ミッション・イン・ジャパン
【2人の姫君】

アルタさん 作

 

プロローグ

「なんて・・ことだ・・」

川木一玖(かわぎいつく)
開発技師として業界では一目置かれたこの男は、
自分の開発したものが恐ろしい悪魔になる事を知った。

自宅のパソコンの前で驚愕する一玖、パソコン画面には、ある文章が映し出されていた。
『エネストーン応用、及び反逆集団への売買』

ここで言う反逆集団とはテロリストである。
そして、エネストーン、名称をエネルガイトフォーラムピラクスト石と言い。最近発見された物質であり、今だ謎多き石である。
だが、その石には不思議な力があり、特別能力の効果を打ち消す作用があった。

すなわち、超能力を消せるのだった。

しかし完全に消せるわけではない、
つまりはその石だけに力が作用しないだけである。
だが、今の時代、この石には大きな力がある。

なぜなら、今平和を守る機関は、ワールド・ピース、超能力集団だからである。

激化したテロリストに、警察どころか、WPまで無力化された日には・・・・

事実上、全面戦争へ発展する。

「止めなくてはならない」
一玖はそう呟いた。

 ちなみにこの文章は信用のおける部下からの知らせであった。
幸い、加工についての方法が書かれたフロッピーは自分が持っていた。
だが、それは自分に危険が迫っている証拠でもあった。

誰か、誰かに託さねば・・・。

WPに渡すのが最善の方法とも思ったが、一玖は知っていた。
この商売の黒幕とWPの幹部が繋がっている事を。

やはり、自分でまいた種、自分でしなければならない、だが、今の自分には無理なのは明白であった。

家族に託す。

一玖はその考えにたどり着いた。早くに亡くなってしまった妻の残した唯一の命、
一人なのが可愛そうなため養子でもう一人を預かった。いま自分にある最愛の宝物。

「・・・サクラ、ハル」

一玖はフロッピーにパスワードを入れる。それは、自分たち家族の合言葉。

「一月にはるのさくらが咲く」

それは、家族の名前を入れた合言葉。一玖は電話を掛ける、
ちょうど知り合いの刑事に頼みごとをした。

そして手紙を書く。

世界を守るため、家族のために。

 

第1話

東京都警察庁:捜査一課

「信用できるWPチーム?」
コーヒーを飲みながら同僚からの話を聞いていた士道が声を上げる。
「そうなんだよ、生活安全課の穂口さんがみんなに聞いててさぁ」
「ほ〜」

生活安全課の穂口さん、だいぶ歳はいっているが、昔はプロの刑事であった。新人刑事であった士道もその腕は知っている。
だが、士道が刑事をして一年ほどで移動された。
聞く所によれば自分から志願したそうだが、そんな感じで、特に深い縁の人でもない。

だが、信用できるWPチームならいた。

「今穂口さんは?」
「あ?え〜っと、たしか、警備部にいったな」
「そうか」
何はともあれ先輩であり昔は教育もしてくれた。そんな思いで、士道は警備部へ向かった。

警備部
丁度穂口さんが出てきたところで士道はばったり会った。
「おう、士道じゃねえか」
「どうも、穂口さん、WPチームでいいのいますよ」
士道は早速話をする、穂口も士道の人柄を知っているからか、士道の話を聞く。

「ブルーキャットって知ってます?」
「いや、聞いたことねぇな」
「でも、腕は確かですし、信頼してもいいはずですよ」
「そうか、助かったぜ、なんせみんなに聞いても全部一緒だなんて言われて困ってたんだ」
「まぁ、確かにそう変わりありませんから、なぜそんな事聞くんです?」
士道のこの質問に、穂口はすこし口を濁した。
「わり、ここじゃ話せねぇ、士道、ちょっと付き合え」
そう言って穂口は士道と外へ出た。

近くの喫茶店、アイスコーヒーを頼んでから穂口は士道に言う。
「わりいな、お前の性格は知ってるつもりだ、だから話すけどよ、できれば他の年中には話さないでいてくれ」

急に真剣な顔になった穂口を見て、士道も気持ちを変える。
「丁度、2日前だ、昔の知人から電話受けたんだよ、一応飲み仲間だから
 しょっちゅう会ってんだよ、でもよ、そいついつもの話し方変えて、俺に頼み事をしたんだよ、娘2人、預かってくれって」
「娘2人?何か急な用でも?」
「わからん、詳しい事は後で話すとか抜かしていやがったのに、居なくなりやがった」
「え?」

正直に士道は驚いた。
これはただ事ではない様子に、士道は事件のにおいを感じた。
「ただよ、その娘2人は無事俺のマンションに着いたんだがよ、その2人から、大変な事を聞いちまったんだよ」
「な、なんです?大変な事って?」
先を速く知りたい士道と違い、穂口は渋っていた。

それに気づいた士道は、生半可な事件でない事を悟る。
「穂口さん、俺なら大丈夫です、話してください」
「・・・そうだな、お前、エネストーンって知ってるか?」
「エネストーン?たしか、最近見つかった石だとか」
「あぁ、その石はよう、とんでもないもんなんだよ」
「とんでもないもの?」
「あぁ、破壊力はねえが、厄介な代物で」

そこまで言った時だった、マシンガンの銃声が響いた。
窓ガラスの飛び散る音に客の悲鳴、士道と穂口はすぐ座席の下へ潜り込んだ。
行き成りの襲撃は強盗ではない、テロリストか、士道はすぐさま犯人像を模索した。

「穂口陽介はいるか!」
男の怒鳴り声が聞こえる。士道は体に電気が流れたように驚いた。
なぜ穂口さんを?

「出てこい!早くしろ!」
士道が迷っていると、穂口は士道に言った。

「娘2人は俺のマンションじゃなく実家の横浜だ」
「え?」
「名前はさくらとはる、後はその子達から聞け」

そう言って、穂口は立ち上がった。
「穂口陽介は俺だ!」
穂口が手を上げて前に進んでいく。奥の席だったため犯人が見えなかった士道だが、体を少し乗り出して入り口を見る。

黒いマスクに軍手までして、肌の部分は一切出していなかった。そして5人の集団、体格は軍人のようにしっかりしている。
穂口は犯人の要求に素直に応じ、外へ出された、車の音がする、銃声がしなかったので穂口は殺されていない。
今一度立ち上がり周りを見渡す。

 けが人はいない、ふと士道はある事に気づく、それは銃弾の後が天井にしか付いていない事、
これは元から殺すつもりは無い証拠である。
それと、士道にはもっと大きなものが見えた。
犯人の目的が穂口であり、生きて連れて行ったという事は、敵はその子供2人に用があるということだ。

「こりゃ重要な仕事任せられちまったな」

士道はそう呟き、一先ず店員に救急車と警察を呼ぶよう指示した。

 

第2話

横浜の閑静な住宅街。穂口の妻や息子、そして子供もここにいた。
元々横浜に住んでいた穂口だったが、都庁への転勤で生活場所を東京に、今は月に一度ほどこの家に来る程度であった。

よほどいい父親であったのであろう、
穂口の拉致を伝えると、妻と高校生の息子は戸惑い、悲しんだ。ただ無事を祈る事しか出来ず、士道に質問攻めをする。
夫は無事か、父はなぜ拉致された、
士道は苦し紛れの返答しか出来ずたじたじであった。

「穂口さんの無事は今のところ大丈夫です、今は捜査に協力をお願いします」
「協力と言われましても・・・いったい」
穂口の妻は目に涙を溜めつつ言う。

「こちらに、さくらちゃんとはるちゃんはいますか?」

士道の問いかけに、妻と息子は固まる。
「あ、あの子達は関係ないのでわ」
明らかに庇う台詞、士道は何らかの事情を知っていると睨んだ。
「私は、穂口さんから頼まれて、その子達を預かりに来ました」
断固とした意思を表す士道、それを理解した妻はゆっくりと頷いた。

「さくらちゃんとはるちゃんは二階です」
「ありがとうございます、それと、最近不審人物に遭遇などは?」
「大丈夫です、恐らくここにいることはばれてはいません」
 士道は考えた。
敵の情報は少ない、ただ、あの武装集団は異様であるのは確かだ、そんじょそこらの敵ではない、また、プロでもある。
無駄に人を殺さず、仕事を入念にする。そもそもさくらとはるという子は何者か。
ふと気づいてみれば何の情報もない事に、士道はあせった。だが、冷静にならねばならない、まずは、青猫を呼ぼう。

どこかに電話を掛ける士道。
数分すれば電話は切れた。
「誰に電話を掛けたんです?」
穂口の息子が聞いてきた。
「頼りになる、WPさ」


国本部の東京から横浜までは距離が短くとも時間はかかる。士道は時間を無駄にせずさくらと春に会いに2階へ上がった。
年齢はまだ小学生だそうがしっかりした子だと穂口の妻は言う。
しかしそんな事より、士道はもっと重要な事を知りたかった。穂口の言った、エネストーンとは、この事件の全体像は?
2階に上がり左に進む、一番奥の突き当たりの部屋にいる。
一応初対面であるため、小学生といえどマナーとして、士道はドアをノックする。
それから士道はドアを開け中へ入った。

「せいっ!」

ボールが顔面にヒットした。
そして横から突き飛ばされる。あまりにも不意なため転ぶ士道。
その後すぐに幼い声が響いた。

「どうだりゅう兄ちゃん!まいったか・・・あれ?」
「さくら〜、この人りゅう兄ちゃんじゃないみたい」
りゅう兄ちゃん?
たしかここの息子の名前は竜士、なるほど。
しっかりした子、で冷静で静かな冷たいお子様だと思った士道は、見事に正反対の性格であることを知った。

「おじさんだれ?」
さくらと言われた薄い茶髪のショートカットの少女が聞く、
「あ〜、刑事だ」
「刑事!デカ!?陽おじさんの部下!?」
「ん、まぁ、そうだ」
よく喋る子だ、
とりあえず起き上がる士道に今度は上から誰かがのしかかって来た。
黒髪のポニーテールの少女、おそらくはるだ。
「刑事さん!名前は?」
「士道だ」
「しどう?・・・侍みたい!おじさんはサムライね!」
「は?」
「ニックネームだよ!」
屈託のない笑顔できゃあきゃあ笑う様子に、士道もつられて笑みがこぼれる。


士道からの連絡でスネ夫と留美は横浜へ急いだ。
 士道からの内密な頼みと言う電話と、君達を信用して任せたい仕事があると言う台詞が、なにやら大きいものを感じさせた。
都合悪くメンバーが不揃いなため急遽この2人が向かっている

「ここだね」
思ったより早く着いた、きっと急ぎのようなのだと思った二人はすぐインターホンを押す。
出てきた穂口の妻にWPカードを見せ中へ入った。

案内され2階へ上がる、そのまま先に部屋に行っててくれと言って、穂口の妻はお茶を用意しに行った。
二人はすぐその部屋にノックもせず入る。

「くらえー!」
枕が飛んでくる。そのままスネ夫の顔面へ、
「あ」
「また新しい刑事?」
さくらとはるが二人に目を向ける。

「いや、WPだよ」
士道は苦笑いをしながら言った。

 

第3話

「WP!?」
「あのWP!?」

さくらとはるが興味心身にスネ夫たちを見る。

「はじめまして」
留美が2人に声を掛ける。スネ夫も苦笑いをして自己紹介をした。

「で、士道さん、信用の置ける僕達に頼みたいって仕事はなんです?」
スネ夫が早速士道に聞く。

「あぁ、わかってる、その前に」
士道はさくらとはるを見ていう。
「陽おじさんと同じ話をしてくれるかい?」
「いいよ」
さくらは元気よく答えた。

「さくらのパパはね、エネストーンの作り方を知っているんだけどね、悪い人がね、そのエネストーンをね、
 悪い事に使おうとしたの、でもパパはね、悪い人達には渡さないために、パパフロッピー持って逃げなさいって
 さくらとはるに言ったの、パパはお仕事で後でまた会おうねって言ったの」

事の重大さを分かっていない子供だからこそ気楽に話していたが、3人にはその重大さが分かった。

「エネストーンって、力を吸い取るあの鉱物?」
留美が2人に確認する。
そして、2人は首を縦に振った。

「こりゃ、重大な問題だな」
士道は溜息をついて更に言葉を続ける、

「まず、この子達のフロッピーを守る事、そして穂口さんと」
そこまで言って士道は口を閉じた。危うく君たちのお父さんを助ける、とさくらとはるに言いそうになったからだ。

少なくとも二人はまだ父が敵に襲われたとは思っていない。

だが、もう捕まったと見ていい、しかしこの子達に無駄な心配は掛けないほうがいい、
士道はスネ夫と留美に目で合図してそう伝えた。

「じゃ、とりあえず、さくらとはるはそっちが預けてくれ」
士道はそう言って立ち上がった。
「俺はその悪い人達をとっとと捕まえに行くからよ」
「さっすがサムライ!」
「かっこいー!」
士道はさくらとはるにそう言い、後は任せたとスネ夫に言い部屋を出た。
「じゃぁ、さくらちゃんにはるちゃん、来て欲しいところがあるんだ」

スネ夫はそう言って2人を本部に連れて行く事にした。


 事前にスネ夫はドラえもんに連絡をした。
できればさくらとはるの移動は内密にしたい為、他の人には黙って欲しいと伝えるのと、今回の事件のあらましを説明した。
会社名や敵の団体名も分からないが、さくらとはるの父の名前は川木一玖、さらにエネストーン関係で会社を調べればすぐ分かる。

それまでに2人の子供とフロッピーを守るなど簡単だ。そう考えていたスネ夫、しかし、現実はそうでもなかった。

WP国本部に到着し、ブルーキャットの専用ルームへすぐ入った。

 

「骨川スネ夫、本堂留美、ただいま戻りました」
「ご苦労様」
今部屋にはドラえもんと静香だけだった。

「さぁ、さくらちゃん、はるちゃん、着いたよ」
留美が2人に声を掛ける。2人は持ち前の元気と好奇心で目が光っていた。

「こんにちは、僕は」
「たぬきー!」
「青いたぬきーー!!」
何の御構いなしのお子様に怒るわけにも行かないと思いつつ、すごい形相になりながらもたぬきじゃないと言うドラえもんに、
固まってしまった2人。

「僕はドラえもん、ちなみにネコ型ロボットだからね!」
「ドラちゃん、2人とも怖がってるわよ、落ち着いて」
静香が入ってきて自己紹介をした。

「あと、大きなお兄ちゃんと眼鏡をかけたお兄ちゃんと美人なお姉さんがいるからね」
静香の優しい話し方に2人はすぐ機嫌よくなり、静香と留美が話し相手となっておしゃべりをした。

「で、ドラえもん、何か分かった?」
スネ夫がドラえもんに聞く。
「うん、エネストーンは商品化されてないから研究施設をあらったら、
川木さんが技術顧問としてエネストーンの加工をしている所があった。名前は、『ナイトムーン』」

「なるほど、士道刑事も分かっているかな」

「多分ね、後、この子達が持っているってフロッピーは?」

「あぁ、さくらちゃんのバッグだって」
2人が話している時、誰かがドアをノックした。

「いいかね?」
男の太い声がする。
ドラえもんはすぐそれが誰か分かり、急いでドアを開けた。スネ夫たちはその男を見て慌てて気を付けをした。

なぜなら、日本WP副国本部長が立っていたからだ。

「どうも、江藤副国本部長官殿!」
ドラえもんは敬礼をして言う。同じく他の3人も敬礼をした。さくらとはるはよく分からずポカンとしている。

「まぁまぁ、そう堅くならなくていい」
江藤副国本部長はにこやかにそう言った。
そしてさくらとはるを見つける。

「おや?この子達は?」
さすがに内密にすべきだと言っていたが、日本WPのナンバー2が聞いているのだ。
黙っているわけにもいかず、ドラえもんは説明をした。
 説明が終わると、江藤は神妙な顔になり、うなずいた。

「なるほど、いや、ちょっと最近活躍する君達が子供を連れているのを見てない、少し気になっただけだったが、
なるほど、エネストーンが敵に渡っては一大事だ、君らなら守りきれるだろうが、フロッピーだけでもわしに預けんか?」

「え?」
「あ、いや、君達の働き振りと強さ、そして信頼の置けるチームなのは分かっている」
「あ、ありがとうございます」
「だが、念には念を入れてな、わしが持っていれば敵も欺けるだろう」

「わかりました、フロッピーを」
ドラえもんが指示を出す。
すぐに留美はさくらのバッグからフロッピーを取り出し、
江藤に渡した。
「では、これは私が責任を持って預かる、では」
そう言って江藤は早々と立ち去った。スネ夫は緊張を解き、息を吐いた。

「あー、びっくりした」
「わたし、こんなに近くで副国本部長見たの初めて」
口々に感想を洩らすが、さくらとはるは依然固まったままだ。ドラえもんも感慨深い顔になっている。

 

「どうしたの?」
スネ夫がドラえもんに声を掛ける。

「いやな予感がする」
ドラえもんはそう答える。
すると、さくらとはるも口を開いた。
「あのフロッピー、パパが誰にも渡すなって」

少しずつ不安が募るスネ夫達。それがすぐに現実のものとなった。

集団の足音、誰かが近づいてくる。
「え?」
スネ夫がそう思った瞬間と同時に、ドラえもんはどこでもドアを取り出しさくらとはると静香をのび太の元へ送った。

すぐまたどこでもドアをしまうと。
「動くな!!」
ドアを蹴破り完全武装の拳銃を持った特殊部隊が入ってきた。

「ブルーキャット!誘拐犯組織として逮捕する!!」

落ち着いているドラえもんと対照的に、スネ夫と留美はわけが分からなかった。

 

第4話

「3人・・・だけか?」
江藤がドラえもんたちを拘束した特殊部隊の隊長に聞いた。

「はい!突入の際、確認できたのは3名だけです!」
逃げたな、江藤は心の中でそう呟いた。だが所詮ガキ2人と一人の隊員、ドラえもんさえ拘束すれば問題ないと思っていた。

 ドラえもんの秘密道具応用と作戦はあなどれない、それは上司である江藤からすれば一目瞭然だ。
邪魔な正義の存在を抑えたと気楽になった江藤には、フロッピーの事しか頭になかった。

「ご苦労、後は指示通りだ、ブルーキャットメンバー全員拘束、そのために人員はいくら使ってもかまわん」
「わかりました」

隊長は理由も聞かず隊へ戻っていった。
「フフフ、悪いね、ドラえもん君」

ブルーキャットのこの事態はすぐ士道の耳に入った。彼がこの話を聞き、すぐに思ったのは失態である。
穂口の言っていた信頼できるWP、今その事情をしっかり飲み込めた。

敵はWP幹部と繋がっている、もしくは黒幕がWPかもしれない、
どっちにしろ、士道はブルーキャットの誘拐容疑など嘘だと分かっていた。
だが、WPの作った偽造は完璧だった。

『日本WPチーム、ブルーキャット。川木一玖、桜、春、穂口陽介の4名を誘拐したとして、

ブルーキャットリーダードラえもん 拘束以下 隊員6名も拘束とする。今回の誘拐についてはドラえもんが計画したものである。
隊員についてはドラえもんの指示に従ったとして共犯とする。

 尚、被害者の安否はドラえもんから以後事情聴取する方針である』


たった2時間前の事件から作られた報告書、早すぎると怪しむものは多いはずだ、だが、それに疑問を唱えるものはいなかった。
士道もWP国本部に駆け込みたい気持ちを抑え、まずは拘束されていないのび太達を探す事に洗練した。

 のび太の今日の仕事はある麻薬商人の尾行だった。

ターゲットのマンションが見える喫茶店に張り込んでいたのび太は、交代の刑事が来るまでのんびりしていた。
ただの刑事の空きができたから行けといわれた仕事は緊張感もなく、あと数時間もすれば終わるものだった。
頼んだメロンソーダがなくなった。

もう一つ頼もうかとした時、どこでもドアが目の前に現れた。
そして飛び出す人影、行き成りで面食らったのび太にのしかかる、それが子供だとすぐのび太は分かった。
だが何が起きたかは分からなかった。起き上がったのび太の目に入ったのは、子供2人と静香だった。

「え?・・・逮捕?」
「まぁ、恐らくね」
のび太は静香の説明にただ驚くしかなかった。
頭が真っ白になる。

子供2人とフロッピーを守って欲しいと士道刑事から聞き、その士道刑事は元上司の穂口さんから聞き、
信用できるWPと言う事で、我らがブルーキャットにこの依頼が来た。

なんでもエネストーンという物質の作り方がテロリストに流れそうになり、それを防ぐため守って欲しいが、
フロッピーは江藤副国本部長に取られ、今は子供のみがここにいる。

そして、ドラえもんとスネ夫と留美が恐らく捕まった。
一応整理した情報をのび太は頭の中で読み返した。

「つまり、僕らは今指名手配されていると思えばいいのかな?」
「そう考えたほうがいいわね」
「そして、誤解を解く」

「最も考えるべき最優先の行動は、川木一玖の救出かしら」
「あと穂口さんもね、あとジャイアンと葉月さんに知らせないと」

「そうね、じゃ、私が伝えるわ」
「え?じゃぁ、この子達は?」
「のび太さんが守ってね」

そう言って静香は微笑みながら姿を消した。

透明になってジャイアンたちに近づくのだろう。
そしてのび太はさくらとはるを見た。さすがに元気のない様子を見て困る。

一体どうすればいいのか、のび太は溜息をつきつつ、ここにいては危ないと思い喫茶店を出た。

 

第5話

先程と違う小さな喫茶店。一先ずそこに入ったのび太はさくらとはるにパフェを注文した。
喜んできたパフェを食べる。

やはり子供だ。
無邪気に楽しそうに笑っている。
なんとしても守らねばならないな、そうのび太は思った。

「お兄ちゃんのび太兄ちゃんでしょ!」
「うん、そうだよ」
「のびにい!のび兄ね!」

ニックネームというやつか、悪くない。

「ねぇ、のび兄、・・・これからどうするの?」
「そうだね、僕達はとにかく逃げる・・・かな?」

追われている身なのは自分自身、つまりこの子達は無関係だ、だからと言って安全とは言いがたい、
どこか安全な場所へ連れて行きそこに匿う。

そして後は自分で片付ける、それが良策だなと考えていたのび太の目にテレビが見えた。

丁度午後のニュース、そういえばご飯まだだったと思っていると、ある台詞が聞こえた。

「緊急指名手配です、この顔に見覚えのある方は110番通報をお願いします」
ニュースキャスターの台詞、そして、

自分の顔写真

「誘拐組織のメンバー野比のび太、源静香、宮古葉月、剛田武、以上4名が逃走中のことです。
元WPという異例の経歴ですが、非常に危険なので、見つけ次第、通報にご協力お願いします」
これは、なんと言う事だ。

のび太はただ驚愕し、固まる事しかできなかった。画面右上には全国緊急同時放送、
それは、全国のテレビに流していると言う事だった。

「のび兄?」
「どうしたの?」
さくらとはるが固まるのび太に声をかける。
そんなのび太に追い討ちのような台詞が聞こえた。

「尚、誘拐されていると思われるさくらちゃん、はるちゃんを見つけた方は、救出を優先してください。
武術家、格闘家、力のある方は特に救出をお願いします。賞金は1000万とのことです。
では、よろしくお願いします」

頭を下げたニュースキャスターのあと場面が切り替わった。

WP国本部である。もう取材陣がわんさかと集まっている。
早口に事件の概要を説明するリポーター、だが、のび太にその言葉は聞こえなかった。
「逃げるしかないな」

パフェを空にして、のび太はすぐに外へ出た。
2人の手を握って急いで移動する。
・・・でも、どこへ?
ふと気がつくと大画面のテレビが付いたビルのあるスクランブル交差点に来てしまった。

 

案の定、テレビにはのび太達の指名手配のニュースがしている。

誰かに気づかれる前に突き抜けなくては!
だが、そんな願いも空しかった。

「犯人よ!誘拐犯だわ!!」

中年の女性がのび太を指差して大声で叫んだ。

その瞬間、周りの全ての人が敵となった。

 

第6話

電気屋の前で固まる2人。葉月とジャイアンである。テレビに映った自分の顔と指名手配の文字。

「・・・おいおい、何かの冗談か?」
ジャイアンの顔が引きつる。
「そうでもないようね・・・どうする?」
葉月が溜息をつく。

「どうするもこうするも・・・のび太と静香ちゃんに会うべきだろ」

「そうね」
とりあえず電気屋を離れようとした2人、だが一人の男性の声が聞こえた。

「おい!!指名手配犯の女と男だ!!」
初老の男性、電気屋の店主である。周りに呼びかけるように叫んだお陰で周りの全員が2人を見る。

「君達!WPのくせに犯罪か!」
「信じられない!最低ね!」
「犯罪者め!子供を返せ!」

周りから罵声と批判の嵐、
「違う!俺たちはそんな事をしていない!無実だ!」

ジャイアンは声を張り上げて反論するが、テレビメディアによる認識はそうそう拭えない、

「武君、落ち着いて、今は逃げるのよ!」
悔しい思いを押さえ、2人は走って逃げる。
だが、誰かが通報したのか、目の前にパトカー数十台とWPのチームがいた。

拳銃を構える警察官と身構えるWP、WPチームは多いため知らないチームもいる、今回は知らないチームだ。

「ブルーキャット・・・」
WPチームの一人の男が口を開く。

「あんた等ほどの有名なチームが犯罪者とはな・・」
「だから!無実だっつーの!」
「うるさい!WPの威信にかけてお前らを潰す!」

喋っていた男は手に氷の刃を作り出し襲ってきた。それに続き他の隊員も動き出す。

「くそ!悪いのはお前だからな!」
殴りかかるジャイアン、
だが葉月はそれを止めた。
「だめよ!仲間なんだから攻撃しちゃ!」

葉月は力を放出してWP隊員達を地面に押し倒した。

「なにっ!・・・・ッ動けん」
「悪いけど、そのままになっててね」
警察の拳銃も力で使えなくして、2人はビルの裏を通って逃げていった。

「まだ見つからんか!」
江藤は無線機に向かって怒鳴っていた。

『す、すみません、宮古と剛田は見つけたそうですが逃げられ』
「その2人に子供はいたか!」

『いえ、いませんでした。おそらく野比か源が』
「いいか!子供を最優先にしろ!子供を早く救出しろいいな!」
『了解しました!』

そこで無線機を切る。江藤はイラつきながらコンピューターの画面を見る。

パスワードを入力してください。そう書かれた画面。江藤は子供も捕まえなかった事に後悔していた。
更に言えば、土壇場で子供を逃がしたドラえもんが恨めしかった。

子供なら知っているはずだ、川木一玖はむこうが監禁している、
聞き出せばいいがそれでは約束が違うとうるさい。怒りをあらわにした江藤に電話が鳴った。
乱雑に取り「なんだ」と声を低くしていかにも機嫌悪く言った。

『国本部長官殿が見当たりません!江藤副長官!ご存知では?』

「知らん!」
それだけ言って電話をたたきつけた。それでもまだ鳴った電話に懐から拳銃を取り出し、一発銃弾を放った。

「・・・フン」
国本部長官がどうした、もうすぐWPなんぞ役に立たないゴミとなる。

長官であろうとなんだろうと、次の新しいトップはこの俺だ!

江藤はそう思い、ニヤリと笑った。

 

第7話

無我夢中で逃げていた。人々から無実の批判を受けながらただただ走る。途中で石を投げてきた人もいた、
はるに当たりそうになったのをのび太は身を挺して守った。

運悪くこめかみに当たる、少し切れて血が出たがまたのび太達は走った。
さくらとはるはどう思っているだろう。周りの人が自分たちを見て嫌な顔をする。

攻撃すら加えてくる。のび太は一刻も早く人のいない場所へ行こうとあせった。

「あ!」

さくらが転んだ、のび太はしまったと振り返った。周りの人間がさくらを捕まえる。

もちろん助けるつもりである、だが、江藤の、WPの下へいったら何をされるか分からない。

さくらが泣きはじめた。放してと叫んでいる。だが、周りの人間は気づかない、助けたとばかり思っている、
何も知らない、ここでさくらを連れて行けば英雄だと思っているが、それは間違いだった、そんな事をすれば、

 

自分たちの首を絞める事になる。
世界が破滅するのだから。


「放せ!!」

気がついていたらのび太は銃を抜いていた。

さすがに静まる人々、

「早く放すんだ!」
のび太が怒りの表情で怒鳴った。

「犯罪者め!そんな事していいと思っているのか!!」
誰かがそう叫んでいた。それに乗っかってまた口々に怒号を浴びせる。
「何も知らない人間が知った口を利くな!」

のび太の台詞にまた人々は静まり返った。

「あなた達はテレビを鵜呑みにしている、今に後悔しますよ」

のび太はそう言ってさくらを囲む人間に銃を向けた。
「撃たれたくなければどいて下さい」

さすがにもう追ってくる者はいないようだった。もう廃業にでもなった潰れた工場街をのび太達は歩いていた。
さくらはもう泣いていなかったが、元気はなかった。

のび太は途方に暮れていた。この子達の安全な場所というのが無い様に感じたからだ。
いつまでたっても事件は解決しない、今望むのは、静香達が真犯人を捕まえる事だった。

それまで、自分が守るしかないのだとのび太は溜め息をついた。
工場街を当てもなく歩く、すると、前方に一人の男性がいた。
白髪の背の高い歳がいってそうだが若く見えるといった感じの中年男性。

ステッキをついて服装は真っ白の軽いスーツだった。

まるでのび太達を通せんぼする様に道の中央で佇むその男。のび太はその異様な空気から只者ではないと思った。

「どなたでしょうか?」
のび太が問いかける。

「さて、どなたでしょう?」
サングラスをかけた男は笑顔でそう言った。
「WPメンバーですか?」

恐る恐る聞く。

「・・・いいえ、ただのおじんですよ、真実を知る・・ね」

日はもう傾いていた。

 

第8話

その男は名前を「平木」(ひらぎ)と名乗った。

のび太は胡散臭いとは思ったが真実を知るというセリフと、攻撃をしてくる気配が無いようなので信じる事にした。
その男、平木はついて来いとだけ言ってスタスタ先へ進んだ。

ゆっくり追いかけるのび太。平木の後を歩いていると駐車場に入った。

「ワシの車だ、イタリア製の高級車でな、名前を」
「ふるーい」
「この車ダサーイ」

はるとさくらの子供の反応に本気でへこむ平木。
「なんじゃいなんじゃい、古かろうとなんだろうと、この車はワシの宝じゃ」

車に顔を擦り付けていじける平木。言葉を無くすのび太。

車の運転はもちろん平木がした。後部座席にはるとさくらを座らせのび太が助手席に座る。
車を走らせて10分ほど経った時、後部座席から寝息が聞こえてきた。

はるとさくらが寝たのだ。

「フ、よほど疲れたのだろう、無理も無いな」

「・・・平木さん、あなたは?」

「ワシがどこの誰だろうと関係ない、今はこの子供たちを守るのが先だ」
「・・・そうですね」
「のう、のび太、テロリスト集団『NWP』を知っているか?」

「『ノット・ワールド・ピース』ですか?」
「そうだ、今回の黒幕はそいつらだ」
「そして、江藤副国本部長も敵」
「うむ、だが今WPに手を出す事はできない、だから、NWPを攻撃する」

「たしかに、それが賢明ですね」
「だがそれには問題がある」

「敵の居場所が分からない、ですか?」
「いや、もう敵の居場所は突き止めた、問題は、この子達だ」

そう言いながら後ろのはるとさくらをチラリと見る平木。
「この子達を守るのが先決だ」

平木の目には揺ぎ無い正義の光が宿っていた。
「・・・悲しいものだな、関係のないはずの子どもたちがこんな目に遭うなんて、まだ外の世界を知るには、早すぎる、
それどころか巻き込まれるなんて・・・」

平木の言葉は本当に重かった。

のび太も平木とは同じ考えである。
「・・・守りましょう、絶対に」

のび太は平木に言った。
そして、平木も、のび太の目に正義の光を感じたのだった。

「今向かっているのは、わしの家じゃ、そこなら一先ず安心じゃ」
平木はそう言いながら作戦について話した。
「NWPは今、横浜に新しいビルを作りそこに潜伏している、表向きは大手の製品メーカーを装っておる」

「成る程、じゃ、早速今夜、乗り込むとするか」
「ま、それがよいな、まずは一玖と穂口の救出が先じゃ」
「わかりました」
「なに、ワシもついとるから楽に行けるわい」

「え?平木さんもくるのか?」
「当たり前じゃ!誰が一人で行かすか!」
「だったら、この二人は誰が守るんですか?」
「はっはっは、なーに、わしの家のセキュリティーは万全じゃぞ!」
平木がそう言っているときだった、

突如車のぶつかる衝撃が走った。

後ろから追突された。平木はバックミラーを確認した。後ろに黒塗りの車が4台、のび太は横も確認した。
同じ車種の車が両隣に一台ずつ、合計6台の車が周りを囲んでいた。

「不覚じゃったのう」
少しあせる平木、だが黒塗りの車は一斉に攻撃を始めた。サイドミラーの割れる音、車内の激しい揺れ、
のび太は銃で応戦しようとしたが、敵の車内を確認すると、マシンガンが用意されていた。

撃てば間違いなく撃ってくる。攻撃ができないのび太たちをあざ笑うかのように攻撃は続く、そしてとうとう黒塗りの車が前を横切る。
激しい衝突と共に車は止まった。

「降りろ」

黒い背広の厳つい男たちが呼びかけてきた。

仕方なく降りるのび太と平木。その間にはるとさくらは眠ったまま男達に抱えられ黒塗りの車に入れられた。

「残念だったな、ここまでだ」
男たちが最悪な笑みで銃を構えた。

「本当、残念じゃな」

平木がそう言ったと同時に、平木とのび太の姿は消えた。

「な!なに!?」
男たちが慌てる、だが、目的の子供が手に入ったのですぐに退散した。

その時、平木とのび太は、時空間に漂っていた。

 

第9話

見たことの無い空間、真っ暗のはずなのに平木の姿はしっかりと見える。

「どうやら時空間は初めてのようじゃな」
「なるほど、あなたの能力ですか」
「まぁの、あの男共をこの時空間に送る事もできたが、人数が分からなかったのでな」

「それに、あと少し遅ければ殺されていましたしね」
「さて、奴らももうアジトへ戻っている頃だろう」

そう言うと、平木は時空間を移動し始める。無重力状態だがコツを掴めば移動は楽だった。
のび太もぎこちない動きだが平木を追いかける。

「ここら辺じゃな」

平木がふと止まった。次の瞬間、一瞬で元の世界へ戻った。
そして、目の前にはビルが建っている。
「奴らの、日本に構えた拠点だ、さ、さくらちゃんとはるちゃんが寂しがっとるだろう」
揚々と中へ入ろうとする平木、
のび太も銃を構えながら中に入った。

夜なのに電気は明々とついている。自動ドアをくぐれば中には受付があった。
「こんばんわ、何か御用でしょうか」
受付嬢が二人に頭を下げる。

「さくらちゃんとはるちゃんを迎えに来たのだが」
「すみません、何を言っているのかよく分からないのですが」

「平木さん、悠長に聞いたって仕方ないよ、さっさと社長室にでも殴りこんで」

 「バキューン!」
いきなり受付嬢が短銃を構えて平木に発砲した。

「!!平木さん!」

「なんじゃ?」
撃たれたかと思ったのび太だが平木はいたって平気だった。受付嬢がまだ撃ってくる、しかし命中しない。
それもそのはずだ、平木は撃ってくる弾を全て時空間に飛ばしたのだから。

「ちっ」
受付嬢がボタンを押す、するとビルの警報が鳴り出した。するとどこから湧き出てきたのか黒ずくめの人間がわんさかと現れた。

「おぉ〜、なんかたくさん出てきたの〜」
「いや、のんきに言っている場合じゃ」
「銃はきかない!殴って殺せ!」

受付嬢が先程と違う声で勇ましく命令した。

「さ、さすがにこの人数では」
「全員時空間に送るのは不可能のようじゃ、すまんが自分の身は自分で守れ」

「言われなくとも!」
のび太は銃を捨て手を前に構え始めた。

「格闘技習っといてよかったよ」
一人目が顔面を狙って殴ってくる。軽く避けながら相手の腹に拳を一発あてる。後ろからも襲ってきたが回し蹴りで顔面を蹴りつけた。
しかし後ろから男がのび太を羽交い絞めにする。だが、慌てることなく肘鉄を喰らわすとあっけなく手の力が抜ける。

すぐに振り向いて腹を押さえる男を蹴り飛ばした。

平木は5人の一斉攻撃を全て避けていた。

「なんだこのじじい!」
「動き見切ってるのか!?」
平木は笑いながら一人の殴ってきた腕を掴みへし曲げた。
「ぐわっ!!」

痛がる男を驚く力で引っ張り後の四人にぶつける。
「銃がダメでもこれならどうだ!!」
別の男が日本刀を持って平木に斬りかかる。だが振り下ろした時、既に日本刀は消えていた。

「あれ?」
戸惑う男にドロップキックをお見舞いする平木。
顎に入ったようで男はそのまま仰け反って気絶した。


徐々に人数が減っていく。大体の人間は気絶だが中には腕をへし折られたものもいる。
だが依然として人数は多かった。

「くそ!これじゃあきりがない!」
「安心せい、こういう時は仲間が来るものじゃ」
「そんな事言っても、そんな都合よく」

そう言った時だった、正面ガラスにトラックが突っ込んできた。

「・・・な、ナイスタイミング」
のび太が苦笑いをして言う。もちろん中には静香と葉月とジャイアンがいた。

「おうのび太!こいつらが黒幕か!」

トラックから怒りに燃え上がるジャイアンが出てきた。
「お前らのお陰で犯罪者呼ばわりされた、よってお前ら死刑」
般若面の鬼より怖い顔で黒ずくめを睨むジャイアン。震え上がり始めた黒ずくめだが、もう遅かった。
近くの敵の頭を掴むジャイアン。

「ありゃぁあああ!!!」
そのまま他の敵のいる場所へそいつを投げつける。
ぶつけられた黒ずくめは合計6人で吹っ飛び後ろのガラスを盛大に割って外へいった。

「のび太さん!上に行けばさくらとはるがいるのでしょ!早く行って!」
「わかった!」
のび太は敵を押しのけてエレベーターへ向かった。


NWPがのび太達の襲撃を黙っているはずもなかった。すぐに江藤に電話が鳴る。
「な、なんだと!ブルーキャットがそっちを襲っている!?」

すぐにでも逮捕して刑務所にぶち込みたいが、
今ここで警察や他の機関にあの会社を調べられるとエネストーン計画がばれてしまう。

「私が行きましょう」
江藤は電話でそう言うとすぐにのび太達がいるビルへ向かった。

エレベーターで最上階を目指すのび太。
どこにさくらとはるがいるのかは分からなかったが、最上階に行けばなにか手がかりがあるとのび太は思った。
すぐに最上階へはついた。エレベーターから出ると、そこは広い社長室だった。

前方がガラス張り、そして机は中央にたった一つ。そしてイスにもたれかかる人物。

「あんたが今回の黒幕か」
「・・・いかにも、NWPの幹部の一人、エノールだ」

「幹部?ボスは逃げたか」
「今回の首謀者は俺だよ、ボスの為にと思って行動したのさ」

「・・・つまりあんたが犯人でいいんだな」

「捕まえる気か?無理だなそれは、ルーラ、こいつを殺せ」

そう言うと後ろから剣を持った少女がのび太に斬り掛かった。

素早く避けるのび太。
「・・・次は・・・外さない」

そして、最終決戦が始まった。

 

第10話(最終話)

「僕に剣はくれないの?」

そう言うとルーラは腰にさしていたもう一つの剣を投げる。

「どうも」
そう言って受け取った瞬間、ルーラは動いた。真っ直ぐに剣を突いてきた。

のび太も素早く剣を抜きルーラの剣をはじく。
だがルーラの攻撃はまだ続く、女の子とは思えない力強いうちに俊敏な動き、右を攻撃すれば避けた
瞬間くるりと回って左を切りつける。

完全にのび太はおされていた。

「全く、君みたいな可愛くて強い子が何でまた悪に味方するの?」
「・・・殺すの・・楽しい、から」
「大人しそうな性格の顔なのにすごいこと言うね」

「・・・あなたも・・・もうすぐ死ぬ」
「それは、できない相談だ」

喋りながらも攻撃は続いている、だが避けてばかりののび太はどんどん下がる。
後ろには壁が迫ってきている。ルーラはここぞとばかりに攻撃に更に力を入れる。

とうとう壁に背中がついたのび太。

「あなたは・・・もう逃げれない」
「なぜ?」

「横に逃げればすぐ切り殺す・・・前に出れば刺し殺す」
「そう、じゃ、最後に言わせて」
「死に際に・・・最後の台詞・・・いいよ、言わせてあげる」

「君のズボンのベルト切ったからズボンが下がってパンツが見えてるよ。

のび太の言葉に顔を真っ赤にしながらズボンを見るルーラ。

だが当然ながらズボンはずれていない。

「なんちゃって」

すぐにのび太はルーラの剣を弾き飛ばしルーラの首に剣をさした。
「チェック・メイト」
笑うのび太に、ルーラは少し惚れた。


江藤がビルにたどり着いた。中へ入ると黒ずくめの人間全員が倒れ伏している。

「な、なんだこれは!」
「江藤副国本部長〜、あなたの悪行は全てこいつが吐きましたよ」

静香が縄で縛られたエノールを足で踏みながら言った。

「日本のWPの上官がテロリストとグルなんて、懲戒免職どころか終身刑ですね」
葉月が笑いながら江藤に話しかける。

「江藤貴様〜、俺が判決を下すのなら死刑確定だ」

ジャイアンが指を鳴らしながら江藤を睨む。

「悪人のおじちゃんだ!!」
「最低人間だ!”」
さくらとはるが指を差して言う。

「ぐぬぬぬ・・・貴様ら!!」

「おっと、江藤さんよう、警察にはもう連絡したんだ、諦めな」

のび太がかっこよく最後を決める。だが江藤はまだ納得がいかないようだ。

「はっ!警察になんぞ誰が捕まるか!私の能力は「洗脳」だ!これでお前たちも!」

「いい加減にしたまえ、江藤副国本部長官、往生際が悪いぞ」

平木がのび太の後ろから出てくる。

すると、江藤は固まったようだ。
「ひ、平木、国本部長官」

「「「「・・・・え?」」」」

「ひ、平木さん、あんた、日本WP長官だったの?」

のび太が恐る恐る尋ねる。
「はっはっは、そうで〜す」

お茶目に返す平木。

「とても日本のWPトップには見えない」
ジャイアンの台詞にのび太たちは頷いた。

しばらくして警察がNWP幹部、エノーラ、及びその団員を全員逮捕した。

また、前代未聞のWP上官の逮捕は世間を賑わせた。それより更に話題になったのが。

 『お手柄、ブルーキャット!世界を救う』
お陰でブルーキャットは瞬く間に人気者となった。

「ふ、人気者は辛いね」

スネ夫が新聞を見ながら言った。

「ばか、お前はずっと刑務所だったろうが」
ジャイアンが軽く返す。
「あ〜あ、私今回で番少なかったな」

留美がつまらなそうに口を尖らせる。
「ま、仕方ないでしょ、それより、さくらちゃんとはるちゃんから手紙よ」

静香が一通の手紙をのび太に渡す。
「あなた宛でね」
静香はそう言った。のび太が手紙を開けると、写真が出てきた。

それは、一玖とさくらとはるが海で遊んでいる写真だった。

「あら、南国の島?」
「いいな〜、私たちも遊びた〜い」
「ふ、僕なんか別荘を持っているからペラペラ」

「スネ夫、黙れ」
「ん?なんて書いてあるのかな?」

  「ありがとう!あおねこさん」

そこにはさくらとはるが書いたと思われる文字でそう書いてあった。

 

「はは、あおねこって、士道刑事のマネをしたな」

のび太が笑っていった。そして、扉が開く。

「みんな、事件発生よ」
葉月がそう言って入ってきた。

「よし、ブルーキャット!出動!」

ドラえもんがそう言うと、のび太達がすぐ動いた。

「ラジャー!」

  今日も悪と戦う。平和の為に。

 

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