Nの悲劇
〜私とドラの10の約束〜

 

第13話(最終話) 二人のN 僕らは負け続ける

 

レポーターロボット「えー、現在夜10時47分! 一体、我々はどこへ向かおうとしているのでありましょうか。

            まあ、そんなどうでもいいことは置いておいて――野比狩りも、残り1人となりました。

            まあ、今まで何がありましたかというと、

コミケで逃走したり、罵りあったり、小池さんとその他諸々と乱闘したり、捕まったり、作戦会議したり、ジャイアンと静香ちゃんが敵だったり、
花輪クンを3度撃退したり、出木杉英才と口論になったり、殴ったり撃ったり、のび助が桃太郎侍になったり、何かザンダクロスとか出たり、
負けたり、伊藤翼が誘拐されたり、玉子やドラえもんと再会したり、ネズミーランドで偽の助っ人が現れたり――

             まあ、そんな状況です」

 

 

野比ムナシは、自分の持久力が既に限界だという事に気づいていた。

捕まる。このままでは、捕まる。 野比ムナシの全身から、変な汗が吹き出てきた。

 どうする? アイフル〜〜♪

ムナシは、後ろから迫る捕獲委員達に、呼びかけてみることにした。

 

ムナシ「みんな、聞いてくれよ! おかしいと思わないのかい? お前ら、おかしいと思わねぇのかよ!?

捕獲委員L「うるさい! 俺だって、あんたらの仲間にやられたんだぞ! 」

捕獲委員M「そうよ! 逆ギレもはなはだしいわよ

捕獲委員N「お前らのせいで、俺の結婚式は中止になったんだぞ?」

 

 ムナシは、はっとした。 大統領の、恐ろしい計画の全貌に気づいてしまった。

これは、国民を統一するためだけではなく――国民の憎しみを、僕らに集中させることにあったのか!

 そうすることによって、自分への不満は少しでも和らぐ。

だから敢えて、8月7日に大事な予定のある人だけを集め、その人たちの苛立ちを僕達に向けさせようと――!

 

 というか、このネタはどっか他のフィクション作品で見たことがあるぜ!

 

ムナシは捕獲委員への説得が不可能だと分かると、また走り出した。
しかし気づくと、目の前にはもう一つの捕獲委員の集団があった。

 囲 ま れ た !

 

折角、タダシくんの死を乗り越えたというのに、こんな所で捕まってしまうのか?

どうする、ムナシ? 落ち着いて考えろ――ムナシ!

 

俺の名前は何で、ムナシって名前なんだ? 思い出すんだムナシ。

 

 

ムナシはすぅと息を深く吸い込むと、捕獲委員に向かって言った。

 

ムナシ「あ、ミッキーが居るよ! カーチスの方だけどね!

 

捕獲委員(498名)「……」

 

捕獲委員達は、わぁあと叫ぶと、めいめいにショックガンを乱射した。
 ショックガンの光線がムナシに当たる前に、その光線はすぐ近くに捕獲委員にも当たってしまう事もしばしばあった。

 

ムナシは急に、自分が現実に引き戻されたような気がした。
 誰かが助けてくれると思っていたんだ。 僕は、自分が危なくなった時に――希望的観測に頼りすぎていたんだ。

僕は、ダメな奴だ。

 

ムナシはわけのわからぬうちに、捕獲委員にもみくちゃにされ、意識が完全になくなったときには、ほとんど全裸に近い状態だった。

 

捕獲委員Dは、ヘルメットに付属してあるヘッドホンマイクを取り出した。

捕獲委員D「『野比』の最後の一人、野比ムナシ確保! 」

 

 

捕獲委員達は、手を取り合って喜んだ。やっと、こんなバカバカしい行事から抜け出せる。
 その捕獲委員達の下に、顔面が痣だらけのムナシが横たわっていた。

 

 

 

 

ドドドドドド……

 

 

 

さっきからトラえもんは、釣り竿の動きを止めない。

 ついさっき、釣り針だけを取り出して釣り竿がないことに気づいたトラえもんは、気を取り直して釣り竿を取り出した。
それから、釣り竿の先に針を取り付け、つりを始めた。

 

出木杉英才(以下出木杉)「さっきから、君は一体何をしているんだい?

トラえもん(以下トラ)「え? 知らないんかい? やっぱなあ、勉強ばっかりしてるとそうなるんやな」

出木杉「……」

トラ「これはな、ウワサのエアフィッシィングちゅうもんや。 あのスカイフィッシュも捕まえられるんやでぇ!」

出木杉「……結局、君は現実から目をそむけたんだね」

 

トラ「いいわぁ……この立場。アンタみたいな奴を見とんと、感じるわ。

   嫉妬! それちゅーもんが血になり肉んなり、わての原動力になるんや!

 

出木杉英才は、黙ったまま回転式の銃を、トラえもんに向けつづけている。

 ヒュッと、風が吹いた。

トラ「かかった! わてはさっきまで、現世から離れようとしとった、コイツらの魂を釣り上げていたんや!」

そういいながら、口から泡が出ているがり勉と、首が千切れ掛けているタダシを指さしながら言ったのである。

 

出木杉「それで、なんだい? そんなことをして、事態が好転するの? 」

 

 まさにその時だった。 出木杉の足に、何かがくっついた。 出木杉英才は、自分の足元を見た。 

そこには――ゾンビのように身をのけぞらしながら、魚のようにビチビチと跳ねているタダシの姿があった。

出木杉英才は黙ったまま、がり勉の持っていた回転式の銃を、タダシの眉間にくっつけた。

 

 ドゥン!

 

銃声が、夏休み中のネズミーランド園内で響いた。
 銃口の向こう側にいたタダシはというと――ただ、口の周りの発疹が酷くなっているだけだった。

出木杉「あれ? さっきみたいに死なないのかな?」

 刹那、タダシの手が、ガッチリと出木杉の手を捕まえていた。

出木杉英才は、必至にタダシの血まみれの手を外そうとした。だが、どれだけ力いっぱい引っ張っても、抜けなかった。

出木杉「どういうことだい、これは?」

 

トラえもんは、勝ち誇ったように叫んだ。

 

トラ「だから言ったろ? 『かかった』ってな。 そいつは、今わいが魂を入れなおした『悪魔【デビル】タダシ』や。

   それから、こいつは『ネガティヴがり勉』や」

 

そういうと、トラえもんのすぐ側で、さっき撃たれたばかりのがり勉が起き上がった。

 

ネガティヴがり勉(以下がり)
がり勉? 違うな……下等種族共。 お前らが勉強してないだけだよオ!

 

悪魔【デビル】タダシ(以下タダシ)
俺達が集団の輪に入れないのは、社会のせいだァ

 

出木杉英才は落ち着くように、自らの頬を叩いた。 それから、深呼吸をした。

 

出木杉「SP、もう一度だ」

タダシ「ぐ、グウウウ?」

 ゾンビ化したタダシのすぐ後ろに、今度は違う方のSPが立っていた。

トラ「あかんタダシ、後ろや!(汗」

出木杉「もう遅いですよ」

 

SP「Shat!

 

トラえもんの蘇生(エアフィッシング)も虚しく、悪魔【デビル】タダシは蘇生後の1分30秒後に、儚く散った。

 

 

トラ「た……たーちゃんんん!!orz

トラえもんは愕然とした。折角のエアフィッシングが、無駄だった。 もう、残るのは――がり勉、お前だけだ!

 トラえもんが指示しようとした時、既にその場にネガティヴがり勉はいなかった。

なぜなら、ネガティヴがり勉は――出木杉の方へ向かっていたからだった。

 

トラ「早まるな、がりゆか! ちゃんと、ちゃんと考えて戦わなアカンのやぞ!

 

トラえもんの呼応に対応するように、ネガティヴがり勉は鼻水をたらしながら叫んだ。

 

がり「ヘヘッ! 大丈夫だぜとっち! 俺の腹には、ダイナマイトが13本巻いてある!
    これで、出木杉といえども……木っ端微塵だ!(笑)」

 

出木杉英才は、SP全員を自分の前に集合させた。がり勉は、指を自分のまぶたにくっつけた。
 それからその指を思いっきり上に突き上げた。

モノマネ大作戦。 このモノマネなら、イケる。 どんな奴だろうと――ロボットだろうと、笑わせることができる。

 

がり勉「松阪慶子!」

 

SP達「……」

出木杉「松阪慶子さんのモノマネかい? 似てないねえ」

 

がり勉はこの時初めて、自分が超危機的状況に立たされていると言う事を知った。

 

 

がり勉「まあいいさ……出木杉、俺と一緒に、この世から消えてなくなれェエェェェェェェェ!」

 そう自身満々に叫ぶと、ポケットに手を突っ込んだ。そしてまた、自分がさらなる危機的状況に立たされているということに気づいた。

がり勉「ライターがない。 ライターがない! ライターがない? (泣

 喉がカラカラに渇き、急に尿意を催した。 下のほうで何も出来ずにオロオロしているがり勉を見て、トラえもんは思わず泣きそうになった。

 

トラ「ライターが無いにも関わらず、どうやって火をつけるつもりやったんや、がりゆかァァァ!」

 

出木杉英才は、タダシを2度殺した時と同じように、SPの『行動』を促した。
 その瞬間、SP達の右手が、大きなナタに変貌した。 そして、それをまっすぐに――ネガティヴがり勉に向けた。

 

がり勉「チクショウ……ライター……をくれぇ

 

がり勉の呟きも虚しく、SP達は持っていたナタをそのまま前に突き出した。

 

ドスドスドスドスッ!

 がり勉は、2006年版の『セーラー服と機関銃』の第6話の最後の、剛田英樹のようになった。

 

トラえもんは、力の限り叫んだ。 二人のあまりの常識のなさと、非力さ。

トラ「誰か……誰か、助けてください! 助けてください!(涙 」

 

出木杉「結局、最後は人に頼ろうとするんですか……やれやれ。 ん?」

 出木杉は、おもむろに自分の耳についたヘッドフォンマイクに手を触れた。

トラえもんは、『次にやられるのは自分』だと認識し、パラシュートを出し始めたときだった。

 

出木杉「……分かった。 今、野比の名字の人たちが、全員捕まった。 君たちにもう用は無いから」

 

そういうと、出木杉はSPを引き連れて、あっさりと帰っていった。

 

トラえもんは、今までの自分たちの愚行を振り返った。

 

 

虚無感と、悲愴感が沸き起こった。

 

 

トラ「わいらは……ひょっとすると、もう負けていたんやもしれませんな」

 

 

 

 

 

 

その頃、都内某所

 

野比のび太(以下のび)「いてて……ここはどこかな?」

のび太は、目を覚ました。 ここがどこか、皆目見当がつかなかった。自分の頭の中が、ぐるぐる回っているのが分かる。

なんだか随分と埃っぽい所だな、と思った。

 

その時、自分の目の前に何かが現れたのを知った。 青くて丸っこいのと、なぜかパーマンの仮面をかぶっている人物。

 

のび「き、君たちは誰? ここはどこ?」

 

ドラえもん(以下ドラ)「僕だよ、のび太君

大統領「……」

 のび太にとって、このパーマンの仮面をかぶっている人物が、日本の大統領だということは分かるはずもなかった。

大統領「のびちゃんは、伊藤翼みたいな女の子が好きなのね」

のび「!? アンタ誰? え? 翼ちゃん? 何か、唐突過ぎて、何がなんだかよく分からないんだけど

 

ドラえもんは大統領を制するように、話を始めた。

ドラ「のび太君、今までつらい目にあわせてごめんね。 
   でも、怒らないで話を聞いてよ。 そもそも、大統領とか政府のお知らせとか、あれは全部、作り物なんだよ

のび「え? じゃあ、野比狩りは? 他のみんなは?」

ドラ「あれは、僕らが勝手にもしもボックスを作って、作った世界なんだよ」

のび「!? 」

 

 その時、伊藤翼がSPに連れられてやってきた。

 

伊藤翼(以下翼)「ちょっと、離してよ! 全く意味が分からないんだけど!

のび「あれれ? 何でこんなところに翼ちゃんが?」

翼「気安く呼ばないでよ!」

 そういい終わった後、翼ははっと自分の口に手を当てた。

のび「翼ちゃんなの? 本当に?」

翼「そうよ、これが本当の私よ!( これで満足?」

 伊藤翼は、SPに囲まれながら、グスグスと泣き始めた。

 

ドラ「ちょっとちょっと、やりすぎだよノンちゃん

のび「ノンちゃん? ……え? パーマン1号……君、まさか……」

 

赤い靴の女の子(以下ノンちゃん)
「久しぶりね、のびちゃん。
 まあいいわ、こうして会えたんだから」

 

 

のび「……誰?」

ノンちゃん「え?」

 

のび太が分からなかったのも、無理は無い。

 なぜなら、のび太の目の前に居るノンちゃんは――幼少の頃の可愛い面影は何処にも無かったのだから。
顔面がニキビだらけで、眼鏡をかけているノンちゃん。 のび太の、いつか夢で見たノンちゃんの理想とは、遥かにかけ離れていた。

 

のび「ぼ……僕は認めないぞ! 君はノンちゃんじゃない!

 

ノンちゃん「嘘? 何言ってるののびちゃん? 私、あなたに会うために、一人で日本にまで来たのよ?
       オマケに、あなたの未来をすくってあげたのよ?」

 

しかし、のび太は目の前の女の子が、昔のノンちゃんだということを認めようとは思わなかった。

 嘘だ。 ノンちゃんは、もっと可愛かったはずだ。 こんな、いつか静香ちゃんと一緒に野球していたメンバーの中にいた女子のような顔。
そんな奴が、ノンちゃんのわけがない。

 

のび太は、ドラえもんの首輪をつかんだ。

ドラ「のび太君……とりあえず、僕達の話を聞いてくれない?」

のび「ドラえもんだって、ドラえもんだっておかしいよ! 僕達がどれほど苦しんだのか、分かってるの?

    ドラえもん達のせいで、みんなみんな、どれほど苦しんだ事か!(怒)」

ドラえもんはのび太を宥めるように言った。

ドラ「 こんなことになったのは……全ての始まりは、7月19日だったんだ」

 

7月19日

BINGO「あー……ちょーだるい。 頭痛い。夏休み前だってのに、ったく……」

 帰宅途中のBINGO少年に、ある女の子が話し掛けてきた。

?「あのー……すみません」

BINGO「え? 何ですか?」

ノンちゃん「この辺に、野比さんというお宅があるって聞いたんですけど……知りませんか?」

BINGO「え? んーとですね……。 この辺じゃないと思いますよ。 もっと西、練馬区の方です」

ノンちゃん「あ、ありがとうございました」

 そう言うと、その女の子は、そそくさと立ち去った。

BINGO「変な人だったなあ……。 そういえばあの人、プロアクティブ使ったほうがいいと思うけどなあ」

 こうして、来日したばかりのノンちゃんは無事に野比家まで辿り着いたが……。

『ピン・・ポーン』

 玄関のインターホンを押したが、誰も出てきそうな様子は無い。 

諦めて出直そうとした矢先、そこに――22世紀の未来の猫型ロボットがやってきた。

ドラ「何か、家に用ですか?」

ノンちゃん「いや……えーと……私……お宅ののび太さんの友達なんです」」

ドラ「へぇ、そうなんですか。 そんな所に居ないで、のび太君が来るまで、どうぞ中へ」

ノンちゃん「いえ、その……はい、お邪魔します」

野比家一階の居間。 ドラえもんは、ノンちゃんにお茶をついだ。

ドラ「どうぞ、タイのお茶ですが」

ノンちゃん「いえいえ、お構いなく」

 しばらく、沈黙が流れた。

ドラ「あの……失礼ですけど」

ノンちゃん「はい、なんでしょう」

ドラ「あなた、本当にノンちゃんですよね? あの、赤い靴をはいていた……」

ノンちゃん「え、何で、何でそんなこと……」

ドラ「いや、ちょっと野暮用で。 でも、ノンちゃんが訪ねてきてくれたって知ったら、のび太君喜ぶよ」

ノンちゃん「は、はい……」

ドラ「何か、話の間が持たないんで、タイムテレビでも見ます?(汗」

ノンちゃん「は、はい……」

 この時ドラえもんは、なぜ自分がタイムテレビを出したのか、理由がわからなかった。

しかし、深くは考えない事にした。

ドラ「えーと……このテレビは……未来と過去が見れるんですよ」

ノンちゃん「そうなんですか」

ドラ「とりあえず、見ますか。 何か、見たいのありますか?」

ノンちゃんは、クチャクチャと口を鳴らした。

ノンちゃん「じゃあ……のびちゃんの結婚式をお願いします」

ドラ「!? え……?」

ノンちゃん「いいですよね?」

ドラ「 (うーん……のび太君は静香ちゃんと結婚することになってるんだけどな)」

ノンちゃん「お願いします」

ドラ「ええ……まあ、見ます?」

 しかし、ドラえもんとノンちゃんが見たのは、のび太と静香が結婚式をしている映像ではなかった。

『元アイドル伊藤翼と、一般人の男性「野比のび太」結婚』

その映像は、確かにアイドル『伊藤翼』と野比のび太が結婚しているという報道だった。

ドラ「何だ……これ……?」

ノンちゃん「そう……のびちゃんはね、本当は……別の人と結婚する予定だった……そうでしょ?」

 ドラえもんは、はっとノンちゃんを見た。 ノンちゃんの顔は、さっきよりも腫れ上がっていた。

ドラ「え? ノンちゃん、このこと知ってたの?」

ノンちゃん「ええ。 私の叔父は、『未来を予知する機械』を開発したの。 私は、実験中にこのことを知ったのよ」

ドラ「『未来を予知する機械』って……何?」

ノンちゃん「そんなことはどうでもいいじゃない。 どうして、のびちゃんの未来が変わったか、分かる?」

ドラ「ううん。 どうして、あのドジでまぬけなのび太君が……翼ちゃんなんかと結婚できたんだ?」

ノンちゃん「私の叔父の機械によると、のびちゃんと伊藤翼は……8月7日に、初めて恋に落ちるのよ」

ドラ「な、なんだってェエェェェェ!!??」

ノンちゃん「嘘じゃないわ。 もし私の叔父の機械が正しければ……あなたはさっき、『ドラ焼き』を3個買ったはずよ」

ドラえもんは、四次元ポケットの中に入れたドラ焼きを、チラッと見た。

ドラ「……嘘じゃないなら、のび太君は――伊藤翼ちゃんと結婚しちゃうの?」

ノンちゃん「そうなるの。 ドラえもん君……私にいい考えがあるの。 これだったら、のびちゃんが、伊藤翼と結婚しないで済むわ」

ドラ「うん。 僕も、何とか静香ちゃんと結婚させないと……」

ノンちゃん「それでね。 8月7日、伊藤翼とのびちゃんを、絶対に会わせないようにしなきゃあいけないのよ。
       つまり――伊藤翼と、のびちゃんを完全に引き離せばいいのよ」

 

 

ドラ「というわけで、僕はノンちゃんの『リアル鬼ごっこっぽく、野比のび太君を保護しよう』という計画に乗ったんだ」

のび「……!? いや、おかしいでしょ完全に! 何で、僕と翼ちゃんを結婚させないためだけに、『もしもボックス』を使う必要あったの?

    何で、もしもボックスで日本を変えないといけなかったのさ? 何で、僕達が追い回されないといけなかったのさ?

    どうして、どうして……!」

 

ノンちゃん「のびちゃん。 私はね、のびちゃんに強い男になって欲しかったのよ。

       だから、今回のことは――私がのびちゃんと結婚しても、将来大丈夫なのか、テストしてたのよ

 

野比のび太は、わなわなと振るえた。

 

のび「て……テスト? 結婚?

ノンちゃん「そうよ、だから、私、こんな姿になってまで……」

 そういいながら、白い手袋を脱ごうとした。 その時だった。

 

のび「ふざけないでよ! 僕達、僕達……
  そんな糞どうでもいいことの為に、
 一日を無駄にしたの?

 

ドラ「まあまあ、落ち着いてよ。 もうゲームは終わったんだから」

ノンちゃん「落ち着いて、のびちゃん」

 

翼「ねえ……さっきから聞いてれば……私と、この子が結婚するって言ってるの?

  ありえないわよそんなの。 A・O・Nが復活するぐらい有り得ないわよ

 

ドラ「それは、作者に失礼だと思うけど……」

ノンちゃん「伊藤翼は、自粛しなさいよ。 のびちゃんをたぶらかして……例えお釈迦様や仏様が許したって、私が許さないんだから!

 

のび「ちょっと待ってよ、君はノンちゃんじゃないでしょ! ノンちゃんが、ハリセンボンのやせてる方の顔なんかしてるわけないじゃん!

 

ノンちゃん「ガーーーーーーン! 」

ノンちゃんは、がっくりと肩を落とした。同時に、パーマン1号の仮面が取れて、ガシャンと音がした。

 

翼「私ね、こんなことしている場合じゃないのよ。 映画の撮影があるんだから」

そういいながら、SPの手をどけた時だった。

 伊藤翼は、全身に違和感を感じた。誰かが、私を抑えている――!

 

ドラえもんとのび太は、思わず手を繋いでしまった。

 ノンちゃんが、なぜか伊藤翼を羽交い絞めにして、彼女のこめかみに銃口を突きつけていた。

 

ドラ「どういうことなの、ノンちゃん?」

のび「のんたん! あっ間違えた、ノンちゃん、落ち着いてよ

ノンちゃん「ダメよ、誰も近づかないで。 のびちゃん、私のこと嫌いになっちゃったの?」

のび「ご、ごめんよノンちゃん、言いすぎたよ!」

 一方、伊藤翼はほとんど泣きそうになっていた。

翼「もう……酷い……私……なんでこんな目に

ノンちゃん「黙って! のびちゃん、私のこと好き?

 

のび太は、言葉に詰った。
ここで、『嫌いです』といえば、間違いなくノンちゃんはヤケを起こして、翼ちゃんを撃ち殺してしまうかもしれない。

ドラ「のび太君……」

 

のび「ドラえもん、君が責任を取ってよ! 」

ドラ「僕!? ここで僕に振るの?」

のび「そりゃあそうでしょう! だって、君のせいでこんなことになったんだから!

ドラ「そ、そりゃあそうだけどさあ(泣」

 

 伊藤翼は、既に泣き始めていた。

翼「うっ……うっ」

ノンちゃん「のびちゃん、ねえのびちゃん」

 

ドラ「SPさえ動けばいいんだけど……残念ながら、かげながらも時間切れのようなんだ

のび「というか、今思ったんだけど、かげながらって設定おかしくない? かげながらって、ボディーガードでしょ?
    なのに、勝手に動いてるんだけど。 しかも、目に見えるから、もう影じゃないよね」

ドラ「ああ、かげながらは一応かげながらだけど、『自由に動けるかげながら』なんだよ」

のび「最後までご都合主義なんだね、グスッ

ノンちゃん「……そう、分かったわ」

 

のび「早まるな、ノンちゃん!」

のび太が、ノンちゃんに駆け寄ろうとした時――

 

 

 

その時、奴は現れた。

 どこかの扉が開いた。 そこに、全員の視線が一斉に注がれた。三段リーゼントの、あの男。

 

 

骨川スネ夫(以下スネ)

「止めろォオオオオ!!
 翼ちゃんを離せ!
 離さないと、伊藤翼ファンクラブ
会員番号000007の僕が黙っていないぞ!」

 

のび「!?」

 

 

ノンちゃんはこの時、スネ夫の顔の認識をしていた。 彼は一体、誰だっただろうか、と。

スネ「あれ? のび太? 何でこんな所に……まあいいや。 おい、そこのブス! 翼ちゃんを離せ!」

ノンちゃん「ぶ……ブスゥ? 」

のび「スネ夫……僕も、そう思ってたよ」

ノンちゃん「嘘でしょ? のびちゃんも……そんなこと思ってたの?」

 ノンちゃんのニキビの頬に、鼻水やら汗やら変な汁がくっついていた。

ドラ「まずいよ、これ以上刺激したら、本当に……

 

ノンちゃん「私……ただ……のびちゃんに会いたかっただけなのに……酷い」

スネ「君の感情のおかげで、僕達は一日を無駄にしたんだぞ?

ドラえもんは、黙ったまま電池切れのかげながら(改良版)の片づけをした。

 

ドラ「ノンちゃん……もう、翼ちゃんとの結婚は止めたんだからさ。もう……帰ろうよ

 

のび「え? ドラえもん、普通に帰るつもり?」

 のび太はドラえもんの『帰ろう発言』に、少し驚いた。

ノンちゃん「……のびちゃん。 私、きれい?」

 

スネ「口裂け女かよ」

のび「ノンちゃん……プロアクティブをお勧めするよ!

ノンちゃん「……ありがとう、のびちゃん」

 

ドラ「とりあえず、僕達はもしもボックスで、日本を普通の日本に戻しておくよ

のび「ドラえもん……何か言うことないの?」

ドラ「え?何が?」

のび「僕に、全然謝ってないじゃない!(怒)」

ドラ「ああ、ごめんごめん。 その話は後で聞くよ」

のび「後っていつ? ちゃんとやるんだろうね?」

ドラ「うん……近いうちにね!」

 

 骨川スネ夫は、泣き止んだ伊藤翼の肩にそっと触れた。

 

スネ「翼ちゃん……良かったら、僕のビーチパーティーに来ないかい?

翼「ありがとう。 でも、仕事があるから。 気持ちだけ受け取っておくわ

スネ「あ、うん……。仕事、頑張ってね」

 

 埃っぽい部屋に取り残されたのび太とスネ夫は、スクラムの体勢に入った。

 

スネ「のび太……」

のび「スネ夫……」

 

のび太とスネ夫は、涙を流しながら叫んだ。

 

 

のび&スネ
寝るぞ―――――――!

 

午後10時56分 最後の一人「野比ムナシ」確保完了 及び 第1回名字狩り終了

午後11時57分 『仮想日本国』終了

(第1回名字狩り推進委員会メインコンピュータより)

 

 

 

 

 

キャスト

 

ドラえもん

野比のび太

源静香

剛田武

骨川スネ夫

 

出木杉英才

野比のび助

野比玉子

先生

ジャイ子

安雄

はる夫

 

ムナシ

のび郎

のび郎の妻

のび郎の息子1

のび郎の息子2

のび郎の娘

弟1(現代の生活を追及した)

弟2(柿を食べたいとせがんだ)

弟2の妻

 

セルフ仮面(のびる)

ガッコー仮面(ノビスケの息子)

フクロマン(未来ののび太)

がり勉

タダシくん

トラえもん

 

小池さん

クラッシャー大岩

茂手モテ夫

神成さん

ミズエ

レポーターロボット

月形まる代

花賀さき子

ぼた子

ぼた子の親戚の女の子

ムス子

SP(人間の方)

隣のおじさん

近所の人

近所の人の知り合い

近所の人の知り合いの知り合い

近所の人の知り合いの知り合いの知り合い

近所の人の知り合いの知り合いの知り合いの知り合い

近所の人の知り合いの知り合いの知り合いの知り合いの知り合い

近所の人の知り合いの知り合いの知り合いの知り合いの知り合いの知り合い

 

捕獲委員A(警察官)

捕獲委員B(上と同じ)

捕獲委員C(美術館の警備員)

捕獲委員D(上と同じ)

捕獲委員E(上と同じ)

捕獲委員F(運送業者)

捕獲委員G(中学校教師)

捕獲委員H(インディーズミュージシャン)

捕獲委員I(国家公務員)

捕獲委員J(某美大女子大生)

捕獲委員K(上に同じ)

捕獲委員L(とび職)

捕獲委員M(書店店員)

捕獲委員N(デパート店員)

捕獲委員O(ファーストフード店の店員)

捕獲委員P(上と同じ)

捕獲委員Q(大手商社の社員)

捕獲委員R(新聞記者)

捕獲委員S(薬局店員)

捕獲委員T(元プロボクサー)

捕獲委員U(洋品店店員)

捕獲委員V(フリーター)

捕獲委員W(自衛官)

捕獲委員X(電気量販店店員)

捕獲委員Y(喫茶店店員)

捕獲委員Z(上に同じ)

 

中野のどっかのまんだらけの店員

中野のどっかのまんだらけの店長

NHKのキャスター

ラブ○テルの受付の人

老人

コミケに来ていた客

その他エキストラ約7000人

 

ミクロス

ザンダクロス

スネ吉

 

花輪クン(特別出演)

ヒデじい(特別出演)

BINGOさん(特別出演)

 

伊藤翼

 

大統領=ノンちゃん(赤い靴の女の子)

 

 

ロケ地

○×小学校

練馬の美術館

群馬の森林公園

お台場の森林公園

茨城のファミリーレストラン

茨城のトイザラ○

茨城の廃工場

お台場の有明

鶯谷のラブ○テル

千葉のコンビニ

松の湯

東京ディズニーランド

神奈川の廃ビル

神奈川県のどっかのビーチ

 

参考資料

Wikipedia

Yahoo!地図

(敬称略)

 

ひみつ道具(改造含む)

ヘソリンガス

愛のムチ

ドリームガン

ショックガン

どこでもドア

タケコプター

声カタマリン

悪魔のパスポート

水圧銃

ワスレバット

石ころ帽子

チーターローション

ちく電スーツ

コンク・フード(チンジャオロース風味)

催眠ガス

真水ストロー

何か発信機つけた銃(弾は2発のみ)

とりよせバッグ

防弾チョッキみたいの

こけおどし手投げ弾

瞬間接着銃

空気ピストル

着せ替えカメラ

進路アドバイザー

ガンジョウ

睡眠銃

無敵ホコ

タテ全自動式

材質変換機

キューピッドの矢

表情コントローラー

グルメテーブルかけ

睡眠圧縮剤

壁紙ハウス

月のツキ

海底探検ごっこ(エラ・チューブ 深海クリーム 快速シューズ)

かべかけテレビ

天地逆転オイル

必ず当たるゴムパチンコ

名刀電光丸

バショー扇

秘密書類焼き捨て銃

ショックライフル

チャンピオングローブ

超スーパー風船ガム

フワフワおび

タンマ・ウォッチ

ゴルゴンの首

時限バカ弾

80年代の不法電波発射機

ハツメイカー

アニメ箱

相手ストッパー

ピーヒョロロープ

本物図鑑

瞬間リターンメダル

タイムフロシキ

千年バズーカ

迷子探し機『ご飯だよー』

ペロのお墨付き釣り竿

もしもボックス

かげながら

 

 

主題歌

『背景が白だと読みづらい』

作詞作曲 じおす 編曲 高田さん

 

挿入歌

『悲劇は億千万』

※当然ながら、『思い出は億千万』のパロディです 本当にすみませんm(__)m

 

元ネタ 山田悠介『リアル鬼ごっこ』 その他のメディア作品、時事ネタ

 

製作 じおす

 

 

 

 

 

 

小池さんは、病院で友人からのお見舞いを受けている最中。

友人の粟生井さんが一言。

 

小池君のこと好きかも

 

小池さんは、少し微笑んだ。

 

しかしその後、もう一つの声が聞えた。

 

って……総務の美加ちゃん

 

 

 

 

 

 

 

 


 

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