石版

文矢さん 作

 

第四幕 まるで踊り狂うかのように

其の壱

 目を開いた時、目の前には近未来の光景が広がっていた。空中を浮かぶ車、アスファルトとは別の材質でできた地面。
そして、目の前にある巨大な白い建物。建物に書かれている文字、それは『タイムパトロール本部』の文字であった。

見る人が何処の国かで、文字が違って見えるような仕掛けになっているものだ。
 そして、のび太は周りを見渡す。周りには、同じようにボーッとしている仲間達がいた。
全員、無事だということにのび太は喜びを覚えた。

 どらEMONは自分たちが未来に行けたことの喜びを感じていた。

どらEMONは此処からどう行けば中に入れるのか等を知っている。声を出し、先頭をリードし始めた。
のび太達は歩いたが、どらEMONは歩かないで移動していた。

「これはベアリングロードになっているんだ。動け、と思えば動けるよ」
「ああ、そうだったのか」

 彼らは、一度ドリーマーズランドという遊園地に行った事がある。
そこで使われていたのがベアリングロード、これと同じものなのだ。不思議な道で、小さな球体が敷き詰められてできている。
そして、上にいる物の脳内を読み取る機械が付いていて、何処かに行きたいと思えば動き出すのだ。

早くやれと思ったらどんどんスピードが出る。
「EMONさん、タイムパトロール本部ってどういうものなんですか?」
 静香。走りながらも、言葉は通じた。どらEMONはそれを聞くとすぐに答える。
「凄いところさ。セキュリティから何から何まで万全。中に入ればイカたこ達が襲ってくることは無いだろうね」

 その時、一瞬だけどらEMONの目に人影が移った。その姿からして、普通の通行人のようだった。
やけに規則正しい動きをしていた。

「EMONさん、何処に入り口があるんですか?」
「そこです」

 どらEMONは止まり、壁の方を指差した。
ジャイアンとスネ夫はさっきまでの恐怖とは裏腹に、テンションが上がってスピードを上げすぎた為、少し戻らなくてはならなかった。
 どらEMONはポケットから黒いカードを取り出すと、それをドラえもんに手渡した。ドラえもんの腕は修理されている。
どらEMONはそれを壁に通せという指示を出した。この黒いカードが特別パスポートだった。アナウンスが流れる。

『永戸どらEMON隊員。お入りください』
 そう言うと、その壁に入り口が現れた。六人はすぐに中に入っていく。
すると、右側に建物が見え、そこから若い隊員らしき者が現れた。手には機械を持っている。
 タイムパトロール本部の建物は見えない。そこからは意図的に見えないようにしているからだ。

「え〜と、その子達は何でしょうか?」
「事件に巻き込まれた子達だ。とりあえず検査をして、認証してくれ」
 隊員は機械でどらEMONの体の色々なところをチェックし始めた。
指紋から声紋、与えられているパスポート、その他骨のチェックなどもされていた。そして、隊員が口を開く。

「はい、認証しました。そこの子供達も」
「あれ? 歯のチェックはしないのか?」
 隊員の言葉を断ち切り、どらEMONが眼鏡を上げながらそう言う。
隊員は気づいたかのように、ライトと機械を取り出し、歯のチェックをしようとした。その時だった。
どらEMONは隊員を切り裂いた。まっぷたつに。

「EMONさん! 何を!」
 ドラえもんが叫ぶ。静香は悲鳴を上げ、スネ夫は震えた。ジャイアンとのび太も驚いていた。
どらEMONの顔はさっきから変わっていなかった。そして口を開く。

「歯の検査なんて無い。よく見てくれ、こいつは機械だ」
「えっ」
 驚いて見てみると、確かにそいつは機械だった。流れ出ているのは血ではなく、ただのオイルだった。
そしてどらEMONは空を見上げる。

「そしてだ、イカたこの手の者だろ? 『上にいる者』」

 どらEMONは日本刀を構えながら言う。それを聞くと、空間から一人の女が現れた。
『透明マント』か何かで隠れていたらしかった。その一連の流れは、映画のワンシーンを見ているかの様に鮮やかだった。
そして、女は歩き始める。

 女の格好はそう、忍者だった。時代劇とか漫画とかでよく見る、黒衣装。
その光景は、辺りの近未来とは全くあわなかった。女だと分かるのは、胸の膨らみと目の様子のせいだった。

そして、女は顔のマスクをとる。その顔は、実に美しかった。年齢は、二十代であろう。
どらEMONと同じのようだった。背には日本刀らしき物を背負っている。

「これは予想だが、多分、時空間をねじれさせたのだろう。 未来から過去へ行く者は、同じように仮想空間に来ているに違いない。
 俺たちは過去から未来へ行くのに、仮想空間に入ってしまった」

 女は頷いた。その時だった。どらEMONは日本刀で切り掛かった。だが、それは女を切り裂きはしなかった。

女の背の日本刀がどらEMONの日本刀を止めていたのだった。金属音が反響してまだ響いていた。
どらEMONはすぐに女から離れる。

「私の名はメタル。あなたが私を倒すつもりなら! 私の罪をおっ被ることね」

 メタルは懐に手を入れ、何かを取り出しそれを投げた。日本刀は、いつの間にかしまわれていた。
どらEMONが気づいた時、すでにどらEMONは壁に貼付けにされていた。
貼付けにしているのは、氷のような形をした刃物だった。どらEMONはその名前を知らなかったが、それはクナイ。

いわゆる手裏剣の一種であった。
「凍牙……と名付けているんだけど、どうかしら?」

 メタルの声が不可思議な光景に響いた――

 

其の弐

 アンバランス。この状況は、まさしくそれだった。近未来の光景の中に、昔、戦国時代の様な格好をした者がいる。
そして、その者の使う物も完全に忍者なのだ。漫画やアニメでギャグで出てくるような、忍者。まさに、アンバランスだった。
「おおお!」
 その時、ジャイアンが駆け出した。メタルへと、飛びかかろうとしたのだ。
野球やけんかで培われた力は大人にも負けないほどのものでもあるだろう。だが、ジャイアンの動きは途中で止まった。
いや、正しくは止まらさせられたのだ。ジャイアンの体は、メタルの数メートル前で動かなくなっていた。

 その光景に対して、メタルは正確な答えを出す。ニヤニヤと、笑いながらだ。
「すでに私の凍牙はッ! 色々なところに打ち付けてある! そしてよ、凍牙には、丈夫な糸が通されている。分かるかしら? 
あなたは糸で動きが封じられているッ!」

 今、彼らが戦っている世界はイカたこ達が作った空間だ。そして、その上には人工の太陽が浮かんでいる。
その太陽の光は普通の太陽の様に、空間を照らしていた。人工太陽の光によって、キラキラと糸が光る。

糸の先はメタルの左手に集まっていた。
 誰も、動けなかった。動いたら動きが封じられるというのが分かりきっていたからだ。
糸が今無い地点に行っても、メタルはちょっと手を動かせばいいだけのことなのだから……

 そんな空気の中、最初に動いたのはメタルだった。
背中の日本刀を取り出す。普通の日本刀なら、両手で持たないと斬ることはおろか、ちゃんと持つことはできないだろう。
だが、日本刀には未来の技術が使われていた。右手で斬っても、切れ味は抜群。
昔はかなりの強力でないとできなかった人体まっぷたつも、メタルの剣なら楽々であろう。

 そして、一歩一歩進んでいく。どらEMONへと近づいていくのだ。その刀でどらEMONを斬る、というのは実に簡単であろう。
「それにしても、どらEMON。あなたは凄い判断力を持っているのね。あの警備員、本当の人間だったらどうした気?」

「タイムパトロール本部の周りには、一般人はほとんどいない。周りにいるように見える人は、全て隊員だ。
だが、途中で見かけた奴は機械だった。お前らがリアリティを出そうとしたのだろうが、そこから俺は怪しんでいたさ。
そして、もう一つ。ドラえもん君に俺のカードを通させたが、普通に入れた。タイムパトロールだったらありえない」

「成る程。長い言葉、どうもありがとう」
 メタルはそう言うと、刀を振り上げた。その瞬間だった。どらEMONは刀を空中へと投げた。メタルにも当らず、ただ糸を切って地へと落ちた。そして、ジャイアンは解放される。どらEMONはニヤリと笑った。

「何? 子供達を逃げさせる気かし……!」
 そこで、メタルは動きを止めた。ドラえもんがどらEMONの方へ駆け出すのが見えたからだ。
そして、ドラえもんの持っている手の瓶を見る。手には、マジックで酸と書かれていた。
それを投げようとしていると判断するのは一瞬だった。

 メタルはまだ残っている低い位置にある糸でドラえもんを転ばせた。
ドラえもんの手から瓶はすっぽ抜け、どらEMONの頭に当るとその瓶は割れた。

「う……ぐ」
 まるで豚を絞め殺したかのような音が響いた。そして、メタルの笑い声。
「バン! バン! バン! バン!」
 だが、次の瞬間だった。声が聞こえたかと思ったら、メタルは吹き飛んだ。メタルの体に、衝撃が走る。
少しのダメージだったが、油断していたのかメタルは立ち上がるまで少しの時間を用した。

「バン、バン、バン!」
 そして、凍牙もすぐに壊され、どらEMONの体は自由になった。
メタルがどらEMONの姿をちゃんと見れた時には、すでにどらEMONは日本刀をつかんでいた。

 ドラえもんの、作戦通りだった。酸というのはマジックで書いたハッタリ。
瓶の中に入っていたのは『空気ピストル』その液体を指につけて「バン」と言うと、指から空気弾が発射されるものだ。

そして、どらEMONはそれに気づき、使ったのである。
 空気が、変わっていく。西部劇でよくある決闘。ジャイアンは、それはこういう空気の中やるのだろうと解釈した。
のび太の体は、また戦いが始まるという不安と恐怖で体をふるわせていたが、決して目を逸らすことも無く見つめていた。

 メタルの日本刀の名前はムラマサという。そういう名前の妖刀が昔あったといわれている。
どらEMONの刀の名前は水裂、みずさきと読む。双方、物凄い切れ味があるものだ。

 そして、一歩メタルが進む。黒い服に身を包んだ彼女はとても目立ってみえた。
忍者というのは昔から、目立ってはならないものだがメタルはそうは思っていなかった。

私が憧れているのは、相手を騙し、目的を達成するその行動そのものなのであった。そして、メタルは口を開く。

「ポリシーに合わないからあまりやりたくないんだけどね。やらせてもらうわ」
 メタルは右手に持っている日本刀の先をどらEMONに向けた。柄の部分を軽く握っているように見えた。
どらEMONはその点を見ていた。どらEMONの『空気ピストル』は残り三発だった。残っているのは左手のみ。

どらEMONはそれを考えていた。日本刀を握っている右手と、左手で撃つ、ストーリーは完成していた。
重要なのは、どうやってそれをやるかという事だった。

 そして、メタルが走り出す。砂が空に舞い、粉雪のように落ちていく。
 どらEMONのところに行った瞬間。メタルは日本刀を素早くおろした。

そこでどらEMONは防ぐ。だが、それもメタルの考えの内だった。
まるで壁に当ったボールの様にバウンドし、そしてもう一回振り下ろされた。それはどらEMONの水裂の射程外だった。

どらEMONの体はこのままじゃまっ二つになっただろう。
「バン!」
 どらEMONの叫びが響き、日本刀ムラマサの位置がズレる。当ったのは、メタルの右手だったのだ。
そして、それは水裂の射程内――

 そして、さっきの軽く握っているところ。どらEMONはそれを狙っていた。ムラマサは上空へとはじき飛ばされたのだ。
そして、どらEMONは左手をメタルへと向ける。

「ポリシーに反するっていうのはそれなのよ。私は、物を大切にしたいんだけどね」

 ここでどらEMONが気をとられなかったら『空気ピストル』で勝てたかもしれない。
だが、そこが駄目だった。メタルの右腕には、糸があったのだ。そして、上空のムラマサの柄にはクナイ、凍牙が刺さっている。

 そして、右腕をメタルは動かす。
ムラマサは、空中で何者かに押されたかのごとく、どらEMONへと襲いかかる。この時、若干の空白があった。

そして、どらEMONは水裂でムラマサを防ぐ。だが、それも意味が無いことだった。

「凍牙はすでにッ! 私の手にあるわ」

 そして今、メタルの手の凍牙が投げられた……

 

其の参

 心臓。誰でも分かっているだろう。人間の体の中で、血液を体へと送り出すポンプの役割を果たしている。
我々は心臓を大きい物と思っているが、実際にはそれぞれの握りこぶしぐらいの大きさだという。

そんなぐらいの心臓に鋭いものが突き刺さったらどうなるのであろうか。
少しでも傷がついたら、腕についた傷の何十倍ものダメージを体へ与えるだろう。それがあるのは胸だ。

 そしてだ、メタルが投げた凍牙はどらEMONに刺さっていた。丁度、心臓の位置に。
凍牙が刺さっているところからはじんわりと血がしみてきている。抜いたら、物凄い勢いで血は吹き出るだろう。
どらEMONの眼鏡は地面へと落ち、体まで崩れ落ちた。

 タイムパトロールの制服に付いている、『TP』というエンブレムがやけに輝いていた。
だが、そのエンブレムもゆっくりと赤く染まっていき、どらEMONのまぶたも閉じる。
人が殺されて死ぬ時、たいていは目を開けたまま死ぬ。
ドラマとかでよく目のところに手をかざしているのは、目を閉じさせる為だ。

メタルはそれを見て、少し疑問にも感じたが、よくよく考えると凍牙の長さから心臓を貫けるわけが無いと思い、ほうっておいた。
 メタルは糸をたぐり寄せ、日本刀を背中のさやに入れた。
そして、凍牙も抜き、腰にかけてあった容器から水で洗い、懐へと入れた。
その間、ドラえもん達はその光景を見ているだけだった。そして、のび太が目覚めたかのように叫ぶ。

「EMONさああああああん!」

 だが、返事が返ってくることは無かった。どらEMONはただ、地面に倒れていた。

「無駄よ。外すとでも思っているの? 漫画アニメの忍に憧れていたとはいっても、止めをあまり刺さないのは見習ってないわ。
 それにしても、素晴らしかったわ。どらEMON。敬意を表すわ」
 のび太の顔は、白くなっていた。驚きと、絶望の入り交じった顔だった。
そのメタルの顔には、確かな説得力があった。人と話している時、嘘をついてるなと分かる時があるであろう。
それは、顔が笑っていたり、目を見たりすれば分かる。そして、メタルの顔にはそれが無い。嘘をついているサインが無い。
騙されやすいのび太だからこそ、さらに衝撃が倍増したのであろう。当然、ドラえもん達も動けなかった。

「この勝負、私の勝ちね」
 イカたこが作った仮想空間。人工太陽が照らす中で、メタルの声は冷たく響いた――
 そんな中、場の空気を壊す機械音が聞こえた。気づいたのは、スネ夫だけだった。スネ夫は胸を押さえた。
スネ夫の心臓は、とてつもない程のスピードで動いていたからだ。そして、後ろを振り返った。
そこにいたのは、スネ夫の予想通りだった。

 ロボット。裏山で襲ってきたのと同じ。ロボット。ゴツい体。緑色で、三メートルぐらいの大きさ。
顔は半円型で、人間でいう目の部分には黒いラインの中の二つの赤い光が輝いている。

 スネ夫の体は震え、そして、口を開いた。

「ロボットだああああ!」
 その瞬間、メタルから一気に後ろへと視線は動いた。五体。ロボットは、五体いた。
どれも、ドラえもん達の後ろに。ドラえもんはポケットに手を入れ、『空気封』を全員の手に入るようにバラまいた。
「ドラえもん君達。あなた達には罪は無いのかもしれない。でも、死んでもらわなくてはならない。
フフ。ケネディ暗殺の真犯人も、知った者は殺されるでしょ?」

 メタルのそんな声が響き、ロボットが機械音を出して動き出す。何をやろうとしているのかは分からなかった。
が、ジャイアンは突撃した。野球やけんかで鍛えたジャイアンの足腰。さっきのメタルの糸によるダメージはすでに回復していた。
 ロボットの動きには限界がある。死角にさえ周りこめば撃つことはできないのだ。
戦いの本能というか、何というか、ジャイアンはそこに入り込んでいた。
それに気づいたスネ夫は震えながらも声を出してジャイアンを応援する。そして、ジャイアンは叫ぶ。

「ドカン!」
 ジャイアンの空気弾。一発目は肩。肩のマシンガンに直撃した。その部分から煙が出て、軽く爆発する。
中にあった弾のせいであろう。その瞬間、歓声が上がった。

 そんな中でも、のび太は震えていた。ゼクロスの断末魔。それがまだ耳にこびりついていた。
どらEMONがやられた時は、激しい怒りを覚えた。だが、本当にそれでいいのだろうか。

自分たちが、殺しをやっていいのだろうか。だから、のび太は震えていた。
自分は戦場の戦士にはなれないだろう、とのび太は思った。
 ジャイアンはまだ動く。次は足に打ち込んでいた。さっき撃ったのとは別のロボットだった。
ジャイアンは笑っていた。戦いが、楽しいとも感じていた。別に、人を殺すのが楽しいわけでは無い。
だが、自分の思い通りに体が動くのが楽しかったのだ。

 だが、次の瞬間だった。ロボットの体から、一気にマシンガンが発射された。
ドラえもんは『ヒラリマント』を使い皆を守るが、限界があった。さっき切れた腕も、完全には治っていなかった。
そして、辺りは煙に包まれる。
 誰にも弾は当っていない。ただ、ロボットのパイロットは考えていたのだ。
五人がまとまっていたら、色々とやっかいだという事を。奴らの装備などたかが知れている。
だから、分断させることが必要だというのを考えていた。
パイロットは、レーダーでドラえもん達を判断し、それぞれ別の方向へと行った。


「終わり、かしら。いや、でも何かがあるかもしれないわね。私も参加するか」
 と、メタルが言いかけた時だった。後ろに気配を感じていた。位置は、タイムパトロールという看板がある建物の玄関。
この建物の中は、イカたこ達の基地にもなっていた。
――今、イカたこ達はいないが――どらEMON達を騙すが為に、空間を作るにはコストが大きすぎるからだ。
 そして、メタルは後ろを振り向く。そこには、さっき殺した筈の男がいた。メタルは驚いた。

確かに、凍牙は刺さったのに。心臓部分に、何故か、意味が分からなかった。
「どらEMON……」
「え? 逃げることは無いだろう?」
 そうどらEMONが言った時、ドラEMONの体から何かが落ちた。それは、二本の日本刀だった。
何かが刺さった後もある。そして、その日本刀は今、どらEMONが持っているのと同じ。水裂だった。

 何故、どらEMONが生きていたのか。その理由は簡単だった。凍牙で操っていたムラマサが来る瞬間。
その時の空白の間に、『フエルミラー』で水裂を増やし、心臓を守るように体の中へ入れたのだ。
そして、どらEMONは服の下に常備している血のりも使っていた。

「この際、どうでもいいわ。少しこっ恥ずかしいけどね」
 その時、メタルは不思議なステップを踏み始めた。当然、どらEMONはそれを見る。
メタルは、いつの間にか扇子まで持っていた。そして、少し経った時に気づいた。メタルが踊っているというところに。
その動きは美しかった。

 ――いかれているのか? どらEMONはそう思い、日本刀で斬ろうとも思った。だが、体が動かない。
さらにもう一つ。メタルの踊りをもっと見たいとまで思っていた。どらEMONの体は、動かなかった。

「馬鹿らしいと思う? だけどあなたの動きが止まっているのは事実」

 メタルの声は響く。どらEMONはそれでも動けない。
「例えば、アニメを見ている時。邪悪な敵にむかついたりするでしょう? 
 それと同じ。芸術というのは、人の心も操れるのよ。『モナリザ』の前で暴れ回る奴などいないでしょう? 
 それが私の技。『魅惑の舞い』」

 そして、メタルは静かにムラマサを抜く。その動きまでも美しかった……

 

其の四

 メタルは、静かに歩いた。右手に握られているのはムラマサ。
人工太陽の光にその刃は輝き、踊っているメタルの姿をさらに幻想的に見せていた。

目をつぶっても、その呪縛からは逃げれない。目をつぶったところで、手をほんの少しだけ動かせるだけなのだ。

まだその舞が見たいと思ってしまい、すぐに目が開いてしまう。 メタルはゆっくりと近づいていた。斬られる。
そんな事は分かりきっていた。だが、どらEMONは慌てていなかった。手には水裂が握られている。

「なぜ、俺がここまで来るのに遅れたか分かるか?」
 どらEMON。それでもメタルは舞を止めず、ただ話すだけであった。
「そんな事は関係ないでしょう?」
「関係あるさ。どうせなら、倒れないでそのまま斬り掛かってもよかった。なあ、何でだと思う?」

 メタルは内心焦っていた。表面にはそれを見せなかったが、何か策があるとなるとそれは危険。

それならば、どうするべきか。メタルは考えた。メタルはあまり秘密道具に詳しくはない。自分が使わないからだ。
だが、ある程度は予想がつく。それがあくまでも戦いだったからである。
 自動追跡ミサイルみたいのをやっていたらどうするか。それは無い。メタルは考える。それなら、姿を表さない方がいいからだ。
それならどうするか。メタルは分かった。どらEMONがなぜ、目の前にいるか。そうだ、自分でコントロールをするからだ。

地面、又は空中から何かで攻撃させるつもりなのだ。そして、それをスイッチか何かでコントロールする。

それならどうするか。メタルはすぐに判断する。この場所をあまり動かないように舞っていればいい。
そして、何かが来る直前に逃げればいい。そう考えたのだ。
 そして、メタルは舞をその場でやり始める。
「教えてやろう。ドラえもん君達を傷つけないようにさ」

 その瞬間、地面から水が吹き出した。
それは、メタルとかどらEMONとかからは関係なく、範囲が広い為避けることもできないものだった。
どらEMONは水裂を手を器用に使って動かした。そして、他の秘密道具を使い、瓶に何かを入れた。

 何をするか。目をつぶり、どらEMONは二十二世紀のライターみたいなものを取り出す。
そして、瓶の中にライターを入れ、瞬間的にそれを投げたのだ。爆発。

 炎が一瞬広がり、ガラスの破片が辺りに飛び散る。その威力は思ったよりも凄まじいものだった。
そして、どらEMONの体が動くようになる。メタルは舞をやめていた。いや、やめさせられたのだ。瓶の爆発によって。

 水は相変わらず吹き出していた。どらEMONの『ジェットモグラ』が下の今でいう水道管に穴を空けたからである。
どらEMONはどれぐらいで水道管にたどり着くかを計算し、そして丁度良いと思ったところでメタルに話しかけたのであった。
 そして、爆発。水裂の力の一つとして、物を裂くというのがあるのだ。
水を水素と酸素の分子に分解し、それに火を入れて水素に爆発をさせた。
裂ける範囲は狭いが、範囲内のものはちゃんと斬れる。それが水裂なのだ。空気を電気分解するのと同じことだってできる。
だが、その場合すぐに他の空気に混ざってしまうので関係ないが。
 どらEMONはすでにメタルを自分の射程距離へと入れていた。水裂を振ればすぐに終わらせられる位置。

そして、それをメタルは気づいていない。
 チャンスだ―― どらEMONの鼓動が高まる。
 水裂を動かした僅かな空気の揺れ。それをメタルは見逃さなかった。
すぐにムラマサを音が聞こえた方法に構え、凍牙を何処かの方向へと二本投げた。
 水裂はムラマサに止められる。だが、どらEMONはそこまでも予想をしていた。

『空気ピストル』まだどらEMONの手には残っていた。
「バン!」
 メタルの頭に直撃し、メタルの頭が揺れる。だが、メタルは意識を失いはしなかった。両手をクロスさせたのだ。
さっき投げた凍牙はしっかりと壁に刺さっていた。右手に付いている糸の凍牙はメタルから見て左側。

左手の糸の凍牙は右側に糸がクロスした状態で刺さっていた。そして、両手をクロスさせることで、どらEMONの体は動けなくなった。
「水裂を少し動かせば終わりだ、メタル」
「私は勝利を諦めない。それが忍という職業の意味でもあるし、私の生きる道なのだから……」


「どうすれば……いいの?」
 静香の言葉。静香の隣にいるのはのび太だった。そして、目の前にいるのはロボット。
一体だけだったが、二人を震わせるには十分な効果があった。いつ、マシンガンを撃ってくるのかも分からない。
ジャイアンが相手したのとは違うということは分かっている。

 ――このゼクロスが! 後の世に名を残す、ゼクロスがぁぁ! 黙れ、黙るんだ。
ゼクロスの断末魔はまだのび太の頭の中で響く。そして、それは人を殺すということの重さをも物語っていた。

 次の瞬間だった。マシンガンが発射された。二人は空気砲で何発か落としたが、それも無駄だった。

致命傷では無いが、体のいくつかの部分は貫通した。

 静香は立ち上がれなかった。痛みと、恐怖で。のび太はその様子を見てある事を呟きながら立ち上がる。
「守……らな……きゃ……」

 

其の伍

 人の精神というのは、不思議なものだ。時によって、それは体まで影響する。
例えばこんな事例も――都市伝説としてだが――ある。一人の男はある日からこう思い込むようになった。
自分は昔、ナイフで腹を切られた、と。その男は何も証拠が無いのに、そうやって思い込んでいた。
するとだ、男の体にナイフで切られた古傷のような跡が現れたのだ。どういう事だか分かるだろうか。

人の精神というのは、これほどのパワーを持っている、という事である。
星新一のある作品では、自分が死んだという事を自覚しなくて、永遠に生き続ける老人の話がある。

この星氏の作品はあくまでフィクションだが、もしかしたら実際にありえるのではないであろうか。
 普通、この年の子供だと、痛みで動けないところであろう。だが、のび太は痛みを感じていなかった。

守る、静香を。自分の好きな人を、守る。その言葉がのび太の精神を支配していた。
 ロボット。パイロットは、少し異常にも思いながら、冷静だった。マシンガンを撃てばいいだけなのだ。

作戦も何もいらない。ボタンを押せばいいだけなのだ。

 そして、パイロットは親指をボタンの上に乗せる。
 のび太は『空気砲』を胴体のコクピット部分へ向ける。
 とても、静かだった。静香は、ただそれを見守るだけだった。そして、静香は感じ取る。勝負は一瞬で終わるであろうと。

 人工太陽は沈みかける。
本当なら、ずっと出しててもいいのだが、夜の時間帯に来た時にすぐにバレるというイカたこの判断であった。

暗くなっていくなか、のび太の視線は変わらなかった。
「ドカァン!」
 そして、ボタンが押される。 そして、空気砲から発射される。
 決着は、着いた。静香の思った通り、一瞬で。

 マシンガンは空中へと発射され、のび太の方へ撃ち込まれはしなかった。その前に、ロボットが崩れたからである。空気弾で。

 『空気砲』は声によって発射される道具だ。小さく「ドカン」と言ったら、小さい空気砲が発射されるであろう。
その逆も言えるのだ。のび太の「ドカン」は大きく、深い言葉だった。

『空気砲』へのび太の意思が伝わり、発射されたのだ。最大級の威力の空気弾が。
 のび太の意思に答えた『空気砲』は、ひびが入り、バラバラになっていった……

 どらEMONは迷っていた。この糸を切るかどうか。それがどらEMONにとっての問題だった。
さっきから、騙したり騙されたりが続いている。そんな中、この糸を切っても良いのか。

もしかしたら、何かしらのトリックがあるのではないか。それだった。
 考えていると、メタルの顔が笑っているようにも見えた。場は沈黙に包まれる。

 メタルの作戦は、作戦でも何でもなかった。ただの賭けだった。どらEMONが糸を切るか、切らないか。
問題はそれだったのだ。それだけが、問題だった。
 どらEMONはメタルの姿を観察した。左腕を服の中に入れている。

左腕がそうなっていても、糸はピンと張られているだけだった。ヒントは、何も無い。
メタルが何をやるかなんて分かる筈も無い。

 どらEMONは糸を切った。水裂を使って。そして、すぐに身構えた。
だが、メタルは物凄いスピードで飛び込んできた。どらEMONはメタルが手に何かを構えてないかを確認して切った。
ムラマサは背中の鞘に入っているし、さっき服の中に入れていた左腕も何も無く外へ出ている。
だが、どらEMONは斬られた。手には何も無いのに。

「人の成長というのは、精神によって成し遂げされる。ありがとう、私は今ッ! 賭けに勝利したのよ」

 メタルの服は黒い。忍者の格好。服が黒かったから気づきにくいが、赤い何かが肩の部分を染めていた。それは、血だった。
そして傷の部分からは刃物、凍牙が飛び出ていた。
 メタルはさっき、左腕を服の中に入れた時に凍牙で肩を貫いたのだ。そして、筋肉を締めることによって凍牙を固定する。
それによって攻撃をしたのだ。
 そして、メタルはムラマサを構える。どらEMONは未だ吹き出ている水の中にいた。水裂を動かそうとしているのが見えた。

だが、それもメタルの計算の内だった。メタルはポケットに入れていた瓶をどらEMONの近くの地面へと投げつけた。
 瓶の中から出た液体は床に染みていく。そして、何か気体を出すようにブクブク言い始めた。

「この床は大理石。今、投げたのは塩酸。どういう事か分かる? 今、二酸化炭素があなたの周りで発生している! 
中毒にはならないとは思うが、あなたは今火を付けれないのよ!」

 メタルはムラマサの切っ先をどらEMONへ向け、踊り始めた。魅惑の舞である。どらEMONの体は動けなくなる。

「チェックメイトね」
 人工太陽は夕日に変わっていた――

 

其の六

 この世には、奇妙な体験談が確かに存在する。それは嘘かもしれない、だが、本当にあったかもしれない。
嘘か、本当かはその当人にしか分からない事だし、都市伝説を個人で判断するなどできるわけが無い。
ただ、今から話すメタルの体験談は実際の出来事である。
 メタルが五歳の時である。メタルは友達と共に空中道路を歩いていた。

その空中道路は歩行者のみが歩ける場所である。

そもそも、二十二世紀の世界の移動手段は『どこでもドア』などの秘密道具や、空中を走る車なので、
ほとんどの道路が歩行者専用手段といっても過言では無い。
 くだらない世間話をしながらメタル達は歩いていた。保護者はその場にいなかった。

そしてだ、『何故か』メタル達の目の前に騎馬隊――
それも、欧州のスラっとしたサラブレッドでは無くずんぐりとした日本の馬――が現れたのだ。

 馬には槍を持ち鎧を着た武士も乗っていたし、それは十人以上いた。騎馬隊は走り出す。子供達は何もできなかった。
馬に関する事故で多いのは落馬だ。馬によっては最高で九十キロメートルものスピードを出す事もある。
だから落ちたら致命傷になってしまうのだ。そんな速い馬に踏まれたら人はどうなるであろうか? 
しかもだ、奴らは車のタイヤよりも硬い蹄を付けているのだ。メタル達は、いとも簡単に踏みつぶされていった。
 その光景は壮絶なものだった。血は飛び散り、子供達の内蔵は破裂した後さらに踏まれて皮も突き破られた。
死ぬ直前、子供達はこの世の地獄を見たであろう。それを偶然目撃した人も、後に「地獄で鬼に拷問される人の様」と言った。
 そんな中、メタルは無傷だった。友達の死体に囲まれながら、ただボーッと座っていた。
まるで、今の騎馬隊が夢で他の事故がその中で起こったかの様に。
 その後も、メタルの周りでは不思議な事件ばかりが起こった。
目撃者がいたりいなかったりもするが、弓隊が周りに現れ、その弓によって周りの人が死んでしまったり、
急に現れた大名と大名の側近達が目の前に現れ斬られたりなどだった。その事故の中でもメタルは無傷だった。
 目撃者がいたり、その時メタルが秘密道具も何も所持していなかった事から、警察はそれを不思議な事故として処理した。
それに、その凄惨な光景は幼い少女にとてつもないダメージを与えていたのだ。
 ある日の事だった。メタルは、倉庫の中の古い木の箱を見つけた。好奇心でそれを開けてみると、巻物が入っているのを見つけた。
開いてみたところ、それが家系図であるとメタルは理解した。紐を解き、開けてみるとそこの一番下にはメタルの名前、
そして風魔小太郎という戦国時代の忍者の名前があった……
 その日から、メタルの周りで奇妙な現象が起きる事は無くなった。メタルはそれを、血統の意味を理解したからだと感じた。
そして彼女は、現在へ至る。自分の忍者という誇り高き血統と、その後死ぬ思いで練習した自己流の技を持って。

 どらEMONは考えた。後ろにある水、前にある二酸化炭素。この状況を使って何か出来ないか、と。
動きは舞で拘束されている。僅かな時間でポケットを探ってみると、発煙筒を発見した。だが、どらEMONは感じる。

これじゃあ駄目だと。使えない、と。
 発煙筒は無害の煙を出す物だ。確かにメタルの舞は見えないようになるが、発煙筒を突破されたら終わりだ。
だからどらEMONはそう思ったのである。
 メタルは段々と近づいていく。どらEMONの本能は時間が無いと告げた。

 
 スネ夫は怯えていた。目の前にいたのは二体のロボット。無表情な、ロボット。
人を殺す以外は土木工事ぐらいしか使い道の無いロボット。ドラえもんみたいに人間臭くないロボット。大昔のSFみたいなロボット。
 中に人がいるというのが分かっていてもスネ夫はそのロボット達が人間が操っているものには見えなかった。
人は銅の部分にいるんだろう、だがその部分は見えない。
 スネ夫が当ったのはジャイアンが戦って肩のマシンガンを撃たれたのと、足を撃たれたのとの二体であった。

スネ夫は手に『空気砲』をはめていたが、撃っていない。ただ、「ママ」「ママ」と言っておびえているだけだった。
 その時だった。二体のロボットがマシンガンを撃った。だが、当らない。スネ夫はそれでさらに怯えた。
そして、ロボットはまたマシンガンを撃つ。当らない。スネ夫はそこで気づいた。
相手がスネ夫を怖がらせて楽しんでいるんだ、という事を。

「このマシンガンの弾を受けてみるかぁ〜? お前はハチの巣みてえに穴だらけになるぜ。
そしてその穴からは血が飛び出してくるんだ」

 ロボットのパイロットはスイッチを切り替えてスネ夫に話しかけた。
 スネ夫は何回か、自分が撃たれるイメージを頭の中で見ていた。
自分で想像したものでさえ怯えているのに、今のパイロットの言葉はさらにスネ夫を怖がらせた。
段々と暮れていく人工太陽もさらにスネ夫を怯えさせた。

「え? ジャスがやられた? あの眼鏡の小僧と女の子にか?」
 そんな中、パイロットの声が聞こえた。さっきからスイッチを切り替えるのを忘れていたのであろう。
会話は赤裸裸に聞こえた。スネ夫は、はっきりとそれを理解した。

 のび太としずちゃんがロボットを倒したのだ。のび太が。いつもいじめていたのび太が。
そして、スネ夫は地平線空間での出来事も思い浮かべる。
 僕だけじゃないか何も動いてないのは―― いつものび太をいじめているのに。いつも金持ちだからって粋がっているのに。
 肝心な時には何もできない。 僕は、誰よりも駄目だ。背が低いとかそういう事じゃあない。

 僕は、動けない。皆みたいに、はっきりとした意思を持って行動が出来ない。ただのハッタリ屋だ。
「ドカン!」
 肩に傷があるロボットの肩に向けて、空気弾が突き刺さる。そのロボットの左腕はその場に落ちた。
「僕は、骨川スネ夫だ!」

 スネ夫はロボットに向かって走りながら叫ぶ。スネ夫は従兄弟のスネ吉の事を思い出していた。ある日の会話だった。
スネ吉はロボットについて語っていた。

 ――「科学的に考えるとだ。ロボットの乗り込む部分はガンダムみたいに胴体がふさわしい。
頭の部分なんて簡単に吹き飛ぶ。一番装甲が厚くできるのは胴体だ。
そしてだ、この部分は外から開けられるようにしなければいけない。中にいるパイロットが電気切れで出れなくなったら困るだろう?
 その場合、何処にボタンを付けるのがふさわしいのか」

「ドカン」
 スネ夫は力を調節する為軽く言う。スネ吉が言ったその場所へと。
足に傷があるロボットのボタンがある筈のその場所へと空気弾は叩き込まれた。
 ガチャリという音がして、パイロット部分は見事に開いた。中にいたのは、普通のおじさんだった。ただの、人間。

「ドカン!」
 パイロットは対応できなかった。空気弾は胴体に当り、パイロットは気絶をした。
スネ夫は、今までこんなに速く走った事があったかと思うぐらい速く走り、でっぱりを掴みながらパイロット部分へ乗り込んだ。
 もう片方のロボットは撃つと相方のロボットが壊れる危険性がある為、移動するくらいしか出来なかった。
そして、左腕が無いロボットが撃てる角度に回り込んだ時にはパイロットは地面に倒れ、パイロット部分が閉まっていた。

「おおおおおおおおおお!」
 スネ夫は叫びながら、マシンガンの絵が書かれたボタンを押す。
精密性は無いが、何発もの弾丸が腕の無いロボットに当った。
カメラ部分は壊れ、腕の無いロボットは花びらが落ちるかの様にその場に倒れた。

「僕は、僕は、パパとママの子供なんだ!」

 

其の七

「地図から、二人が消えた……」
 ロボットの中のパイロット――ナグドラ――は震える声で呟いた。彼は今、ドラえもんと戦っていた。
 運転室はカメラの映像を映すメインモニターと、地図などを映すサブモニターに分かれている。
 そのサブモニターの設定を、ナグドラは仲間のロボットの位置が分かる地図にしていた。
仲間のロボットがいる場所が白い丸になって分かるのだ。そして、その丸が二つ、消えていた。
一つの丸は建物からあまり遠くない所。もう一つの丸が消えた場所にはもう一体、丸が残っていた。

  ちっぽけな。秘密道具や武器も『空気砲』しか持っていないであろう糞ガキどもに、我々のロボットがやられている。
我が軟体防衛軍の。大量生産型だが武力は強い、このロボット達が。
  ナグドラは、ゼクロス・アークウィンドを見本にして、ロボットの扱いを学んだアメリカ人だった。
ゼクロスも、アメリカ人である。だが、ナグドラはゼクロスを尊敬したわけでは無かった。

ゼクロスの腕を学んで、自分のアイデアを取り入れてゼクロスを超えようとしていたのだ。
  さっきからナグドラが戦っているドラえもんは、秘密道具を駆使して戦ってきていた。
その中でもやられなかったのは、ナグドラがロボットを上手く扱ってきたからだった。
 ナグドラは思う。このロボットと、少年達を馬鹿にしてはならないと。ゼクロスがやられたのはどらEMONが強いからだけでは無い。
恐らく、この少年達の援護があったからであろう。ゼクロスは、馬鹿にしていたからやられたのだ。
 マシンガンの弾数は全ての部位のマシンガンを使っても後二分は撃てるとなっていた。
軟体防衛軍の兵士達は基本、このマシンガンを使って攻撃する。効率がいいし、あまりテクがいらないからだ。
ナグドラも最初はマシンガンを使って攻撃をしていた。

 だが、ナグドラは別の手を使うことを決意した。効率の悪い、テクもいる技だった。
「敬意を払わなければやらなきゃあ、いけない。面倒くさがってマシンガンを、使うか? I do not, 
それじゃあジャスや健一の仇を討つことは出来ないんだ」
 ナグドラが決意したのは、人工の一番星が見え始めた時であった……

 
 黒い煙がどらEMONの前に現れた。メタルからどらEMONの体は見えなくなり、どらEMONもメタルの舞を見えなくなる。
どらEMONの体は自由になったのだ。
「それで、解決した気かしら? 通り抜ければ何でも無いのよ」

 人工の夜空の下でムラマサは輝く。メタルは舞をやりながら近づいていった。
 夜は本当の空さながらに星が輝いていた。一等星の星は強く輝いていたし、二等星の星は一等よりも控えめに光っている。
それを見ていると、現実空間のように宇宙から光が来ているんじゃないかという気持ちにもなってくる。
建物の『タイムパトロール』と書かれた看板は星の光に実に合っていた。
このロゴは偽物だが、本当の『タイムパトロール本部』のロゴも夜空に合うようになっている。
 メタルは足音もたてず、だが美しい舞を踊りながらどらEMONを殺す為煙の幕を超えようとしている。どらEMONはそれを感じていながら、冷静な顔つきのままだった。
 どらEMONは口を開く。
「状況を考えているのか? ヒントをやるよ。グロイ死体を見るのはごめんだからな」
 どらEMONは眼鏡の位置を直す。メタルは途端に辺りを見回し始めた。そして、頭の中で考える。
発生する二酸化炭素。黒い煙。夜空。水道管から吹き出す水。ムラマサ。水裂。水素。水素爆発。魅惑の舞。凍牙――

 単語を繰り返していく内に、メタルは気づいた。状況に。そして、動きを止めた。
「おや? 来ないのか?」
「化学反応、ね」
 メタルは悔しげに言う。
 酸性雨、この言葉は誰もが聞いた事があるであろう。その仕組み。二酸化炭素それだけでは、あまり有毒とはいえない。
だが、それに排気ガスの中に含まれる物質が合わされるとそれは有毒ガスとなる。それに水が結びついたもの、それが酸性雨だ。
酸性雨の中では亜硫酸、つまり硫酸などもある。
 メタルはそれがこの状況だと考えた。水、二酸化炭素、排気ガス。全てが揃っている。このまま入るのは限りなく危険だ。
メタルは思う。
 中のどらEMONが『バリヤーポイント』を使っていたのなら、酸性の水から身を守れるし、凍牙を投げても無駄だ。
そもそも、今のメタルにはどらEMONの正確な場所すら分からない。
 メタルの黒装束は、夜になっていくにつれ空間と同化し、パッと見ただけではメタルの顔しか見えない。
どらEMONの白いタイムパトロールの制服は闇の中でよく見えた。
 音は水の噴き出す音と、二酸化炭素が発生するブクブクという音しか聞こえなかった。
それ以外は静かで、遠くからドラえもん達の戦っている音らしきものも聞こえてきていた。
 戦いの夜は更けていく。


 ドラえもんは疲労していた。さっき治療した腕も不安だったし、秘密道具のストックも無くなってきている。
さっきまで軽くあしらっていたようなロボットとはレベルが違うのだ。

 この敵は強い。攻撃しても中々当らない。
当ればちゃんとしたダメージは与えられるが、どんなに強い攻撃をしても当らなければ意味が無いのだ。
 ドラえもんはゲームの戦闘を思い出していた。強い呪文を唱えた時、表示される「ミス!」の文字。
そんな状況を何度も繰り返していた。

「『竜巻ストロー』……」
 ドラえもんは呟きながら取り出した。このストローを吹けば竜巻が現れるというものだった。
思いっきり吹けばかなりの威力になるであろう。
 だが、ドラえもんは次の瞬間それを使う気力を無くした。ナグドラの操るロボットが変形し始めたのだ。
 ガチャガチャと音をたて、姿が変わっていく。変わっているといっても人型じゃ無くなるとかそういう事じゃない。
腕の形が変わっていくのだ。 両腕から現れる長い剣。そして、ロボットの指の先が外れていき、指の部分に空洞が出来る。
そこから弾丸が出そうだというのは誰でも予想できた。

 そして、ロボットから声が出てくる。
「ドラえもん君。君には敬意を表するよ…… だから、最高の手でしとめる」
 ドラえもんは震え、小さく出したつもりの絶望の言葉も夜に響いた――

 

其の八

 ドラえもんは最初、ナグドラが何をやっているか分からなかった。

ナグドラは、腕からの剣を地面に向けたのだ。普通なら、切っ先をドラえもんの方に向けるだろう。
下に向けて上へ上げてドラえもんを真っ二つにするつもりだろうか? 違う。それなら上から振り落とした方が威力もつく。
 真っ白な大理石。壁は近くに無く、ドラえもんは位置を把握する事もできない。

ナグドラと戦い始めた時、それでドラえもんは逃げることを諦めた。

 ドラえもんは『竜巻ストロー』をくわえる。ナグドラの行動を見ながら、ゆっくりと。
ナグドラは前へ行ったり横に行ったりしていた。下手糞なワルツを踊っているようなその姿は滑稽でもあり、不気味にも思えた。
 そして、ある位置で下手糞なワルツは終わった。ナグドラは下に向けた剣を、地面へと突き刺した。
 次の瞬間―― ドラえもんの右腕は吹っ飛んだ。ゼクロスにやられたのと、同じ位置。

カランカランという金属の腕が大理石にぶつかる音が響いた。ドラえもんの右肩からはバチバチという音も聞こえる。
 ドラえもんは何が何だか分からなかった。ただ、必死に対応しただけであった。

 ナグドラが行った攻撃はこうであった。剣を地面に突き刺した。
それにつっかかるようにしてナグドラのロボットの体勢は低くなる。
それを利用して体勢が低いまま地面を蹴り、回転するように足でドラえもんに攻撃したのだ。

ドラえもんは当る瞬間、『竜巻ストロー』を吹くことによって足の軌道を変えた。

それによって何とか当るのを腕に変えられたのであった。
 安心はできない。ドラえもんは今まで何度も乗り越えて来た経験からか、ロボットのシステムからかは分からないが、体を動かした。
そしてナグドラの手から銃弾が発射された。紙一重でドラえもんは交わせた。

 ナグドラは体勢を元に戻そうと素早くロボットを動かす。ドラえもんは息を大きく吸い込み、『竜巻ストロー』を思いっきり吹いた。
竜巻はナグドラのロボットにヒットし、ロボットは無様に倒れた。
「おおおおおお! 食らえ、ロボットォ!」

 ドラえもんはすぐ様『瞬間接着銃』を取り出した。
この銃から発射される物に当ると、ベタベタに地面に接着され動けなくなるものだ。

ナグドラとの戦いにおいて何回も使ったが、全てかわされていた。
だがドラえもんには今なら当てられるという奇妙な確信があった。

 引き金を押すとナグドラの体は見事に接着された。ナグドラは、動けなくなった。
ドラえもんは喜んだ。自分の、勝利だと。
 ナグドラは思う。これは、我慢しなければならない事だと。この地面に伏すというのは我慢しなければならないと。

「ロボット。イカたこは何処に言った? 言ってくれ」
 ドラえもんはナグドラに近づく。その時、ドラえもんはプチッという音を聞いた。
音のした方向を向くと接着部分が腕の剣で切られているというのが分かった。

 逃げようとしても無駄だった。ナグドラは転がった。
ドラえもんの方向へと。ドラえもんには接着剤が付き、体勢を崩して地面にくっ付く。ナグドラは立ち上がった。

接着剤はもうナグドラにはくっ付いていなかった。

「二十二世紀の兵器が二十二世紀のお手伝いロボットの道具に対応できなくてどうなるんだ?」
 ナグドラは剣を構えた。ドラえもんは、死という冷たい言葉を感じた……


 どらEMONは緊張していた。なぜなら、この策が『ハッタリ』だからだ。
無害のガスを出す発煙筒じゃ酸性なんて発生できない。それを分かりきっていて賭けにでたのである。
そして、今のところその賭けは成功している。どらEMONは水によって落ちかけた眼鏡を静かに直した。
 メタルは焦っていた。辺りはもう暗い。もう、『タイムリミット』が迫っているのだ。『タイムリミット』まで後十分だった。
後ろに回ろうとも考えたが、その間に攻撃されてしまうであろう。

 そうやって二人が考えている内に時間はどんどん経っていく。
 『タイムリミット』それは、イカたこの持っている道具――じおすを吹き飛ばした道具――を応用したもので、
設定した時間に人物とその人物が持っているもの、触れているものを自分のところへ来させるというものである。
 メタルは舌打ちを打った。残り五分。

仲間の五人の状況をメタルは確認したが、生き残っているのは三人だけであった。仕方が無い……
「聞こえるか? 生きているものは全員戦いをやめろ! どんな状況でもだ! 今すぐ戻って貴重なものを持て! 

『タイムリミット』が迫っている」
 メタルの言葉は、ロボットの無線機能から流れ出した。戦いは今、終わろうとしていた。

 

其の九

 のび太と静香がどらEMONに再会したのは、目の前に倒れていたロボットが消えてから十分ぐらい経った時だった。
 目の前のロボットが消えたという不可思議な現象と人工太陽が消えた夜という二つの恐怖に怯えながら、
のび太と静香はこの人工空間をさまよっていた。仲間が何処にいるかという手がかりも無く、
何となく建物の方に行ってみようという結論に二人は達したのだ。何となく、では無くちゃんとした理由だったら
そっちの方に光が見えたから、というのもある。そして音のする方に行ってみたらどらEMONに出会ったというわけだ。

 どらEMONの傷は『お医者さんカバン』により治りかけていた。のび太と静香の傷も『お医者さんカバン』で治療していた。
「EMONさん、何でロボットは消えたんでしょう?」

 どらEMONの秘密道具により、三人の周りは明るかった。その明るさの中で静香はさっきから気になっていた事を聞いた。
どらEMONは眼鏡を直して答える。
「分からない。だが、メタルは『タイムリミット』と言っていた。時間になると別空間へ飛ぶようにでもなっているんじゃあないか?」
「別空間? よく分からないな〜」
 その時。機械音。場に緊張が走る。
 のび太は空気砲を構え、どらEMONは水裂で水を斬れる体勢になった。

どらEMONはともかく、のび太はほとんど戦闘の素人だった。今までの冒険の中で成長してきたとはいえ、普通の小学生だった。
だが、今ののび太は違った。今までには無かった何度もの戦闘。それがのび太を戦士にさせていた。
 戦士。のび太は昔、宇宙の殺し屋と決闘した事がある。銃の名手であり、様々な経験を通した冷静な判断を持つ宇宙の殺し屋。
名はギラーミンといった。緊張の中、のび太は勝利した。のび太はこの数日、この時の集中力を持続させていた。
それは戦場の戦士と同じだった。

 だが、数秒もしない内に構える必要は無いと分かった。ロボットから知っている声が聞こえてきたからだ。
「僕だよ、スネ夫だよ! ロボットを乗っ取ったんだ」
 その声が終わった後、コクピット部分が開き、スネ夫が現れた。
 ロボットを奪い取った経緯、自分には何体のロボットが襲って来たか。それぞれが確認し終わった後、四人は移動し始める。
ロボットの中は一人乗り、スペースを上手く使っても二人、何とか乗れるぐらいしかない。
相談しあった結果、女で疲れている静香をそのスペースに乗せることにした。

 どらEMON達は、ロボットについているレーダーを確認した。光っているのはもう無かった。
 何分か歩いていると、ジャイアンが現れた。怪我を少ししているが、それは大したものでは無い。
だが、ジャイアンにしては珍しくボーッと下を見ながら歩いている。
「ジャイアン?」
 のび太が話かけるとジャイアンは正気に戻ったかの様に、どのように戦ったか等を喋り始める。
ジャイアンはロボットと戦ったが、それは強くて倒せなかった、と言う。
 そんな事を言いながら歩いていた時、声が聞こえた。どら声。「助けて」と言っているようだった。
近づいてみると、そこには右腕を失い床に貼付けられていたドラえもんの姿があった。

 右腕はドラえもんから少し離れたところに転がっていて、近くには何かが刺さったような跡があった。
ナグドラとドラえもんの戦闘で付いたものであるが、普通の彼らには想像できなかった。
 ドラえもんを救出し、もう一度自分たちの状況を確認しあった。

「つまり、僕たちは戦っていた。 
 その内、のび太君やスネ夫君は倒したが、ドラえもん君や武君、僕の場合は相手が消えた。『タイムリミット』と言って」
 そこからどらEMONが推測したのは、じおすを何処かへ飛ばした道具を応用したのではないか、という事だった。
じおすを飛ばした奴は何処に行くか、イカたこの発言から考えるとコントロールできない物だと考えられる。
だが、今回のは何処に飛ばすかが指定でき、彼らはイカたこの所へ向かったのでは無いか。

それがどらEMONの考えであった。実際にそれなのだが今の彼らに理解する事はできない。

「と、とりあえず僕達は生き残ったんだよね?」
 スネ夫。
「ああ、生き残ったさ。だが、レリーフはイカたこが持っている。まだ、戦わなければいけない……」
 どらEMONは呟いた。だが、どらEMONは思っていた。今じゃあ追いつけない。レリーフを、止められない、と。
それはその通りかもしれない。今のドラえもん達は何処にイカたこ達がいるかも知らないのだ。
 人工世界の夜は更けていく。静かに、虚しく――

 イカたこ達がいる場所。メタルはここに着いた時、ある事に気づいた。目の前に座っているイカたこも同じ事に気づいた。
人工空間で誰がいるかなどのレーダーは別空間からも見られる。だから気づいたのだ。
今、ロボットに乗っているのが二人しかいない。レーダーでは、三人だったのに。結論は簡単だった。

『ロボットは一体、乗っ取られたのだ』

「とりあえずだ、書類を持ち帰り更に全滅しなかったのは感謝しよう。それにだ、今となってはロボットの一体や二体などどうでもいい」
 イカたこは冷静に言い、立ち上がった。
 この時メタルはイカたこの手首から血が出ていることに気づいた。

血が出ているところをよく見ると、皮の下にボルトの様な、機械のパーツの様なものがあるのが確認できた。

 イカたこはモニターのスイッチを切り替えると、興奮するわけでも無く氷のように冷たく黙っているわけでも無く言った。
「我々、軟体防衛軍の活動は、もうすぐ終了する――」


 イカたこ達が作り出した人工空間の中、ドラえもん一行は戦った。時には血を流し、時には相手を騙し、時には倒れた。

 そんな彼らの姿。まるで狂っているかのようだったかもしれない。
ただの少年少女達が戦っているのを何も知らぬ人が見たら狂っていると思ったかもしれない。

 だが、彼らの『運命』は戦え、と指示していた。だから彼らは戦ったのだ。まるで、踊り狂うかの様に――


石版 第四幕「踊り狂うかの様に」 一時閉幕

 

幕間 「つまらない講釈」

 さあさあ、皆さん。これにて第四幕は一時閉幕でございます。前と同じように肩の力を抜いてリラックスして下さい。
大丈夫です。お客様が全員来るまで、第五幕はまだ始まりません。安心して売店やお手洗いへどうぞ。

 それではつまらない講釈を始めたいと思います。おっと、そこのお客様。落ちついて下さいませ。
続きは今に今に語られるでしょうから。それまで、このつまらない講釈を聞いていて下さいませ。
 第四幕。戦いに次ぐ戦い。圧倒的に不利な状態のドラえもん一行の必死の戦い、この戦いで成長できた者もいるでしょう。
この戦いで敗北した人もいるでしょう。この戦いで何かを知った人もいるでしょう。我らがドラえもん一行は生き残ることができました。

 のび太は静香、未来のお嫁さんを守る為に覚悟を決めて奮闘しました。
今までず〜っと臆病者だったスネ夫も、戦いを始めます。どらEMONは何度も相手、メタルを騙して戦い続けました。

ドラえもんもナグドラと戦いました。そして、ジャイアンも戦ったことでしょう。
 そして、軟体防衛軍。イカたこはこう言いました。

「我々、軟体防衛軍の活動は、もうすぐ終了する――」この言葉の意味は一体何なのでしょうか? 
そして忍者の末裔であるメタル、ゼクロス・アークウィンドと同じような技術を持つナグドラ。そしてミサイル研究所とすずらん。
敵も味方も、役者が揃って来ました。
 軟体防衛軍の目的は、石版に書かれている事を利用して、世界を支配する事です。
その支配とは、テレビアニメの様な支配では無く、世界を平和に導くといいます。

 石版を巡る、二つのグループの戦い。それは光と闇に例えられるでしょう! 
ですが、どちらも自分たちが光だと信じています。闇は相手だと、信じています。

 

皆様方なら、どちらを光に例えますか?

 

 さあさあ、次から始まるのは物語で最も見所がある話。次の幕から始まるこの話。トリモノでございます。
紅白歌合戦でいうスター歌手。サッカーワールドカップで言う決勝戦。この物語が今! 終末に向けて走り出します。

 軟体防衛軍とドラえもん一行は何処で出会うのでしょうか? 
ドラえもん一行は打ち勝つ事ができるのでしょうか? 軟体防衛軍を止める事ができるのでしょうか?

 次の第五幕はクライマックスへの発端の幕になるかと思います。皆様が気になっている謎も、今に今に語られる事でしょう。
 おっとそろそろ時間です。それではトリモノの始まりです。

 誰が死に、誰が生き残るのか。役者達の命をかけた戦いの始まりです。

 それでは、第五幕の開始時刻となりました。皆様、お静かに。一秒たりとも、お見逃しのないように――

 

第五幕「古代からの因縁」

 


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