずですよ。おそらく、あなたもその方々と共に戦ったことがあるはず」

「オレと、一緒に戦ったことがある……って、まさか!」

 ハチは、思い出した。そして驚いた。
なぜ初対面であるクンタックが知っているのか。不気味に思えて仕方なかった。
 クンタックの勘違いとも思えない。

「おい……、何でだよ………。なんで、アンタが――知ってるんだ?」

「どうやら、思い出したようですね。聞き覚えがあるでしょう?」

 クンタックは、一呼吸おいてある名前を言った。


「『野比のび太』の名前に……」

 ハチは顔を手で被い、俯いた。

「ああ……、あるさ、あるに決まってる……!
 てことは、アンタも――」

「そうです。私も、あの人……いや、あの人達に救われました。もし、あの方々がいなければ、今の私は存在していないでしょうね」

「そうか……。わかったよ。通りでアンタの目はあいつに似てるわけだ……」

 ハチは俯きながら、半笑いで言った。それを聞いて、クンタックは少し表情を曇らせた。

「それは、買い被りし過ぎですよ……。私は、あの方のようには生きれない。
 私は、既に穢れてしまっているんです……」

「え……?」

「寧ろ、あなたの方がまだ近い。あなたは、まだきれいなままだ……」

「…………」

 クンタックの言葉を最後に、2人はすっかり黙ってしまった。

 しばらくして、クンタックは徐に立ち上がった。

「さて、そろそろ行きましょうか」

「行くって、どこへ?」

「ここでじっとしていても、何も始まらないでしょう?」

 そう言って、クンタックは振り返った。

「お、おい、待てよっ!」

 ハチも慌ててクンタックの後に続いた。

 彼らの『夢』は、まだ終わらない―――。

【残り31人】

 

この話は続きます。

 

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