Nの悲劇
〜私とドラの10の約束〜
キャラクター設定(今さら
政府側(追う者達)
ドラえもん
言わずと知れた猫型ロボット。政府側の方針にのっとる。捕獲委員の一人。
捕獲委員A〜Z
全国から無作為(表面上)で選ばれた人々。 名字が野比の人を追い回す役割。
骨川スネ夫
マザコンであり、家はちょっとお金持ち。伊藤翼のファンクラブの会員。趣味は広く浅い。
剛田武
ジャイアンと呼ばれ、ガキ大将と畏れられている。 が、今回はあまり出番なし。
源静香
笑えないギャグをよく言う。 クラス1のマドンナ。
出木杉英才
裏の顔は、捕獲委員長。キレると凶暴になる。格調高いクラシックからヘビーなメタルになったりならなかったり。
クラッシャー大岩
今から考えるとあのときが……、ぼくの運命の大きな別れ道でしたね。 という名言を残した男。
ラーメン好きな小池さん
ラーメン好き。 やる気マンマン。
茂手モテ夫
原作では茂手もて夫。 あえてカタカナ。同人誌の編集長を務める。
神成さん
盆栽いじりが趣味。剣道5段。
ミズエ
神成さんの親戚の孫。お嬢様。
レポーターロボット
解説。煽ったりする。
月形まる代
キャラなし。
花賀さき子
キャラなし。
ぼた子
暴力沙汰の事件を三度起こす。おいしいお菓子とおしい料理が不得意。
ぼた子の親戚の女の子
ぼた子の親戚。 のび太が惚れたことがある。
ムス子
表情が変わらない。静香ちゃんのちょっとした知り合い。
スネ吉
スネ夫のいとこ。ラジコンマニア。技術力だけでなく、操作もすごい。
ミクロス
スネ夫のラジコンから派生した。無駄にカタコト。
ザンダクロス
ジュド。 鉄人兵団好きから、リルルと並んで絶大な人気を誇る。
花輪クン
清水に住んでるあの人。スネ夫との相違点は上品であること。
ヒデじい
花輪の執事。
大統領
第125代大統領。N。Dではない。
野比一族(追われる者達)
野比のび太
主人公。 全力坂ばりの全力少年っぷりをみせる。
野比のび助
のび太の父親。優先順位を決められないという欠点が。
野比玉子
のび太の母親。眼鏡を外すと美人になる。
ムナシ
貧乏俳優。俳優一本の活動をするために、色々バイトをした。
のび郎
家族が居る。世間体を気にするあまり、家族に対しては厳しい態度をとってしまう。
弟(柿を食べたいとせがんだ)
妻と娘が居る。 温和な性格だが、キレるとすごい。
弟(現代人の生き方を追求する)
借金が多い。独身。野比家の中で、もっともまともな性格。
助っ人
セルフ仮面
野比を助けるため、ドラえもんに依頼された助っ人の一人。空を飛べる。
ガッコー仮面
『文』のロゴが入った覆面をつけている。 運動能力・判断力に優れている。
フクロマン
フクロウをモチーフとしたフクロマンスーツに身を包んでいる。飛べる。
ガリ勉
裏の助っ人。数学の達人。
タダシくん
裏の助っ人。謝罪の達人。
トラえもん
アニメオリジナルキャラクター。裏の助っ人。嫉妬の達人。
その他
先生
のび太の先生。声優が七回も変わっている。のび太を追いかけなかった一人。
ジャイ子
ジャイアンの妹。のび太との間にLOVEが生まれそうになる。のび太を追いかけなかった一人。
伊藤翼
重要な人物だったりする。 アイドル上がりの女優と揶揄されることに苛立ちを覚える。
第11話 最終回直前SP!20行拡大版!
最後の1人を捕らえよ! 時間よ時間、野比に力を!
言う事は何も無い、貴様には分かるはずだ……。抗っても無駄なことを。
『ドラえもんは、殺戮兵器なんかじゃないよ』
殺戮はしないけど、間接的には殺しちゃう!?
空地での死闘! 仕事をしない放送委員会。 止まぬ怒号。
決戦はネズミーランドで!
これだけは言っておく……物語が、いつもハッピーエンドとは限らない……。
レポーターロボットより
野比のび太一行はラブ○テルを追い出された後、通報されたとは知らずに歩きつづけていた。
しかし、何度も赤いヘルメットをかぶった人をちらほらと見かけた。そのたびに、物陰に何度も隠れた。
野比のび助は、長い間運動をしていなかったため、足の筋肉の疲労がピークにきていた。野比のび太も同じだった。
野比のび太(以下のび)「ねえパパ、僕達どこ向かってるの?」
野比のび助(以下のび助)「そうだなあ……なんか、真っ直ぐ家の方向に向かって歩いているような気もするがな」
のび「気のせいっていうか、もう真っ直ぐ家に向かってるような気がするんだけど……」
そういいながら、今隠れている青いポリバケツから顔を出したときだった。
のび「ん……あれ、ママ?」
野比のび太の隠れていたポリバケツの前に、人が立っていた。――のび太は久しぶりに、のび助にとっては数時間ぶりに目にした、
野比玉子であった。
野比玉子(以下玉子)「気をつけて、まだこの辺に鬼が居る!」
玉子は、ぜいぜいと息をしながら話を続けた。
玉子「早く! 」
のび「鬼神?」
のび助「鬼って……玉子? どうしてここに……?」
玉子「とりあえず、隠れましょう」
のび太とのび助は、顔を見合わせた。
十代の少年少女、又は大きなお友達をとりこにしたアイドル(最近は女優業多し)、伊藤翼は、重いまぶたを開けた。
伊藤翼(以下翼)「……?ここは……どこなの?」
翼の目の前に広がっていたのは、紺色だった。自分はなぜか、知らない所に閉じ込められている。
どうして? スタジオで撮影してて……それから……何があったの?
そのとき、後ろから声がした。
?「伊藤翼……だな?」
翼「だ、誰!?」
?「第125代大統領……だが、それが何か?」
明らかに加工されたような声だった。振り向いた先、そこには全身をダークスーツに纏い、パーマンの仮面をつけている人が立っていた。
もちろん、そいつが誰で、何者であるかは伊藤翼には想像もつかなかっただろう。
翼「だ、誰よ! 誰なのよ!? ここはどこ? 早く、私をここから出して!」
大統領「おいおい、貴様はそんな性格なのか? テレビでのお嬢様キャラとは、ほど遠いようだが」
翼「ッ〜〜! な、何よ。そういうものを、あんた達が望んでたんでしょう? そんなキャラクターを、あんた達が望んだだけでしょう?」
大統領「あいわかった……おい、ビデオ止めろ!」
翼は、はっと大統領の指さしたほうを見た。 いつの間にか、黒服の男がビデオカメラを回していた。
伊藤翼は、危機感を募らせた。今、自分の思いの丈が漏れた。
もし、今の発言をビデオで撮られていたとしたら――それを、マスコミに流されたとしたら――!
翼「ま、まさか……その映像……!? 待ちなさいよ、私が一体何したって言うのよ(怒)」
翼は、思わずSPに向かって走り出していた。
大統領「……! 貴様が蒔いた種だよ、伊藤!」
大統領はショックガンを取り出すと、伊藤翼の腹部を発砲した。翼は、為す術も無く倒れた。
大統領「おい、連れて行け……!」
ビデオカメラを回していたSPは、ビデオカメラの電源を切ると、伊藤翼に駆け寄った。
大統領はショックガンをホルスターにしまうと、ニヤリと笑った。
大統領「さあ、いよいよフィナーレ……」
野比のび太とのび助は、玉子の先導によりゆっくりと野比家に歩いていった。
練馬の住宅街は、予想外に静かだった。 そのおかげもあってか、ポリバケツから離れてからは、人っ一人会っていない。
野比家の前に、また野比の名字の人が戻ってくると考えているのか、家の周りには人が十人ほど居た。
その中には野比家の隣に住んでいたおじさんに、安雄にはる夫とその他大勢が居た。
安雄はなぜか虫取り網を持っていた。はる夫は、ふがしをほおばっていた。
というわけで、急遽松の湯に向かった。 夜9時を過ぎているのか、人は居なかった。
とりあえず、松の湯の敷居内の何かパラソルがついたテーブルに座り、ママ持参のカップラーメン3個分と魔法瓶をひろげた。
野比家の食卓は、伊東家の食卓ほど明るくなかった。むしろ、葬式の雰囲気をかもし出していた。
それもそのはず、離婚した夫婦が揃って、なぜかカップラーメンを食べているのだから。そして、その一人息子はひたすら爪を噛んでいた。
のび「(うっわぁ、何この雰囲気。 え?確かパパとママは離婚したって言ってたんじゃなかったけ?)」
のび助「(空色デイズが頭に流れてきた……思考回路が混乱しているな……)」
玉子「……私、あれからずっと考えたの……」
玉子は『赤いきつね』のスープをかき回しながら言った。のび助は、ピタリと箸を止めた。
のび助「……何だい?」
玉子「私、本当にどうかしてたんだわ……怖かったの。 貴方達とこれからも生活できなくなるのが……
ならいっそ、私から去ったほうがいいんじゃないかって思った。 でも、違うわね……私は怖かっただけ。
死ぬのが、ただ怖かったのね。 捕まって、死ぬのが嫌だったのよ。 だから、みんなを……」
のび助は、カップラーメンの最後のスープを飲み干した。
のび助「もういい! 何も言うな、玉子…… 悪いのは全部おゲポッ! なんだから 」
のび「あれ? 今ゲップしなかった?」
玉子は涙を拭くように、両手で目を覆った。のび助は、玉子が気づいてないかどうか確かめるのに必死だった。
のび助「いや、あれだよ、あれ(滝汗 軽いジョークだよ。 軽部真一のモノマネやるよ、あれだったら」
玉子「ううん……貴方達って、本当に優しいのね。 私、名字まで変えて、あなたまで通報したのに……」
のび「大丈夫だよ、ママ! もう、8月7日も終わりだよ……。だから、明日にまた、パパと再婚してくれない?」
玉子「そうね、うん……。ありがとう、のび太。 ごめんね。あなたの誕生日なのに、何もしてあげられなくて」
のび太はカップラーメンを机におくと、都会のよどんだ空に向かって、大声で叫んだ。
のび「僕は、パパとママが大好きで〜す!」
のび助「バカッ! 大声出したら、気づかれ……ッ!」
のび太の突然の家族LOVELOVE宣言に、のび助は驚き、玉子は微笑んだ。
のび「えへへ……ママ、ご馳走様でした」
玉子「いいのよ……私が出来る事なんて、これぐらいだもの」
そのときだった。懐中電灯の光が、野比一家を捉えた。のび太が目を向けた先、木の板塀に誰かが登っているのが見えた。
のび太の目が、大きく見開いた。
安雄「おい、はる夫いたぞ! やっぱりのび太だ!」
安雄が松の湯の塀に身を乗り出していた。続いて、はる夫が塀に必死に登ろうとしているのが見えた。
しかし体が重いのか、塀には手がくっついているようにしか見えない。
はる夫「よし、やっぱりのび太だ。 楽勝だぞ! 安雄、捕まえろ!」
安雄「あいあいさー!」
安雄は奇妙な雄叫びをあげると、野比一家に向かって走り出した。
のび助「だから、大声を出すなと言っただろう!(泣 早く逃げるぞ!」
のび「ええ? もう逃げるの? 」
のび助はスニーカーの紐を調えて、玉子に礼を言った。
のび助「ありがとう、玉子。 もし、僕達が逃げ切れたら……結婚しよう」
玉子「あなた……(恥」
その刹那、構わずに安雄は息子であるのび太にタックルをした。
安雄「のび太、つ〜かまえた!」
のび太は、遂に安雄に押さえ込まれた。顔面が思いっきり地面にあたり、雑草がブチブチとちぎれた。
のび「パパぁ! 助けてぇ」
のび太は主人公らしかぬ、情けない声を上げた。安雄は虫取り網を、のび太の頭にかぶせた。
安雄「おい、100万だぞ100万♪ はる夫、早くガムテープ持ってこい! ……ん?はる夫?」
はる夫は、なぜかパラソルのあった椅子に座り込んでいた。そして、玉子の持っていたカップラーメンのストックを試食していた。
玉子は、のび太たちを逃がすために、はる夫をカップラーメンの渦に巻き込んだのだった。
玉子はにやりと笑い、安雄を見ながら言った。
玉子「まだまだいっぱいありますからねえ(笑)」
はる夫は満面の笑みで答えた。
はる夫「はい、ありがとうございます! 今ならギャル曽根に勝てる気がします!(笑)」
安雄は虫取り網のネットの淵の部分を、のび太の鼻に詰め込みながら言った。
安雄「お前って奴は……こんな時にも、食うことしか考えてないんだな……グスッ」
のび助「食欲は、人間の三大欲求の一つだからね」
安雄「え…?」
いい大人が、子どもの頬を叩いた。安雄は、一瞬何が起こったのか分からなかった。
のび助は、虫取り網が頭にはまったままの息子を抱えると、松の湯の庭の裏口に向かって走り出した。
安雄は歯噛みした。
安雄「くそう、なんか逃げられた! 親父にも殴られた事ないのに(怒)」
安雄は、後を追おうとしたが――しかし、何か背中に熱いものを感じた。すぐに、それがお湯だとわかった。
自分は、背後から熱湯をかけられた。
安雄「あっつうう!(泣 ちょ、本ッ当に熱いから!」
安雄は思わず、その場にしゃがみこんでしまった。
玉子は、お湯の入っていた魔法瓶を振るいながら呟いた。
玉子「ここでみんな捕まったら、誰が地球を守るのよ……!」
はる夫「安雄、大丈夫か? まあ死なないから、大丈夫だよ! 俺なんて赤ちゃんの時、ラーメンスープの中に入れられたことがあったぜ!
後、お母さん。 地球っすか、いいっすねえ。 2代目美夜子さんのセリフですよね、分かります。
それから、カップラーメン、おかわりくれませんか?」
ガンッ!
完全に目的を忘れたはる夫の頭に、中身が空の魔法瓶が炸裂した。玉子は、ゆっくりと魔法瓶をはる夫の頭から離した。
玉子「頑張りなさい……2人とも」
はる夫の頭からゆるゆると血がこぼれだした時、その重い体は、イスからゆっくりと崩れ落ちた。
二人は全力疾走で松の湯を離れたものの、野比家にまた戻ってきてしまった。
そこには、安雄とはる夫以外にも、野比家の隣に住んでいたおじさんを始め、後7人くらいがたむろしていた。
隣のおじさん「んん? お前らはまさか……!?」
のび「そう、コント赤信号です!」
のび助「よしなさいよ! ……ってバカ、早く逃げるぞ」
のび助は思わず突っ込んでしまった。それも、偉大なツービートのきよし師匠のツッこみで。
のび「バカはどっちだ!(原作のギラーミン風)」
隣のおじさん「お前ら二人ともバカだ!(苦笑) まさか本当に、のこのこ家に戻ってくるとはなあ」
近所の人「大体、コント赤信号じゃなくて、『よしなさいよ』はツービートじゃろがい!(笑)」
のび「凄い! じゃろがいって、何だよその語尾! ゴリエ?松浦ゴリエ?」
近所の人「バカにするな! 私もワンナイくらい観てたわボケコラガネメェ! 打ち切られたけどな……グスッ」
隣のおじさん「!? お前がそんなカスみたいな自論を並べているうちに、もういないぞ、あの二人!(怒)」
近所の人「ああ、もう一度みたいなあ。 ココリコはもういいけど」
近所の人の知り合い「おい、ココリコミラクルタイプなめんじゃねえぞ! あれ、絶対に打ち切るのは間違っていたよ」
近所の人の知り合いの知り合い「つうかさあ。日テレのドラマ観てましたぁ、あの時間帯」
近所の人の知り合いの知り合いの知り合い「てか、テレビ自体みねえし、俺。 地デジ?何それ、食えるの?」
近所の人の知り合いの知り合いの知り合いの知り合い「まあ、地上デジタル放送自体、腐った政府の方針だけど」
近所の人の知り合いの知り合いの知り合いの知り合いの知り合い「ネットの方がいいって。テレビとか糞だろ……」
近所の人の知り合いの知り合いの知り合いの知り合いの知り合いの知り合い「ラジオ派です。小倉のサーキットとか聴いてます」
隣のおじさん「……彼氏の元カノの元カレの元カノの元カレの元カノの元カレ、本仮屋ユイカ……元雁屋崎?
あー、なんかよくわかんねえけど……それっぽいな」
のび「ヤバイ!完全に頭が回ってません」
のび助「心配するなのび太! 元から回ってないから! 足を動かせ、手を振れ!」
『ドクン』
そのとき、のび太の目つきが、急に変わった。まるで、ギシンアンキを飲んだ後の目つきのようになった。
のび「うぐうっ! ぶほ……おヴエエエエ! 」
のび太は思いっきり路上にゲロを吐いた。胃液にまみれて、何か胆石まで出てきた。
のび助「のび太、どうした! ……くそ、食中毒か!?こんな時に限って……やはり、野比一族は呪われているのか? 」
のび「違うよ……ゴホッゲホッ。 ヘソリンガスが切れたんだよ。 うう、苦しいお」
のび助「お!? なんだその語尾は?」
のび「やっぱり、大量に吸っとくべきだったんだ……グスッ。 ドラえもーーーんんん! ヘソリンをくれよう」
のび助「バカ、大声出すな! ……ってん?」
のび助の視界、何か赤いものが写った。そして、それが捕獲委員の集団だとわかった瞬間、のび助はのび太をおぶって、走り出していた。
のび「パパ! どこ行く気なの?」
のび助「分からん! でも、逃げる時間はもう後3時間も無い! とりあえず逃げるんだ」
のび太はのび助の背中から飛び降りた。のび助は一瞬戸惑ったが、すぐにのび太が何を言いたいのか分かった。
のび「……ぼ…僕も一緒に走るよ!」
のび助「分かった! こんな時に、ZARDの『負けないで』が流れたら、どれだけいいんだろうなあ」
のび「ちょっとしたエドはるみみたいな気分になるよね」
捕獲委員Z「絶対に逃がすなよ! 」
なんだかんだ言っている内に、捕獲委員は15人ほどの塊を作って走ってきた。
野比親子は弾かれたように、スピードを速めた。しかし、当然すぐにのび太のスピードはぐんぐんと落ちていく。
「追え! 」
野比のび太は、必死で足を動かしていた。バカみたいに、赤いヘルメットが無数に追ってくる。
僕は、ひたすら思った。 ヘソリンが欲しい……と。
のび助「のび太、見ろアレ!」
のび太は、思わず大きく目を見開いた。前方からも、捕獲委員がやってくる!
のび「どっしぇえええ! どどどどすぇ、ハコ次郎、ハミ次郎、 どど、どしっようう、パパパパ!」
のび助「落ち着けよ、のび太!」
二人は、いつの間にか空地の前に到着した。
のび「あれだ! 土管の中に隠れよう!」
のび助「バカ、ほら、空地の横の階段が見えるだろう? そっから続いてる裏道に逃げ込むんだよ」
二人は、空地を通り抜けすぐそこの階段に――
無情にも、捕獲委員はそこの裏道からもやってきた。 2人は、顔面蒼白になった。頭の中も真っ白になった。
ザッザッザッ!
捕獲委員達は、三方向から一気に野比親子をぐるりと囲んだ。
のび「う、うそでしょ……」
のび助「くそ……万事休すか。 玉子、ごめ〜〜ん!(半ベソ」
のび太も、のび助につられて泣きそうになった。ヘソリン切れの苦しみとも相まって、嗚咽も増長された。
のび「嫌だァァ! 死ぬのは嫌だぁ!」
のび助「のび太ァ! ツキの月はどうした? 早く食べろよ」
のび「そうか! これさえあれば……! ん? あれ?」
のび助「どうしたんだ?」
のび「最悪……落とした」
のび助「え? 今、何て……?」
のび「いや、落とした……テヘ♪」
のび助「……女王の教室の志田かよ……いや、のび太。 そんな超使い古した上段、今はいらないんだよ!(怒)」
のび「冗談じゃないよ……。 いやあ、僕はなんて不幸な少年なんだ。世界一、いや宇宙一、ううん、銀河系一不幸な少年だよ!(泣」
捕獲委員は、何がなんだか分からないような顔をしていたが、ゆっくりと近づき始めた。
のび助「やめろ! 近寄るな!僕を殺すと、先代の父上が黙っていないぞ!」
のび「そうだよ、もれなく『のびるの人生相談一生分』という名の呪縛が、貴方達の体に入り込みますよ!」
?「のび太君、パパ……ここにいるからには、僕はもう、君たちを捕まえることしかできないよ……」
のび助「そ、その声は……ドラえもん!? 」
のび太は、天を仰いだ。 神成さん家の屋根の上、そこには月光に照らされ、不気味に光る青いロボットが立っていた。
捕獲委員も一般人なので、一瞬たじろいだ。
ドラえもん(以下ドラ)
「のび太君……もう少しの辛抱だよ。 もう少しで楽になるからね」
のび「ドラえもん、僕はもう怒ったぞォオオオ! 後、ヘソリンガスを吸わせてくれェェェ」
のび助「のび太、落ち着け! ドラえもん、一体何の用だい? 僕達が捕まるのを、見届けに来たのかい?」
ドラ「うーん……半分あたり、半分ハズレだね。 まあ、僕も一応捕獲委員なんだよね」
のび「!? ドラえもん、僕達を捕まえに来たんだね!? そうなんだね!? 」
のび助「普通に考えればな、我が息子よ!(泣」
ドラ「のび太君……君は本当にバカだね。 そんなんだから――」
ドラえもんは、ポケットから『相手ストッパー』を取り出した。のび太がその道具が何であるか認識した時、手足は自由を奪われていた。
のび「ドラえもん、卑怯だぞ!」
ドラ「こんな目にあうんだよ」
ドラえもんの目が、怪しく光っていた。
突如、ドラえもんの頭に何かが降ってきた。 Nだった。それも、ドラえもんのニガテな――NEZUMI。
ドラ「……ッ!? ね、ネネネネネネネ、ネズミィイイィィィィィィィィ!(血の涙 」
間もなく、ネズミと同様に降ってきたピーヒョロロープの先端部分が、ドラえもんの持っていた相手ストッパーを捉えた。
のび助「のび太、見ろ! ドラえもんの上!」
のび「あれは……! 誰?」
アラビアに居そうな風体の男。いや、少年とでも言うべきだろうか。
セルフ仮面(以下セルフ)「最後に、愛は勝つ〜〜♪」
それは、自らを縁の下の力持ちと故障していた、助っ人の中の唯一の生き残りであるセルフ仮面だった。
のび太とのび助の顔が、一気に明るくなった。
同じ頃スネ夫は、中野のまんだらけでくつろいでいた。
骨川スネ夫(以下スネ)「ふはああ。なーんか、翼ちゃん、どこにもいないなぁ。 まさか、誘拐……!?
翼ちゃん、確かガンダムが好きって言ってたような……」
まんだらけのどっかの店の店員「ガンダム好きってのは、ガセらしいよぉ。僕らみたいなオタクを釣るための罠だったってわけだね」
スネ「ふーん……まあいいや。それが、芸能事務所の策略なんでしょ? だったら、尚更釣られてみたいものさ。
後、僕オタクじゃないですから」
そういうと、スネ夫は読みかけの漫画を棚に戻して、店を出て行った。
まんだらけのどっかの店の店員「んー……。 ダメだよなあ、最近の子どもは。ゆとりというか、何と言うか。 ……ん?もうこんな時間か」
まんだらけのどっかの店の店長「珍しく仕事してるかと思えば、またサボりか? 大概にしねぇと、次はクビだからな」
まんだらけのどっかの店の店員「ヒッ……(怖 いや、だってもう俺のバイト時間、過ぎてますよぉ」
店長は、店員の言ったとおりに腕時計を見た。時計の針は、9時の25分を回っていく所だった。
まんだらけのどっかの店の店長「いや、まだ9時半ぐらいだが……っておい!?」
店員は、いつの間にかその場から消えていた。 説教を聴きたくない。その心が、彼をそのような行動に駆り立てたのだろう。
ゴゴゴゴゴゴ……
ついさっきまで優勢だったドラえもんは、セルフ仮面の強襲(『本物図鑑』のネズミ投下)により、しばらくの間狂ったように舞いつづけた。
それから、神成さんの自慢の盆栽に頭から突っ込み、気絶してしまった。
のび「セルフ仮面! あんまり面識無かったけど、良かったなあ」
のび助「よくやった! よし、この調子で僕達も助けてくれ」
セルフ「まあ、それはいいですが――どうやら、あまり時間は無いようです」
グシャーン!
何かが崩れたような音が響き、神成さんの家の塀から、青い頭が出てきた。のび太は、ごくりと唾を飲み込んだ。
ドラ「よろしく哀愁! ……じゃあ、皆出てきてもいいよ」
そのとき、のび助は3本の土管から、何かモゾモゾとしたものが出てくるのを見た。
着物を着たハゲと、のび太の将来の妻である源静香、そして剛田武だった。
剛田武(以下ジャイ)「ふうっ」
神成さん(以下神成)「なぜ、我々がこんな所に居るのか? そう訊きたいんだろう?」
そういうと、神成は背中の方から竹刀を取り出した。
のび「ううん、その、髪が……無くなってるような気がするんだけど……前見たときよりも(笑)」
神成「ぬぅ、貴様ら人の痛いところを突きおって……この空地から、二度と出られないと思え」
のび助「え!? まさか、僕も含まれてるの!?」
源静香(以下静香)「当たり前でしょ、のび太さんのお父さん。 まさか、息子を置いて逃げようなんて思ったんじゃないでしょうね?」
のび助「ドッキーノ!(超図星) そそそそそそんんなああわけないじゃああんん(滝汗 」
のび「そうだよ! ……静香ちゃん、夕べはどうして――僕を売るようなことをしたんだい?」
静香「そうね。 強いて言えば、買いたいものがあったからかしら。 そのために、皆で通報して10万円を手に入れたのよ。
まあ、その時は2万5千円しか手に入らなかったけど」
のび「その買いたいものって、まさか――生……」
のび太が次の単語を言おうとした瞬間、静香は頬を赤らめながら、ショックガンの引き金を引いていた。
ジャッ!(ショックガンの撃発音)
光線がのび太の腹に直撃し、そのままのび太は倒れた。
のび「静香…ちゃ……ん。 君が僕を……嫌いになっても……僕は……君を……」
ガクッ
のび助「クソッ!(泣 のび太、しっかりしろ! 日本男児たるもの、死ぬべき所と死なぬべき所の区別くらいつけろ!」
ジャイ「死なぬべき?」
神成「哀れだのう……怒りのあまり、まともな日本語すら喋れなくなってしまったようで」
セルフ仮面は、背中のスカーフから残り少ない秘密道具を取り出した。
セルフ「『瞬間リターンメダル』。 Aのメダルのボタンを押せば、押した人はBのメダルを置いた場所に戻ることができます。
パパさん、これを受け取って、早くBのメダルのある場所へ逃げてください!」
のび助「バカ言うな! 君はどうなるのかね!? このまま君を置いて逃げれば、僕はただの意気地なしになってしまうぞ!」
そのときセルフ仮面は、ゆっくりと仮面を取った。
セルフ「しっかりせんかい、のび助!」
のび助「!?」
野比のび助は、思わず目を疑った。セルフ仮面の正体は――のび助が一度、アルバムで見た顔の少年だった。
セルフ「今まで、正体を隠して悪かった。 私は、お前の父親だ。
といっても今はタイムフロシキを使って、少年時代の姿になっているがね」
のび助「な、なんだってェェェ!!(驚 」
ジャイ「だ……誰だ? 見たことねえ顔だな」
静香「何か、のび太さんに全然似てないわね」
野比のびるの少年時代ののびる(以下のびる)「しっかりしろ、のび助……お前は、何のためにここまで逃げてきたんだ?
私は、初めてお前に会ったとき、思わず抱きしめたくなった。
だが、それはやめた。 今は、逃げることが最優先だと考えていたからだ。
……のび助、早くのび太を連れて逃げろ」
のび助「……!? ほ、本当に父さんなんだね?(涙」
のびる「ああ。 8月7日も後2時間と少しで終わる。さっさと、どこへでも逃げろ」
そういうと、のびるはエースキャップをかぶった。
ドラ「感動の対面だったねえ、ホントに。それじゃあ、もういいよね、捕まえても?」
ドラえもんは、大きなバズーカ砲を取り出した。そのとき、のび助の頭の中に牛柄の男が浮かんだ。
ドラ「てれれってれ〜〜♪ 千年バズーカ〜〜♪
このバズーカ砲の弾に当たった人は、その人の人生の千年後に飛ばれてしまうんだよ。まあ、いたって普通のバズーカ砲だよ」
のびる「十年バズーカの模造品か……それにしても、千年後に飛ばすとは、やってくれるわい。
当たると千年後に飛ばされる――いや、そもそも人間は千年も生きていられない。
要するに、普通のバズーカ砲だ」
のび助「普通に殺すつもりだ! 全然捕まえる気なんかないじゃないか!(泣
のび太起きろ、殺されるぞ! 起きないと、千年バズーカの砲撃を浴びて爆死することになるぞ!(泣」
のび「痛てて……静香ちゃん、酷いよ。まさか本当に撃つなんてorz」
ドラえもんは、放置されている捕獲委員に向かって指示を出した。
ドラ「いいかい? どんな手を使ってでもいい……この3人を捕まえて!
今日の夜9時に改正されたルールによると、一人あたり賞金500万円!
さあ、皆さん……札束の山はすぐそこですよ」
捕獲委員達は、ドラえもんの『札束』という箇所で、のび太とのび助の方向に向かって走り出した。
のびる「早く、このメダルをっ……!」
のびるは剛速球で、『瞬間リターンメダル』をのび助の方向に投げた。しかし、そのメダルはすぐに叩き落とされた。
剛田武が、メダルの軌道上に入って来ていた。もちろん、エースキャップをかぶった人から投げられたものは、的へ向かおうとする。
しかし、そのメダルはあっさりと粉砕された。
のびるは、思わず目を疑った。そのメダルを粉砕したのは、ついさっき盆栽をメチャクチャにされた神成だったからだ。
神成は、自身の持っていた木刀で――瞬間リターンメダルを破壊した。
のびる「バカな!? 22世紀の道具が……(汗 」
ドラ「ああ、その木刀ね。 『材質変換機』で、木刀を構成する物質を強化したのさ」
神成「ああ。斬れない刀に用は無いからなあ」
のび助は、先走った捕獲委員(一般人)の顔面を殴打した。
捕獲委員A「ヘぶしッ!」
捕獲委員Aにつられて、後ろの捕獲委員も将棋倒しになり、まるで人間ドミノのような悲惨な状態になった。
のび助「大丈夫だ、父さん! 僕も、刀を持っている」
のび助はそういうと、懐から『(不良品の)名刀電光丸』を取り出した。
ジャイ「!? そんな所に、刀を入れていたのか? つーか、この状態で走ったのか?よくここまで逃げられたな」
やっと状況を把握したのび太は、のび助のしようとしている行動を拒絶した。
のび「止めてよパパ! また、娘の真麻モードを発動するつもりなの? これ以上パパが恥をかくところなんて、僕は……僕はッ!」
のびる「大丈夫だのび太。 人格は一時的に桃太郎侍になるが、よっぽどのことが無い限り、負けないだろう」
のび「え? そうなんだ? よっぽど? よっぽど? よっぽどのことが起こったらどうするのさ?(泣
あれ? ってか、君は誰? セルフ仮面の格好してるけど、誰なの?」
静香「もう一度眠りたいの?(怒)」
そういうと、静香はショックガンの引き金に触れた。
のび「なんだいなんだい! 起こったぞ、怒ったぞ、僕はもう怒ったよ静香ちゃん!(怒)
もう、容赦しないよ。 セルフ仮面?つーか君セルフ仮面なの? まあいいや、早く僕にひみつ道具をくれ!」
のびる「のび太……もう、私の手持ちのひみつ道具は、全て使ってしまったんだよorz」
のび「な、なんだってェエェェェェェェェ!!?? どど、どんだけ運が悪いんだ僕は!(泣
誰か、オラに力を分けてくれぇぇ!
そして、運を引きよせてくれ、三人分!」
神成「幸せは引き寄せるものではないぞ」
のび助「俺の息子に……手を出すな……!」
のび「あれ? 『娘』じゃなくて普通に『息子』って言ったね」
静香「……神成さあん、さっさとやっちゃってください」
のびるは、チッと歯噛みをした。
のびる「気をつけろのび助! この男……ただものではないぞ!」
のび「そうだよ、危ないよパパァ! 」
神成は竹刀を構えると、少しずつのび助に歩み寄った。
神成「真剣勝負だぞ、野比家の大黒柱」
のび助「今夜も世の汚れを……俺が斬る」
神成「ほう。 ならば、お前のその偽りの剣技、見せてもらおうか」
のび助「お前の剣も……偽りだ」
神成「いいや。 私は北斗一刀流の免許皆伝だぞ。木刀でも、ある程度の攻撃は可能だ」
ヒュゥゥウ……!
風が止んだ時――2人の動きが止まった。
のび助「第一問! 我々の……」
ズガーンン!
ドラ「も〜えろよ、もえろ〜よ〜、炎よもえろぉお〜〜♪
火の粉、巻き上げ〜〜、天まで焦がせ〜〜♪」
真剣勝負なのにも関わらず、ドラえもんはあっさりと空地の中央に、千年バズーカを撃ちこんだ。
この砲撃で無傷だったのは、1番後ろに居た捕獲委員2、3名と神成さん家の屋根の上に居た、のびるとドラえもんのみであった。
ドラ「のびるさん。やはり、あなたを助っ人に呼んだのは正解でしたよ」
のびる「ああ、ドラえもん。これで、これでよいのだな」
ドラ「うん。 その方が、『のび太君』のためなんだから……」
空地の周りには、たくさんの捕獲委員が転がっていた。
空地の中央辺りには、真剣勝負を邪魔されたのび助と神成(お互いの刀は、使い切った炭のようになっていた)が重なるように倒れていた。
そして、待ち伏せしていたにも関わらず発言回数が数えるほどしかなかった剛田武や、
爆風をモロにくらって、勢いよく土管に体をたたきつけられて、ろっ骨を複雑骨折をしてしまった源静香も倒れていた。
そして、主人公なのにも関わらず、特に何の活躍もせずに散ってしまった野比のび太も、千年バズーカの被害者の一人だった。
のび「え……? 僕の出番……終わり? 」
そっと呟いた。
午後9時00分 最後の戒厳令を出す。『野比の名字がつく人を捕獲した場合、一人あたり500万円を払う』
午後9時35分 捕獲委員126名及び特別部隊3名、特別名誉隊員1人
午後9時45分 野比のび助及び野比のび太確保 アラビア風の男、投降
(第1回名字狩り推進委員会メインコンピュータより)
この話は続きます。
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