ドラえもん危機
ミサイル研究所さん
第十六話
大きな怪鳥が群を成して空を駆け抜けてゆく。
白い雲を吐き出しながら目的地へ向かって。
打ち倒すべき目標へ向かって駆けてゆく。
彼らは青森という巣から練馬という狩場へと向かう。
障害を、脅威を取り除くため駆けてゆく。
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「以上が東京要塞からの指令である。
この作戦は我等の初陣ともなるために隊員諸君の健闘を期待する」
ここは青森にある新設されたばかりとも言ってよい航空自衛隊の大型爆撃機用の飛行場。
ここに大型爆撃機のほとんどが集約され、任地へ向かうこととなっている。
「了解しました」
隊員たちは皆表情を変えずに命令を受託していた。
その目に闘志を抱きつつ。
「作戦開始時刻は一二〇〇時である。
使用爆弾の確認、機体の最終検査を速やかに済ませ出撃に備えよ。
以上解散」
指揮官もまた表情一つ変えずに命令を下してゆく。
この場にはまるで感情が無いかのような錯覚に捉われてもおかしくないかのように。
ただ、時と命令が響いてゆく。
隊員たちは急ぎ足で自分たちが乗る機体が納まっている格納庫へと向かってゆく。
敵を殲滅するため、任務を遂行するため、ただ、ただ向かって行く。
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命令が下されて数分しか経っていないが、すでに格納庫は喧騒に包まれていた。
といってもすでに爆装の確認も積み込みも済み、
メンテナンスクルーたちが機体の点検で右往左往している状態である。
もはや出撃が秒読みのように見える。
「しかし、新型をいきなり使うだなんて今までじゃとても考えられなかったことだよな」
一人の中年の隊員が同僚に投げかけるように言った。
「まあ、最新機種を思う存分使えなかった今までのほうがおかしかったんだけどな。
やっとらしいことができるようになったということじゃないのか?」
「そうだがなあ…、まだ訓練を200回しかできてないのが心残りなんだなあ…」
「確かに1000回はやらないと自信持てないよなあ」
恐ろしげな会話ではあるが、これが国防を担うものとしての本懐ではあるのだろう。
確実な勝利を得るためには。
「だが、この機はその訓練不足をも補うじゃないか。
それでも不満なのか、松永」
「ならばその力を最大限に引き出したいのが性ってもんじゃないのか」
同僚のほうは顔をしかめて答えた。
「お前のその完璧性はどうにかならないのか」
中年とは思えぬようなさわやかな顔で松永は答えた。
「これくらいが普通だろ、三好」
その時、格納庫内にブザーが響き渡った。
そして間髪入れずに放送が入る。
「作戦開始時刻近し、第十二対地航空攻撃隊は出撃準備をせよ。
繰り返す、第十二対地航空攻撃隊は出撃準備をせよ」
「どうやら本番が来たようだな」
「ああ、最高の晴れ舞台にしよう」
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そのころ練馬区のほぼ外れといえる道路上を歩いている数人の男女がいた。
ただし、監視の兵士などはいない。
代わりにそこには軍服を着た肉塊が二体転がっているだけだった。
そこから表情は読み取れない、なぜならどちらも顔が吹き飛んでいるのだから。
「味方だったと思うと少し気が引けたけど、これも幸せのためだから仕方ないわよね」
「そうだとも、僕らは平和的にこれからも存在しなければいけないんだからこれくらい…」
だが、少年のほうは明らかに顔に冷や汗を浮かべ震えていることが明らかであった。
「おいおい、そんなことじゃこれから乗り切れないんじゃないのか?」
初期に出てきたと思しき医者らしき男の声が少年をからかうかのように言う。
「でも、人を殺したのはやっぱり気持ちが悪いよ…」
「あら、最初に提案した人がよく言うわね」
「こんなにひどい光景になるなんて思ってもみなかったんだよ。
それにどうして平気なんだい?」
「俺は今まで色んな患者を診てきたんだ、今更これくらいのことじゃあね」
「私も色んな冒険をしてきたからある程度耐性はあるのよ。
コーシャクさん、あなたはあまり出てこなかったからかしら」
コーシャクと呼ばれた少年は素っ気無い返答に驚いた。
そして弱々しげに言った。
「人が死んだんだ、こうならずにはいられないよ…」
「本当に肝の弱い男じゃのう、これが戦国の世であれば首と胴が泣き別れになっていたであろうに」
突然発言をしたのはいかにも戦国大名風の男であった。
「史実で将軍を暗殺したり、果てには自爆した人が言っても説得力がありませんよ。
しかも、あなたは参謀本部の第一課課長なのになぜここにいるんですか?」
男はにやりと笑って答えた。
「確実に勝つほうに仕えたほうが身の安泰を保障できる上に、
なにより計略を生かせる立場に身を置くほうがわしの生き方にあってるでのう」
ここで女がぼそっと呟いた。
「だから後世で義理ワンだとか言われるのね…」
「そのとおりだがどうかしたかね?」
「!!」
この男は年こそすでに六十(戦国時代では結構長生き)ではあるが、
衰えはしていないかのようであった。
しかも、目が一瞬光ったかのようにも錯覚するほどでもあった。
ここでコーシャクが弱弱しい声で提案をした。
「や、やっぱり裏切るのをやめて今からでも戻りませんか?
もし政府が負けた場合には僕らは存在を消されそうだし、
それ『バン!』」
コーシャクの胸に赤い花が咲き、その花が地面に赤い水たまりを作り、
その水たまりの中にコーシャクは自ら倒れていった。
「皆様、そこに倒れている男は撃ってもよろしかったのでしょうか?
つい、反射で撃ってしまいまして…」
硝煙をあげている拳銃を持ち、あまり困ったような顔をしていないスーツを着た男がそこには立っていた。
もっとも、その後ろにはアメリカが新規採用した装甲車と自衛隊員と思しき人間の姿があるのだが。
「問題ないわ。どちらにせよぐずった時点で始末する予定だったから」
男は安心しきった表情になり、言った。
「では、改めて。
皆様方お迎えにあがりました。遅くなって申し訳ございません、
なにぶん包囲の穴を見つけるのが予想以上に困難でしたので。
そして、日本国へようこそ。我々があなた方の存在、生命を保証いたします」
「ありがとう、話がわかってくれて助かったわ」
「いえいえ、我々といたしましても可能な限り出血を抑えたいので。
とまあこれくらいにして、時間も押していますので急ぎ車のほうへ。
もうそろそろ第一次爆撃隊が出撃しますので」
「わかったわ」
少女一人と男二人はそそくさと装甲車へと向かっていく、血だまりに横たわっているコーシャクを尻目に。
「ぼ、僕も連れて行ってくれ…」
今にも消え入りそうな声でコーシャクは懇願した。
だが、スーツを着た男は近づいてきていきなり注射器をコーシャクに刺し、
見た目からして毒々しい液体を注入した。
「うあ…、か、体が熱い、あつい、かゆい。
これ、なに」
コーシャクは注入された瞬間から身悶え始めた。
男は冷静に言い放った。
「T−ウィルス、君のような死にかけをゾンビに変えるウィルスだ」
そして、装甲車のほうへと歩いてゆく。
「まって、たすけて、ぞんびになんてなりたくない…」
だが、男は少し歩を早めた様子で歩いてゆく。
顔が少しあせっているように。
(まさか、こんなにもききが早いとは。さすがは改良型)
「あついあついかゆいかゆい……」
コーシャクの皮膚が目に見えて腐ってゆき、それに伴い言葉も単語だけになってゆく。
そして男が乗り込んだころには、
「かゆい うまい かゆ うま」
と言って、警備兵だったものの遺体を喰いはじめていた。
(改良型は即効性で効果も高い、使えるな)
To Be Continued...
第十七話
この日、参謀本部は喧騒に包まれていた。
「第一課の被害報告は!」
「構成員二十名のうち十九名が大火傷を負い意識不明の重態です。
また、第一課長松永久秀殿が行方不明です。
さらに悪いことに、情報端末が焼けてしまったために今後の作戦計画をまとめたデータが吹き飛びました」
報告を受けた偉そうな男は唇を噛み締めて言葉を漏らした。
「警備のどこに不備があったのだ…」
報告していた男が顔を少し下げて言う。
「それが、進入された形跡がどこからも見つからず…考えたくも無いのですが内部のものが行ったことだと…」
偉そうな男は声を荒げて言った。
「そんなことがあるわけが無いだろうが!
使用されたと見られる爆発物はまごうことなく自衛隊に正式採用されたばかりのものなのだぞ!
どのようにして我等が手に入れれようと言うのか」
報告している男は顔を余計下げながらも続ける。
「しかし、あの中に我々の軍の者以外が入れるとは到底…。 やはり、現在行方不明の松永課長が最も怪しくなります」
偉そうな男はさらに顔を強張らせて、
「ほう、第一課長にまでなった人間がどうして自分の仕事場を部下ごと爆破する必要があるのだ?
貴様は何故そのようなことを言う?」
「あの方のここ一週間の行動が明らかにおかしいのです。
どうも第一課を空けている時間がかなり長く、その時間帯にどこに居たのかもまったく不明なのです」
偉そうな男は少し嘲笑気味で答えた。
「その程度の情報でか…。笑えんなあ。 まあ、もういい。貴様はしばらく休んだほうがよいだろう」
報告していた男は明らかにうろたえた。
「な、何故ですか?日に七時間も空けていたのですよ!」
偉そうな男は取り合わずに、
「おい、衛兵!こいつは少し疲れている、休憩室まで連れて行ってやれ」
『はっ』
衛兵(と言うか安雄とはる夫)は、報告していた男の両肩を掴み連行していった。
「何故聞いてくださらないのですか!
出木杉殿!」
男が連れて行かれた後、一人残った出木杉は、
「馬鹿馬鹿しい…。そんなことを考えるような輩をこの奇跡の天才である僕が見逃すはずが無いじゃないか。
僕に日本書紀の原本と王義之の書の写しをくれるような人間が」
そのころ、報告員を連れて行っていた安雄とはる夫は
「なあ、安雄」
「どうしたはる夫?」
「俺たち何気に初登場だよな…」
「ああ、十七回でやっとだな」
『はあ…』
二人の間の空気は非常に暗いものであった。
また、裏切り者三人は車中で
「久秀さん」
「どうしたのかね、源殿」
「もし、もしよ。政府が負けたらどうする気?」
久秀は笑いながら答えた。
「何を言うかと思えば…、勿論
首相と閣僚の首をいの一番に差し出すに決まっておろう」
三人での会話だったが、さすがに空気が凍り、
「あなた、仁義って言葉を知ってる?」
「裏切り者になった人間が言うとまったく説得力が無いのう」
静香は声を低くして、
「コーシャクのついでに片付けておけばよかったのかしら」
「わしがその前に爆破しとるよ」
と、すぐに久秀は答えた。
車の中でドンパチをやってもらったら迷惑だと考えたのか、
ブラックジャックは、
「そういえば、我々が居なくなって疑われたりしないのか?」
久秀は目をピカッと光らせて、
「ふふふ、既に手は打ってきたのでのう」
と、かなり危なく笑いながら答えた。
「どんな?」
静香は注意深く聞いた。
「賄賂じゃ」
久秀は何も悪ぶれた様子も無く答えた。
「誰に?」
今度はブラックジャックが聞く。
「狸…、ではなく『自称:奇跡の天才』じゃ」
不思議そうに静かは聞いた。
「たぶん出木杉さんのことだと思うんだけど、彼そんなに傲慢じゃなかったわよ」
「なあに、自尊心をくすぐるようなことを言った上で、偽物を本物だと言って渡したらすぐにそうなったわ」
ブラックジャックが遠い目で呟いた。
「そういえば、そんな兆候が目立っていたなあ…」
静香は頭を抑えながら言った。
「そこまでだったなんて…、どうして私は気付かなかったのかしら…」
久秀はボソッと言った。
「わしの様に非常に優秀な人間ならともかく、ただの人間には無理じゃよ、無理」
この後、静香が久秀に掴みかかろうとして、ブラックジャックにガラスに頭をぶつけられたのはまた別の話。
To Be Continued...
第十八話
「総理」
オペレーターがおもむろにあの狂った男を呼ぶ。
「何かね?吸血鬼の一匹でもついに殺せたのかね?」
全く期待をしてなさそうな声で聞き返す。
というよりもあまり面白くなさそうというべきであろうか。
「いえ、タイラントは順調に殺されておりますし、テイロス改はあの後停止したまま起動しません」
総理は少し怪訝な顔をしてオペレーターに、
「なら何なのだね。私は今彼らがどのように命乞いをして、どのように虐殺されるのかという楽しい想像をしていたというのに」
と言った。
「いや、総理がなぜ奴らがこのように死に物狂いで勝負を仕掛けてくるような法を強制的に執行したかが気になりまして」
総理大臣は若干人を馬鹿にしたかのような声で、
「おいおい、私は執行の時にきちんと言っていたではないか
『言葉の荒廃による国の空中分解を防ぐため、憲法に規定されている権利を制限することになるが、
国がこの先続いていくためであるので今一度理解と協力を』
と」
「いや、総理のことですからそのような言葉は表面的で、もっと深い意味があってこの法を制定したと思っていたもので」
オペレーターはいかにも苦笑しているかのようだ。
もっとも、それは声だけであり顔は少しにやけている。
なぜならば、あの総理大臣もまた顔を黒くゆがませているからである。
「いやぁ、君は本当にオペレーターにしておくには惜しい!是非とも私の秘書にならんかね?」
「いやいや、たまたまでございます」
「そうか。…まあ、よい。折角のことだし話しておこうか。
何せ今話しておかんと作者が次ぎ何時書けるやもわからんからなあ」
「ハハハ、総理、メタ発言は厳禁にござりますぞ、そこはせめて
『簡単にここで話して、後はこの戦いが終わった後に酒でも飲みながら話そう』
と言った方がいいでしょう」
「ハハハこやつめ、私に死亡フラグを立てよと申すか」
「いえいえ、そのようなことはござりません」
ここで総理は顔をキリッとし、さらに黒い顔になって、
「では、話すとしようか。制定の理由を。
あれは、私がまだ高校から大学に上がった頃の時分だったか。
報道はジャーナリズムを謳いながらもするべき報道を差し置きどうでもよいニュースを流し、
さらには問題とすべきことですらないことをわざわざ大問題として取り上げ、
自国の首相がどれだけ無能であろうがそれを批判することすらなしに逆に擁護さえしていた。
その首相は本来ならば対策を選挙公約に挙げるべくところを政権交代という言葉で茶を濁し、
当時のマスコミはそれをあたかも当然のことのごとく応援していた。
まだそのときは与党であった政党を散々こき下ろした上でな。
政権交代後もひどかったなあ。与党がいかに素晴らしく、疑惑などはどれほど重かろうが全く問題ないとし、
野党はまるで存在しないかのような報道をしておったねえ。
あの時、私はあの報道屋共のさも当然のことを言っているかのような態度が気に入らなくてねぇ、
あのアホ共は一度、好き勝手に報道する自由を剥奪されたらどういう顔をするのだろうなあと言うことをよく考えておった。
奴らは漫画の規制は当然のようなこととして捉えていたようだが、
それならば奴らは尚更規制されるべきであったなあ」
総理大臣の顔はまるで親の敵のことを語るかのような顔になっている。
そして、聞くオペレーターの顔はこれまでにないくらい真剣になっている。
「私はそんなことを考えつつそのまま社会人へと成っていった。
そして、あの忌まわしい出来事が起こったのだ!」
「中共が攻めてきたときに、『中国海軍のただの演習だ、迎撃した自衛隊は屑揃いだ』と報道したあの事件ですか…」
「そうだ!中共の明らかな侵略的行為だったにも関わらずにだ!
再三の撤退命令を無視し、その上ミサイルまでご丁寧にあっちは撃ってきたのだぞ。
それを打ち落とした上で迎撃し、殲滅した自衛隊を屑呼ばわりしていたのだ!
そのせいで、迎撃にあたった艦の艦長や司令が辞職に追い込まれた上で
その後もテレビや新聞の上でゴミ扱いされて、ついには自殺者まで出たのだぞ!
その時の報道は今でも覚えておるよ。
『亡くなった中国艦の乗員への謝罪や賠償も無しに、ただ苦しみから逃げただけの人でなし』
このように報道していたよ。
何がジャーナリズムか?只の中共の犬ではないか。
しかも、流したVTRと言えば中国人遺族の怒りと自称人権派の基地外のような主張…、呆れたね。
その時思ったよ、一度全てを統制し良化させなければならないとな」
オペレーターがはっとしたかのような顔をして、
「もしや、漫画の規制は…」
と言っていたところで、
「君の思っているとおりだ。漫画の表現がだめだの何だの言って自称ジャーナリストのアホ共が悦に浸って油断したその時にだ、
身動きのできなくなるような規制を叩き付けてやるのだ!
二度とアホのような報道をできなくするために。
そして、その段階で言語良化法の漫画・アニメ・ゲームに関する条項は全てあってない状態になるのだ。
その時にあの自称ジャーナリストのアホ共が悔しがる顔をして発狂するのを私は楽しみにしているのだ。
そのためには今蜂起している彼らには気の毒だが一度屈服してもらわねばならない。
そして、達成ができたらいよいよ私の悲願を実現する段階に移るのだ。
二十一世紀型の大東亜共栄圏…、アジアをまとめ、中共・朝鮮が下手に文句を言えないアジアにするのだ。
そのためには血の犠牲に今のうちに慣れておく必要がある。
たとえ自国民の血であろうと…な」
「し、しかし、欧米諸国が黙っては」
総理大臣はオペレーターに紙の束をおもむろに投げた。
オペレーターは危なしげにそれをキャッチし、目を落とした。
「NATO極東方面軍司令 ジョン・E・パットン
霜払いは我らが……。
総理、これは…」
「そういうことだ。五年の歳月を掛けた甲斐があったよ。
おかげで巨大な協力が付いた」
「私はてっきり我が国と賛同するアジア諸国のみかと思っておりました」
オペレーターも流石に少しは驚いたようである。
「いくら私でもそこまで分の悪い賭はせんよ。
蟻を相手にするときでも戦車を使うくらいの準備をせんとね」
「しかし、どのようにしてこのような取り付けを」
総理は不適に笑い、
「金だよ。中国を分割すると言ったらすぐに飛びついてきたよ。
チベットの話をしても、ウイグルの話をしても耳を傾けようとしなかった連中がね。
まあ、そこに署名してくださってる中でもチベットの話を出した途端に食いついてきたのはパットン将軍だがね。
いやぁ、彼だけはすごかったねぇ。
何せ話をした途端、『そんな漢を待っていた!!』とか言って部下の言うことも聞かずに書類にサインをしてくれたからね。
それとは対照的に他の奴らは金のことを言った途端態度が急に柔らかくなり、ホイホイサインしたがね」
総理大臣はまるで感無量のような顔をしている。
おそらく彼の頭の中には今言ったことの全てが映し出されているのだろう。
オペレーターも目が覚めたような顔をしている。
「では、今までの発言はもしや演技なのですか?」
真剣な顔をして聞いている。目はもはや輝いていると言ってもいいくらいである。
「いや、演技ではない。あれも素だ」
「っ……!」
オペレーターは驚愕の顔をしていた。あれだけ熱い話をした人間が人死にを喜ぶ人間でも喜ぶような人間だったことを。
「いや、気にすることはないよ。キャラクターたちや研究員には確かに非道いことをしたが、
タイラントシリーズの材料になったのはここ最近行方不明になった自称ジャーナリストなのだからな。
私にとっては奴らはゴミ以下の存在だからね、
命乞いの言葉や麻酔無しで脳の下垂体を切り取られるときの叫び声は雑音にしかならなかったよ。
いやあ、今思い出しても本当に笑えるよあいつら。
ん?出て行ったか…」
総理大臣が気づいたときには、オペレーターはすでにいなかった。
その時には既に彼はトイレに向かって全力で走っていた。
To Be Continued...
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