ドラえもん危機
ミサイル研究所さん
第一話
時はそう遠くない未来、2015年。
「美しい、素晴らしい国・日本を蘇らせる。」
の公約を掲げ、単独で与党となった政府が出現した。
その名を「愛国党」という。
その政府が組閣後すぐに制定した法律があった。
「言語良化法」という。
しかし、この法律は大変厳しいものであった。
日常会話から各メディアが使う言葉を全て「本当の日本語」しか認めないと言う内容であった。
まず矛先が向かったのは漫画であった。
その根拠となったのが、
「子供の発育段階におき、美しい日本語にそぐわない言葉が多く使われているため。」
という言葉であった。
だが、この法律は制定から半年という急なスピードで消滅し、
愛国党も翌年に選挙で大敗し解散した。
さて、前書きが長くて遅くなってしまったが
この物語は政府とその命をかけて戦った漫画の登場人物たちの物語である。
「ドラえも〜ん!!!??!?!?」
ダダダダッ
お馴染みの声を出し階段を勢いよく駆け上がる、
メガネをかけ時代遅れの青い短ズボンをはき黄色い服を着ている少年、
野比のび太はいつもとは違うとても驚いた様な顔で部屋に入っていった。
「ど、どうしたんだいのび太君?また、ジャイアンにサンドバックにでもされたのかい?」
まるで耳をとった青いタヌキのような体を持つロボット、
ドラえもんがいつもと同じようにのび太へ聞き返した。
「ドラえもん、確かにいつもはサンドバックにされてるけど今日は違うよ!!
先生から教えてもらったけど僕たちを始めとする漫画の登場人物が使う言葉が
明日から、尊敬語・丁寧語・謙譲語だけになっちゃうんだよおおおおおおっ!!」
「えええええええええええっ!!??」
「どうしようドラえもん?」
「あわわわわ、まさかこんな日が来るなんて…。」
ここで二人の間にしばらくの沈黙が流れる。
この沈黙を最初に破ったのは、なんとのび太であった。
「みんなでこれからどうするかを話し合おうよ。」
「みんなって、出木杉くんやジャイアンやしずかちゃんやスネ夫くんたちのことかい?」
いつにもなく真剣な顔になってのび太はドラえもんの質問に答えた。
「違うよ、他の漫画の登場人物のみんなとだよ。」
「!!!!!」
この時、ドラえもんはかなり驚いた顔になった。
のび太がこんな事を言い出すとは夢にも思っていなかったからである。
しかし、すぐに冷静にのび太へ言葉を返した。
「のび太くん、確かにそれは素晴らしい考えだと思うよ。
でもね、他の漫画の登場人物たちが簡単に集まると思うかい?」
のび太はこの言葉を聞いた後、風船が少ししぼんだ様な顔になり、言った。
「ドラえもんの道具で何とかならないの?」
ドラえもんは残念そうに答えた。
「のび太くん、確かに僕はたくさんの便利な道具を持っている。
でも、唯一持っていないのが他の漫画とかに干渉する様な道具なんだ…。」
のび太はかなり暗い顔になった。
しかし、すぐにはっとしたように顔を上げて言った。
「連絡を取れる機械ならあるんじゃないの。」
この言葉を聞いたとたん、ドラえもんの顔はかなりの驚きに包まれた。
「連絡を取るのなら干渉はしないでしょ。」
「の、のび太くん。君今日はとてもさえてるね。
そうか!連絡を取って集まってもらえばいいんだ!!」
「(今日は、って…。)」
「のび太君、じゃあ早速君はみんなを呼んできてくれ。
僕は他の漫画と連絡を取るから。」
「わかったよ。」
のび太少年は嬉々とした顔で四人(もちろん、出木杉・スネ夫・ジャイアン・しずかのことである)を呼びに行き、
ドラえもんは未来的なデザインのパソコンのような通信機を取り出し、他の漫画へと連絡を取り始めた。
しかし、これはこれから始まる戦いへの序章にしかすぎなかった。
第二話へ続く
第二話
前回の「言語良化法」の説明で不十分な点があったので補足をしておこう。
「本当の日本語」、中学生以上の人がいるのならば教科書に載っている、
いわゆる古典というやつが本当の日本語となっている。
書くときももちろん古典文法に従って行う。
しかし、本当だけではいけない。
美しくもなければならない、なのでのび太が言っていた使う言葉が
「丁寧語・謙譲語・尊敬語」
となってしまったけである。
以上を補足としよう。
「な、なんだとぅ!!??」
ゴリラの様な風格を持つ少年、ジャイアンが驚いた様な声を
いつもの空き地であげた。
「の、のび太。ほ、本気なの?」
一見すればキツツキが人間になったのではないかと目を疑う少年、
スネ夫が驚いたと言うよりはぶるぶる震える様な声でのび太少年へ聞き返した。
「もちろん本気だとも!!」
のび太は別に自分がえらいわけでもないのに威張った様な声で自慢げに答えた。
「のび太さん、今度こそ私たち死んじゃうかもしれないのよ。」
ドラえもん界一のヒロイン、しずかが心配そうな声でのび太少年をただそうとした。
しかし、ここで答えたのはのび太少年ではなかった。
「源さん、僕はのび太くんの言うことに賛成だよ。」
ドラえもん界一真面目で頭が良くルックスも良い好少年の見本の様な少年、出木杉が答えたのである。
「出木杉さん、あなたまで何を言い出すの!!」
しずかは突如激昂した声で怒りだした。
「戦いなんかやったって傷つく人が増えるだけだわ!!
それに抵抗しないんなら誰も傷つかなくて我慢をするだけで今まで通り平和な生活を送れるんでしょ?」
ここでしずかは言葉を切り、さっきまでとは違う悲しそうな優しい声で、
「だから、戦いなんて野暮なまねはよして黙って従いましょう。」
と言い切った。
「源さん、野暮なのは君の方だよ。残念だけどね。」
「私のどこが間違っているの、出木杉さん?」
今度は今にも泣き出しそうな声で出木杉に尋ねた?
これを聞いていたのび太が黙っているはずもなく、
「そうだよ出木杉!しずかちゃんの言うことがあってギャボオッ!!??」
「のび太、おとなしくしてろ。」
黙らされた。
「源さん、まず僕等の漫画の存在理由を答えてみて。」
「そ、そんなの決まっているじゃない。人を楽しませる事よ。」
「まあ、正解だね。
なら、この言語統制下に置かれたら言葉を自由に使えなくなる。
いわゆる検閲が行われるんだ。」
「それがどうかしたの?」
「それが大問題なんだよ。
言葉を統制された中で人を今までと同じように楽しませる自信があるかい?」
「その事情くらいわかってくれるでしょ…。」
「そんなのじゃ心の底から楽しんでくれないね。
残念だけどきみの理論じゃ漫画は存続するだけの物になってしまう。
そこが間違いだ。」
「じゃあ、こっちから聞くわ。何のために私たちは戦うの?」
「おや、僕の説明を聞いてもわからなかったのかい?」
「何がわかるって言うの?」
「(このアマ完璧に馬鹿だな。)漫画を楽しんでくれる人やこれから漫画を楽しもうとする人たちのため、
自分たちの存在意義を見失わないためさ。」
これで決まるはずであったが、今日のしずかはひと味違った。
「何よ!!そんなことのために何で命を投げ出す覚悟が必要なの?
絶対に私は参加しないから!!!」
出木杉は軽く首をひねらせながら
「残念だ、じゃあ君は参加しなくて良いよ。邪魔だし。」
出木杉はいつもの彼の性格からは考えられない言葉を冷淡にしっかりと言い放った。
しずかは何も言わずに空き地から去っていった…。
「で、出木杉ぃ〜。やりすぎだと思うよ、今のは。」
スネ夫が弱々しくも出木杉に異議を申し立てた。
「骨川君、戦いの基本で言えば戦いたくない者をいくら強いからと言って戦線に出しても
士気はいっこうに上がらないし、逆に他の者の士気まで下げてしまうだろ。
じゃあ、要らないんだよね、ああいうの。」
「そ、そう。」
ジャイアンとのび太はこの状況をぽかんと見つめたままであった。
「のび太、俺たち本当に勝てるのか?」
「わかんない。」
物語はここでは最悪の方向に向かおうとしていた。
第三話
「さて、連絡をしてこんな早くにみなさんが来てくださるとは本当に驚きです。」
時系列はのび太たちが空き地で喧嘩をしていたときと同じである。
ここはのび太の部屋、ドラえもんの他にも数人の人物がいる。
「で、用と何かね?つまらん事だったらぶち殺すぞ。」
赤い、貴族が着るような服を身にまとい存在そのものが恐怖のような吸血鬼、
アーカードが特有の恐ろしい声でドラえもんに話す。
「まあ、待て。落ち着こうではないか、なあ?」
右目に小さな機械がついたメガネ(みたいな便利機械)をつけ、スーツをまとい堂々と葉巻をふかす豪傑、
衝撃のアルベルトが説得力の全くない顔で諭す。
「私に意見するとは百年早いぞ。ぶち殺すぞ人間(ヒューマン)!!」
「ほう、儂も退屈していたところだ。お手並み拝見させてもらうぞ。」
「落ち着いてください、戦う前から仲間割れをしていては話になりません。」
頭にKと書いてある帽子をかぶり、どことなくのび太に似ていそうな少年、
キテレツが仲裁する。
「大の大人がそんなことで争うなんて、馬鹿みたい。」
赤毛で髪が少し上に跳ね上がっている少女、
エスパー魔美が彼女の性格からは出ないような言葉で二人を叱る。
ただし、この動く危険物たる二人を余計に燃え上がらせたのは言うまでもない。
「女ぁ、誰に向かって口を利いているぅ。まずは貴様からだぁ!」
アルベルトがそう言いながら手に衝撃波を集めてゆく。
「止まりなさい!!」
魔美もすかさずテレキネシスを使いアルベルトを止めようとする、が
「きかんなぁ。」
全くの効果が無かった。
「ウソ…。」
このままでは空き地の惨劇よりもひどいことが起こることは白昼の明である。
だが、ドラえもんもポンコツではない。惨劇を起こさないためにとっさに道具を出した。
「平和アンテナ〜。」
そう、平和アンテナである。争いを絶対に止めるという。
「ふん、命拾いしたな。だが、今日だけだぞ。」
戦いは止まったものの抱きあったり、柔らかい声で話すことはなかった。
それどころか、
ブシュウウウウウウウウウウッ
と音を立てて平和アンテナが壊れてしまった。
「に、二十二世紀の道具が…。」
ドラえもんは当然の事ながら落ち込む。
「ドラえもんさん、こんな事じゃいつまでたっても会議が開けませんよ。」
「そう言えばそうだね。では、『言語良化法』対策会議を始めます。」
いきなり開き直ったドラえもんにより会議が始まる。
「みなさんもご存じの通り言語良化法が急に成立し、実質的な言語弾圧が今まさに始まろうとしています。
そこで我々はその対策を開くためにここに集結しました。」
一呼吸おき、
「彼等は何の譲歩もいたしません、逆らう者は弾圧し、従う者だけを残すという考え方で動いています。
分の悪いことに愛国党が密かに育てていた武装私兵集団が弾圧を行う任につく模様です。
ならば我々はどのように対抗するのか?
それを話し合おうと言うだけです。」
「簡単ではないか、我々BF団が手を貸せばすぐに終わるであろう。」
「それは無理です。」
「何ぃ!!どういう事だ説明しろッ!!!」
「やっかいなことに敵の軍師には夢の破壊者・林田理科雄がつくのです。」
「奴がか…。だが、それが何になる?」
「奴は我々の反乱を予想したのか唯一の能力、非科学潰しで抵抗の力をそぐつもりのようです。」
「ぬう。」
ここで今まで暗い顔だったドラえもんの顔が急に明るくなる。
「しかし、奴が欠陥まみれだっただけにその能力もまた欠陥だらけです。」
「ほう。」
「奴は巨大ロボを無効化する以外は他の非科学を無効化する力を一切持たないのです。」
「ただのクズではないか。」
「そうなりますね。」
だが、ここでアルベルトの顔が疑問を持った顔に変わった。
「巨大ロボを使わないでいいのならば、他の方法でも十分その愛国党を叩き潰せるではないか。」
「そこが問題です。愛国党は政権を握る数年前から既に行動を開始していました。
各界の重鎮へのゴネ、秘密武器研究機関及び生産施設の建造、東京二十三区の要塞化、
自衛隊への大型正規空母の配備、九十式戦車の月十台生産計画、F−22の大量導入、
そして世界最高峰の企業・アンブレラ社の運営とただの政党からは考えられないほどのことを。」
「ぐむう。」
「なんていうこと…。」
「恐ろしいことだ。」
アルベルト・キテレツ・魔美の反応はまあ至ってふつうだった。
アルベルトは少し笑っていたが…。
が、アーカードだけは違った。
「ハーッハッハッハ、傑作だ。愉快だ。面白そうではないか。
倒しがいのある連中だ。ハーッハッハッハァ!!」
かなり楽しそうに笑っている。当たり前と言えば当たり前だが…。
「とにかく、事態はひっ迫しています。このままでは我々を始めとする漫画や
アニメなどは狩られてゆき、子供に夢を与えるという我々の仕事は果たせなくなってしまいます。
しかし、皆様が共に決起していただくと言ってくださればその義務をまた果たすことが出来るようになるのです。」
ドラえもんが今までにない真剣な顔で話している。
「あなた方も気持ちは同じでしょう。」
『当たり前だろう(でしょう)』
「みなさん…。」
ドラえもんが涙目になる。
「ドラえもんさん、まだ泣くのは早いですよ。泣くのは彼等を倒してからでしょう。」
「キテレツ君…。」
「F先生にはなむけ出来ないものね。」
「魔美さん。」
「無くなってしまえば我らの野望も潰えてしまうしな。協力してやろう。」
「アルベルトさん。」
「人間はまだ不思議で満ちている。それが全てわかるのもまた楽しみ。協力しよう。」
「アーカードさん。」
ドラえもんはうれしさの表情になり、
「他の方々もこの一週間で集まる予定です。そのときに全てが始まります。
漫画のために、全力を尽くしましょう!!」
全員ここで一呼吸をおき、右手をナチスの挙手敬礼の様に挙げてこの連合軍の合い言葉となる言葉を言った。
『我ら漫画の未来のために』
だが、愛国党も手をこまねいているわけではない。
「ククク、これでこの日本は我らのもの。」
「総理、我らアンブレラ社も全力を尽くしたかいがありました。」
「後は君ら自慢の強化人間とやらの出番だな。」
「左様で。」
強化人間とは何なのか?アンブレラ社の正体とは?
そして漫画の未来はどうなってしまうのか?
第四話
ここは東京都アンブレラ社本社ビル地下二百メートル。(本社ビルの場所は新埋め立て地)
そして、そこから唯一見ることが出来る扉がある。
その上には、
『アンブレラ社兵器開発課特殊生物兵器研究所』
と書いてある。
中ではどうやらたくさんの研究者が意見を出し合ったりしているようだ。
では、覗いてみよう。
円筒状のガラスの中に青を少し緑に近づけた様な液体が満杯に入っており、
さらにその中にいくつものチューブでつながれた怪物のようなものが入っている。
「試作型強化人間『T−α』へ新たに『Fウィルス−γ』を百グラム注入」
その前に立っている、リーダーらしき研究者がそのガラスの操作盤らしきものを捜査している
研究者に指示を飛ばした。
「了解いたしました。」
ピピピ
鮮やかな指さばきですぐに指定された作業を行った。
そして、この数瞬後中に入っている怪物が少しづつではあるが動き出した。
「おお!実験は成功だぞ!よし、仕上げに『Zウィルス−α』を注入しろ。」
「了解。」
カッ カカカッ
このウィルスを注入した後、怪物は目を覚ました。
「よし、液を全て抜け!」
「了解」
音もなくガラスの中の液体が抜けてゆく。
しかし、怪物はその恐ろしい形とは裏腹に全く暴れようともしない。
「ココハドコダ。ワタシハナニダ。」
すぐに怪物は話し出した。
すると、リーダーらしき研究者は自慢げに、
「ここは研究室だ。そして、おまえは『タイラント』だ。」
「ケンキュウシツ。タイラント…。ワタシハナニヲスレバイイ?」
今度はにこやかに、
「おまえは我々の命令通りに動き、命令通りに何もかも遂行すればいい。」
「…ソウカ。」
周りではたくさんの研究者が歓声を上げている。
「やったぞ!ついに成功だ!」
「これで我々の地位はさらに不動のものになったぞ!」
「世界は我々の思うがままだ!」
「うう、研究を今まで続けてきて良かった。」
「株がさらに上がるぞ!」
とにかく、狂喜乱舞している。
「…アイツラハ?」
「気にするな、おまえが無事に起きることが出来て嬉しいだけだ。」
「ソウカ。」
リーダーらしき研究者は声を張り上げて、
「おい、毒島(ぶすじま)!タイラントをあの部屋に連れて行ってやれ。」
すると、研究者と言うよりも軍人とヤクザを足して3をかけたような人物が答えた、
「へい!わかりやした。」
ついでに顔には大きな傷がある。
「ガラス管を開けろ。」
「了解、ガラス管全ロック解除。」
プシュウウウウウウウッ
少し気の抜けた音がして、タイラントが入っているガラス管の左の側面が開いた。
「デテイイノカ?」
「もちろんだとも。」
ガシッ ガシッ
タイラントがガラス管から出てくる。
身長はどうやら2メートルはありそうだ。
しかし、毒島も負けてはいなかった。
「よし、俺についてこい。」
「ワカッタ。」
二人は人をかき分け、ある一つの扉のところまで歩いていった。
その扉には『強化人間用武器庫兼訓練場』と書いてある。
ウィーン
毒島がカードキーをその扉の前にかざすとドアが右にスライドし、開いた。
二人が中に入ってゆく。
その中にはおおよそ人間が扱うことが難しい武器がたくさん置いてあった。
いやにでかいガトリングガンとか、巨大なライフルとか、454カスール改造銃とか、
馬鹿でかいロケットランチャーとか。
「コレハナンダ?」
「おまえ専用の武器だ。おまえのためだけのな。」
毒島が顔に似合わぬ優しい声で言う。正直、怖いだけであるのでやめてほしい。
「オレハコレデナニヲスレバイイ?」
「ここで使い方を覚えるんだ。おっと、俺の役目はこれで終わりだ。
後はそこの画面に映像が映るからその映像が言うとおりにやればいい。」
「ワカッタ。」
「じゃあな。」
そう言って、毒島は足早に去っていった。
これがドラえもんたちの驚異の一つとなるタイラントの誕生でもあった。
ところ変わり、ここはアンブレラ社本社ビル社長室。
よくある最上階の社長室というやつである。
ただし、ふつうの社長室とは違い一つの階を全て社長室として使っている。
その広大なスペースのひときわでかい窓のところに社長室にある様な机があり、
この社の社長が腰掛けていた。
髪は後ろ斜め上に集めて立て、額縁が下についているメガネをかけ、
顔はテニスの王子様で言うならば手塚、太蔵もて王サーガで言うなれば木嶋である。
て言うか木嶋。
今は机の上にある電話で誰かと話している。
「ほう、成功したか。よくやった。」
「社長、ありがとうございます。」
「で、実戦配備はいつ頃から出来る?」
「明日からでも大丈夫です!」
「わかった。ならば明日、首相と共に見に行く。」
「存じました。」
プツッ プープー
電話を置いた後、木嶋は椅子にもたれかかった。
「そういや、俺たちがこっちの世界に飛ばされてから三年だな。」
ジャンプでの連載終了後の話である。
「俺と吉本は飛ばされてすぐこの会社の幹部にされたんだっけ…。」
ここで少しの静寂を作る。
「ドラえもんと大げんかか、考えたくもないことだ。」
木嶋は真剣に悩んでいた。ドラえもんと戦うことに。
彼の悩みは尽きることはない。
その頃、ドラえもんはと言うと。
「な、なんて事だ!アンブレラは三年前に無理矢理、
『太蔵もて王サーガ』の登場人物をこっちに移動させていたなんて…。」
ドラえもんはのび太の部屋で一人悩んでいる。
先ほどのメンツはドラえもんが用意した宿泊先に行って久しい。
のび太もまだ帰ってきていない。
「奴らも本気らしい。こっちもそれ相応の覚悟で臨まなくちゃ!」
ドラえもんが決心したときであった。
ドラえもんはすぐにさっきの情報を確認していた、未来型コンピューターの画面を
未来デパートに商品を注文するときの画面に変えた。
『何カ御用デショウカ?』
機械的な声がドラえもんに話しかける。
「メカメーカー特別版、フエルミラー、ジャンボガンMkU、熱線銃]を。」
『了解イタシマシタ。発送ハ?』
「今日中に、いや今すぐ!」
『了解シマシタ。』
ブツンッ
自動で画面が黒くなる。
「これでいい。これで良いんだ。愛国党よ、覚悟!」
ドラえもんらしくないセリフだなあ。
お詫び:太蔵のキャラを出したのは、ほぼノリです。
って言うかもう時間無いのに余計登場人物を増やしてしまった…。
第五話
ここは国会議事堂、現在は閣僚により会議が行われている様である。
「総理、明日付けで自衛隊に就役することとなる我が国の戦後初の空母である、
『しなの』『たいほう』に対する韓国・中国両政府からの非難の言葉が届きました。」
この報告をしているのは、防衛大臣である。
この言葉を言うのに額に汗を浮かべ、震えた声で言っていた。
しかし、当の総理大臣は顔色一つ変えずに、
「早く読みたまえ、私は忙しいのだぞ。」
と、少し苛立った声で話していた。
「は、はい。では、読み上げます。
『我々、韓国・中国両政府は貴国の大型正規空母の配備に遺憾の意を表している。
なぜ君たちの国に空母が必要なのだね?
君ら野蛮人の考えることだ、どうせまた侵略をしようと考えているのではないのかね?
我々はこの2隻の空母が就役せずに自沈処分されることを強く望む。
もしそうしないのならば我々は貴国に対し宣戦布告をせざる得なくなる。
君らの保有する艦艇などは我々の海軍に抵抗することも出来ずにすぐに波の狭間に沈むであろう。
そして、国土は蹂躙され、永遠の貧困を続けることになるだろう。
悪いことは言わない、とっとと自沈させたまえ。
君らのためだ。』
と書かれております。」
しかし、この文を読み上げた後誰一人顔色を変えることなく、
それどころか笑みすらを浮かべている者もいた。
「奴らは今をもって自衛隊に関する法が改正されたのを知らないからそんなことが言えるのだな。」
と外務大臣。
「中途半端な艦艇や完成度の低いイージス艦如くで何が出来るのやら。」
と財務大臣。
この後も、閣僚たちによる小言や侮辱の言葉などが飛び交ったが、
それを総理大臣が止めた。
「諸君、私語は慎みたまえ。
柏原くん、中国・韓国大使館を今の時刻より閉鎖し、大使館員を全員逮捕したまえ。
それから鷲本くん、中国・韓国両政府に『貴国の要求などばかばかしくて呑めない』
とのことを伝えたまえ。」
『了解いたしました。』
警察・外務両大臣は顔に笑みを浮かべながら言葉を受け取った。
総理大臣はここで一度咳払いをし、
「諸君、以上で今日の閣議は終わりだ。良化法反対団体に気をつける様に。
飯崎くん、少し残りたまえ。以上解散!」
総理大臣の一声により、閣議は終わり
飯崎という防衛大臣と総理大臣のみが残された。
「そ、総理何の御用でしょうか?」
かなり、緊張した声で防衛大臣が聞く。
「喜ぶがいい、『T-α』が完成したとのことだ。」
総理大臣は笑みをもって、この言葉を言った。
「!!!」
この言葉に防衛大臣も驚きの表情を隠せないようだ。
「で、では計画は順調に…。」
「その通りだ。我々が漫画の軍隊などに負けるわけにはいかん。」
自信満々の表情で総理大臣が答える。
しかし、とつぜん真面目な表情に戻り、
「ところで、国産戦略爆撃機『天龍』の配備は順調に行えているかね?」
ここで防衛大臣は口の端をニッとつり上げて、
「恐ろしいほどに順調でございます。
あの爆撃機は間違いなく世界最高最強の爆撃機になることでしょう。」
総理大臣は笑顔で頷きながら、
「ならば、漫画の不届き者共が反乱を起こした際に性能テストと行こうじゃないかね。」
防衛大臣の顔が曇り、
「それでは練馬区民が巻き添えになります。」
しかし、総理大臣は笑顔を崩さずに
「練馬区民は全てあの漫画の登場人物と化した、問題はない。」
そうすると防衛大臣もほっとしたのか
「ならば大丈夫ですね。」
「ああ、我々はアジアで最高の国家に返り咲かなければならぬ。
それを円滑に進めるためには反乱なぞに手間取っていられない。」
総理大臣はかなり真面目な顔になり言った。
「しかし、奴らは夢の結晶の様な奴らです。もしものことがあれば我々は負けますぞ。」
防衛大臣がこの上なく心配そうな顔をしていった。
「だから柳田理科雄を招いたのではないか。
彼ならば必ずや奴らを無効化し、我らに勝利をもたらしてくれることであろう。」
総理大臣は自信を含む顔にしながら言った。
「了解いたしました。
それと総理、東京の要塞化および戦力の集中が完了したとの報告が入りました。」
この言葉を残し、防衛大臣は足早に去っていった。
彼には第九条の改正及び、自衛隊の規則改正の発表を行うという任務があるからだ。
そして、閣僚たちが会議をしていた部屋には総理大臣のみが残された。
そして、彼は突然笑い出した。
「ハァーッハッハッハァ、これで日本はアジアの主導国に返り咲きだ!
漫画の登場人物たちよ、我が国の礎となり時代の狭間に消え去るのだ!
君らの犠牲で日本はさらに強くなる、さらに素晴らしくなる!
そして、世界の模範国家となる!」
この演説を少なくとも聴いている者はこのときはいなかった。
そう、このときは…。
第六話
ドラえもんは日々集まってくる漫画の登場人物たちをみて安堵していた。
(みんな気持ちは同じなのか…)
だが、同時に彼等の何人かが犠牲となってしまうことを考えて憂鬱にもなっていた。
つい先日の作戦会議のときにそれの原因となることが起こったからだ。
作戦会議−
作戦会議、と言っても開かれているのはのび太たちの学校である。
しかし、外見に変化はなくとも内部は相当改造されていた。そんな、大会議室で出木杉主導で会議が開かれていた。
「今回、我々漫画連合が行う一大大侵攻作戦『バルバロッサ』についての第一回の会議をこれより開きます。」
その会議室は校舎の一階から四階までの床を全て取り壊し、その代わりに段差状の席を作ってあり、
正面にはモニターがある会議室であった。
「この作戦の最大の目的は文部省の制圧、国会議事堂の奪取、政府閣僚の殲滅です。」
会議場がざわざわとどよめきだした。
「制圧?」
「殲滅って…。」
「何と大きな作戦だ…。」
このとき出木杉の隣にいる、羽扇子を持った策士がこの場を納めた。
「お黙りなさい。ここは神聖な会議の場なのですぞ。出木杉殿が説明を続けられないでしょう。」
どよめきは収まったが、一人の男がばつが悪そうに文句を言った。
「だが、孔明、いくら何でもやりすぎなんじゃないか?」
「黙らっしゃい!!あなたはこの作戦の真意をわかっていない。恥ずかしいですぞ、ヤムチャ殿。へたれも大概にして頂きたい。」
羽扇子の策士、いや孔明はヤムチャに向かって侮蔑とも取れる言葉を吐いた。
だが、剣幕が凄かったのかヤムチャは何も言い返せずにただうつむくだけであった。
(俺のことをへたれだと?くそう、気にしているのに。くそう!!)
「では、出木杉殿、作戦の説明をお願いいたします。」
孔明がそう言うと、何も映っていなかったモニターに「作戦概要」と書かれた画面が出て来た。
「それでは『バルバロッサ』についての説明を開始いたします。
皆様は各席にある小型モニターよりご確認下さい。
今作戦は基本的には電撃戦ですぐに片をつける事を目的としていますが、
先日入った自衛隊の動きが不穏という情報より長期戦のことも頭に入れることとなりました。」
ここで会議場が少しざわめいたが、出木杉は気にせずに続けた。
「しかし、我々の準備は長期戦のことも視野に入れ進めているので特に問題はありません。
武器のことについて説明しますが、本来ならばドラえもん参謀の秘密道具をフエルミラーで
増やし使用する計画だったのですが、フエルミラーなどに制限がかかっているためその計画を取りやめ、
工場を使用しての大生産計画へと変更しました。当初の予定よりは作戦の実行自体は遅れてしまいますが、
こちらも特に問題はありません。
次に部隊分けについての説明を行います。この作戦では大きな軍では第四軍まで、
それらに属する部隊は全てで五十ほどになります。
まず大きな軍の説明をします。第一軍は帝都ごほん首都攻略軍、第二軍は西域攻略軍、第三軍は資源奪取軍、
第四軍は練馬護衛軍となります。以上となります。
次に各部隊についての説明をいたします。
第一部隊から第八部隊は混合装甲軍団、主に戦車や自走砲・歩兵などを使用する部隊となります。
第九部隊から第十三部隊までは戦略空軍部隊、戦闘攻撃機や爆撃機を使用する部隊となります。
第十四部隊から第十七部隊までは強襲飛行船部隊、大型飛行船を用いた爆撃もしくは空挺部隊を投下する部隊となります。
第十八部隊から第三十部隊までは制空部隊、迎撃戦闘機や対空ミサイル、対空砲を用いての対空戦闘を行います。
第三十一部隊から第三十五部隊は巨大自走砲部隊、口径二十八センチ以上の長距離攻撃砲を用い
先制攻撃・前線部隊の支援砲撃を行います。
第三十六部隊から第四十部隊までは総機械化装甲軍団、すべてが完全に機械化された部隊となります。
第四十一部隊から第四十五部隊は特殊攻撃軍団、何かしらの戦闘部隊を持つ作品の戦闘部隊で構成される軍団です。
第四十六部隊から第五十部隊までは補給部隊、前線部隊の補給を整える役割を持ちます。
なお、特殊攻撃師団に任命されるのは、サクラ大戦より各歌劇団、HELLSINGより
王立国境騎士団・ローマ法王庁全兵力・最後の大隊、ジャイアントロボより国際警察機構・BF団両兵力、
FF7より新羅カンパニー全兵力となっています。
以上を部隊分けについての説明といたします。
次にこの作戦の前に行われる小規模作戦『春の目覚め』についての説明を「待った!!」」
このとき出木杉の言葉をある者が遮った。
その男は顔面がつぎはぎで黒いコートを身にまとった風体をしていた。
「俺は人殺しをする様な奴らに協力をするなんてごめんだ。
だいたい何なんだこれは、俺は漫画を始めとする作品を救うと聞いてきたんだ。これじゃあ何の解決にもならないぞ!」
出木杉は怪訝そうに答えた。
「ブラックジャック先生、何の解決にもならないとはどういうことですかな?我々総司令部は日本政府との交渉が決裂したので
この作戦を立案したのです。何の犠牲もなくに成功だけを得ることが出来ると思わないで頂きたい。」
「貴様!人の命をいったいなんだと思っているんだ!」
ブラックジャックはひどく憤慨した。
だが出木杉は怪訝な表情を崩さないまま、制服を着た部下に命令した。
「ブラックジャック先生は疲れておられる、外に連れて行きなさ。」
それを聞くと、会議場の護衛当たっていた数人の警備員がブラックジャックを席から立たせ外へと連れ出していった。
「では皆様、説明を再開いたします」
………………………
この後、2時間この会議は続いた。
ここで時系列をドラえもんの思慮へと戻そう。
「僕の選択は間違っていたんだろうか…。」
ブラックジャックの言葉は彼の心に大きく突き刺さっていた様である。
「そうとも言えないんじゃないか?」
ドラえもんの後ろから急に声がかかった。
「誰?」
ドラえもんは後ろ向きその人物に問いた。
「ああ、ごめん。僕の名前はじおす、この練馬区の総合歴史資料館でもあり総合情報センターでもある
『ドラミュージアム』の総責任者さ。」
その人物は、容姿端麗、下縁フレームの洒落たメガネをかけている好青年であった。
ドラえもんは彼を見て驚いていた。
「ええっ、あ、あの『ドラミュージアム』の?十五歳で『ドラミュージアム』を日本を代表する施設にまで大きくしたあの?」
じおすは少し照れながら、
「うそを言ったって何にもならないだろ?」
とさわやかに言った。
ドラえもんはここで自分がさっき自分がこの人物が何を言われたかを思い出し、その故を聞くことを思いだした。
「じおすさん、さっき何故僕にあのようなことを?」
じおすは少し表情を固めながら答えた。
「確かにブラックジャック先生の言った言葉は正しいと思う、倫理的にはね。
でも、何もせずして結局何もかも奪われてしまって、初めて奪われたものの大切さに気づくのも
実はあの言葉を実行してからになるだろう。
ならば、君の決断はあながち間違ってはいないさ。君はこのまま言葉が狩られ、
文化が蹂躙されていくのを黙ってみていたくはなかったのだろう?」
ドラえもんはこの言葉を聞いていくごとに、たまっていた不安が少しずつ溶けていっているのを感じた。
そして、いつもの彼らしく笑顔で答えた。
「はい!」
この回答を聞くと、じおすは満足そうな顔をして一言言ってから立ち去った。
「君たちの戦い、応援しているよ」
と。
その頃、アンブレラ社社長室。
「M総理、お久しぶりです。」
Mと呼ばれた男は人好きの良さそうな顔で言葉を返した。
「おお、木嶋君君もだいぶ社長としての風格がついてきたね。」
「ありがとうございます。」
しかし、木嶋は心の中ではこの男の事を罵倒していた。
(独善にまみれ、心から黒く染まった独裁者め!)
だが、Mと言う男は心の内を見透かしたのか、
「木嶋君、感情があふれてきているよ。大変だねぇ、こんな職に就いていると。」
と不遜に笑いながら言った。
「すいません、総理。」
木嶋はあわてて謝った。
「いや、いいのだよ、別にね。」
ここでMは、さげすむ様な声にかえて、
「ただし、声には出さない様にしないと取り返しがつかなくなるかもねぇ。」
と言った。
「は、はい!」
木嶋は内心びくびくしながら答えた。
Mはそんなことはお構いなしなのかさっさと話を前に進めた。
「ところで木嶋君、新型タイラントはどうだね?」
「はっ、今までのものとは違い命令通りに従い暴走する様なことはありません。」
すると、Mはその知らせがよほど嬉しかったのか少し笑いを込めながら、
「ククク、そうか、暴走をしないのか。それならばよい。ククククク。」
と言った。
「また、戦闘能力も従来のタイラントの2.5倍の数字をたたき出しました。」
「そうかそうか、いやあ実にいい!すばらしい!」
Mは既に別の事を考えながら言葉を言っていた。
「いや、木嶋君まさに素晴らしい報告だったよ。次はタイラントが戦闘配備できる様になったら教えてくれ。
では、私は閣議があるのでこれで…。」
そう言うと、Mはそそくさと社長室から出ていった。
その後、彼がどのようなことを行ったかは誰も知らない。
To Be Continued
この話は続きます。
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